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琴x認知症のお話

こんにちは。株式会社Aikomiの加藤潤一です。

前回は浅草の写真が、神戸在住の認知症の女性に変化をもたらした事例についてご紹介しました。

今回は、ある大正琴に関わるお話をしたいと思います。この方も女性で、神戸のある介護施設に入居されている方でした。

いつも私が認知症の方と接する前には、初めにご家族とお話をさせて頂きます。ご家族によれば、その方は認知症になる前はものすごくこだわりが強くアグレッシブな方だったそうです。
60歳過ぎて大正琴を習い始め、その後師範となり、色々な場所、それこそ介護施設等でも演奏会や教室を開くほどの方だったという事でした。

ただ認知症になってからは、好きだった大正琴も弾かなくなり、何事にも無関心になってしまったという事で、ご家族としても大変残念な気持ちでいたそうです。

介護施設の方も、大正琴が好きだったという事で音楽好きだろうという予想の元、大正琴を始めとする楽器演奏などに誘うも、ことごとく断られたということで、困っていました。

その様なお話を受け、その方に提供するプログラムの中に大正琴演奏の動画を入れ込むこととしました。

正直なところ、動画を見ることで大正琴の事を思い出し、少しでも話題提供になれば良いな程度の、淡い期待を抱きながらのプログラム提供でした。

果たして結果は私の想像を超えるものでした。

大正琴のプログラムが始まってしばらく何も言わずにじっと画面を凝視していた女性は、突然机の上に両手を置き、右手で弦を押さえ、左手で弦を弾く動作をし始めたのです。そして動画に合わせ、一曲を弾き終わりました。

これには施設のスタッフさんも私も驚くばかりでした。これまで頑なに大正琴の演奏参加を断っていた女性が、自ら手を動かし始めたからです。

前回の方と同様、プログラム中は誰もこの方に「演奏してみませんか」「これは大正琴ですね、昔やってたんですか」などと演奏を誘導するような言葉はかけていません。

周りの人たちはこの方は無関心だとばかり思っていましたが、実は心の中ではふつふつと何か思うところがあったわけです。それが大正琴のプログラムで吹き出して来たと。

一緒に同席していたご家族にも「まるで昔のお母さんが戻って来たみたい」と大変喜んでもらえました。

また介護施設様からは後日談としてこんなお話を聞きました。

プログラム終了後、再度大正琴の演奏を促したところ今度は快諾され、施設のスタッフさんが生徒、その女性が先生となって教室が始まったという事でした。

前回の方は浅草の写真がきっかけで、その日1日気分良く過ごされました。今回の方は、大正琴のプログラムがきっかけで、〝自分にとって″意味のある活動へと繋がっていきました。

今回はこのあたりで。また次回。














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