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片耳でnoteライブを、片耳で親子喧嘩を

「Enjoy この世」
とても良い言葉だと思った。今いる世界を楽しみ尽くす。そんな面白い話がパソコンの画面の中で展開されている隣で、6歳の息子が泣きそうになりながら言う。

「グミがない…」

それは、知らんがな。
そうは思いながらも聞いてみる。

「母さんが知ってるんじゃない?」

息子は顔をしかめながら答える。

「知らん!って言われた」

これは明らかに2人で喧嘩が続いている感じだ。
この間にもnoteライブは進んでいく。
出来ないのは分かっているが、今画面の中で行われているトークを一時停止したい気分だ。


今日は夜7時前には仕事を終えた。いつもよりもだいぶ早い。理由は、夜8時から開催される「おもしろい記事をつくるチェックリスト」というnoteライブを観るためだった。

デイリーポータルZの林編集長と、note代表の加藤さんが「おもしろい記事を書くための発想方法」について語るイベント。実は密かにコレを1週間以上前から楽しみにしていた。

車で帰宅する直前に時間を確認すると、夜7時15分。
これから晩御飯を食べて、息子の宿題をチェックして、風呂に入る。開催時刻の夜8時にはギリギリ間に合う算段だった。

「ただいまー」

家へ一歩足を踏み入れると、いつもと何かが違った。
ピリついた雰囲気だ。
何かが起こっていることを悟った。

聞けば、息子と奥さんが親子喧嘩しているところだった。6歳の息子の態度がどうしても許せず、喧嘩になってしまったようだ。

そんな中だから、いつものようには食事がスムーズに進まず、いつものようには風呂にスムーズに入れない状況だった。時間を確認すると夜7時55分。

あぁ、風呂は終わってから入ろう。

諦めてパソコンを開いた。

noteライブでは、記事を面白くするためのポイントが丁寧に解説されていた。
なるほど、と思うことばかり。パソコンでメモしながら、集中して観る。

「あのね、母さんがね、」

息子が喧嘩の状況を話かけてくる。
もちろん、無視はできないので片耳を息子に向ける。
ただ、noteライブも聴きたいので片耳はそちらに向けたままだ。

そこに奥さんが登場。「グミがない」とふてくされていた息子に、冷蔵庫にしまってあったグミを渡してあげていた。

…おっ、これで事がおさまるかな。

そんな淡い期待は息子の次の言葉で打ち砕かれた。

「グミ、隠していやがった。あのヤロウ!」

グミのパッケージをグシャっと握りしめて奥さんの立ち去った方へ走り出した。
画面では記事を面白くする具体的な方法を話している。

「ちょっと待って」

息子に呼びかけるが、止まらず走っていった。

ダメだ。
よし、もうアーカイブで観よう。

後ろ髪引かれながら、パソコンを閉じた。


(note更新197日目)



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