誰でも実践できるテキストスコア、芸術の当事者性と、過去を養分にすることについて
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誰でも実践できるテキストスコア、芸術の当事者性と、過去を養分にすることについて

Akiko Yamane


フルクサスメンバー※の塩見允枝子さんのパフォーマンステキストスコア12曲と、実際に実践するにあたってどういうことを考えているのか、私から塩見さんに質問をしたやりとりをおさめたものを、ひとつの冊子にしました。

※フルクサス=60年代NYを中心に世界中に広がった芸術運動。

ハイアートに対抗し、アートと日常の壁を越え、「流れる」(=フルクサス)ことを目指す [塩見允枝子 (2005). フルクサスとは何か フィルムアート社より]


私がここで言いたいのは、フルクサスの新しさとか60年代実験音楽こそ素晴らしいとか(大好きですが)、そういうことではありません。昔の、特に新奇性・先鋭性ばかりが評価され注目されてきたフルクサスなどのイヴェント作品、テキスト楽譜の、あまり注目されてこなかった別の特徴を掘り下げたいと思いました。ここではつまり「五線が読めなくても」「特別な音楽の技術がなくても」誰でも実践できて深く味わえ得るという点です。

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[Mieko Shiomi | Scores & Dialogue (2020) より]


垣根なくアクセスできること。誰でもこれらの作家が投げかけた新奇__或いは少し開いた感性で世界を発見する行為にアクセスできる。それを阻むものは芸術の「等身大」以上の特権性のようにも感じます。本来この特権性を取っ払うことをフルクサス(流れる、下剤にかけるの意)は行ってきたにも関わらず、今や歴史の重みで非常に権威性を帯びている。神格化すらされている。

こういった権威性を一概に批判したいわけではなくて私は、等身大以上である場合に異を唱えたいです。そして白か黒かではない多様なグラデーション、プロとかアマチュア、芸術と日常、音楽と美術、時間と空間・・・こういった二項対立しているものの境界を行ったり来たりすることで見えてくることが確実にある。そして塩見允枝子の音楽や美術作品は、境界を行ったり来たりたくさんできるような仕掛けに溢れています。


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Mieko Shiomi - Ultimate Music No. 5(※許可を得て掲載)


私、以前塩見さんに質問したんです。自分の作品を未来永劫残したいかと。そしたらそこには興味はなくて、自分が歴史に名を残すかどうかよりも、自分の作品っていうものが、今生きている人たちの肥やしになればいい。若い世代の人たちは、自分でどんどん作っていけばいいんだし、そのために過去の作品が役に立つならどうぞ踏み台にしてほしいって笑顔で仰っていました。


伝統とは何かよく考えます。伝統は、ガラスケースの中に入れておくだけで充分生かせるのか。特に人類の歴史が始まってどんどん過去のアーカイブが溜まっていくほどに、ガラスケースは増えていく。今生きている人たちのスペースが圧迫されていく側面もある。もっと代謝があっていいのではないか。今生きている人が過去に対してどう対峙するか。無批判に過去だけを重んじるのではなくて、今生きていてどう感じるのか。過去のものだから偉いのではなくて、みんなが言ってるから偉いのではなくて、自分はどう感じるか。その過去と自分との誠実な対話が、伝統の面白みだと私は考えていて。


そんな中で。身体を使ったパフォーマンスや、精神の想像力を内側に無限に広げることに興味がある人は。そして過去や伝統と関係を繋げてみたいと思う人は。もし良ければ手に取って見てみてください。


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塩見允枝子さんの作品は、このようなテキスト楽譜については上演の際著作権使用料はかかりません。(五線に書かれ音楽作品として登録されている楽曲群には必要です。)

なお、ここにおさめられているテキスト楽譜は、実際に行われたイベントのために書き下ろされたものであり、そのイベントに対して最適なのであって、普遍的な意味で「完成」されたものではないところも特徴的だと思います。今ここ、それぞれの場によって最適になるように少しずつ形態を変えていくという流動性。それは西洋音楽の中での価値としては下、弱さと見られてきた部分だと思います。だけど完璧さではなく、このような開かれていることっていうのは、人それぞれの内なる創造性を発揮させるための装置として力を発揮し得る形態だと考えます。その新奇さ奇抜さだけ見るのではなくて。


ただそれは外側じゃなくて、自己の感覚の内側をどこまでも広げていくことでしか見えなかったりするから。



話は変わりますが2020年に塩見さんをジェンダーの視点で描いた映像制作にも協力しました。短いドキュメンタリーです。撮影現場でも色々なことを考えさせられました。こちらもぜひ観てみてください。


追記:冊子数有限ですが、非物質的にも情報にアクセスできるようにしたのでよければご利用ください→



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Akiko Yamane
🏠https://akikoyamane.com 山根明季子です。noteは言葉を探したいと思って始めました。