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痛みよりモノ。モノより思い出。

いつか片付ける。

そう思って早4ヶ月ほど経ってしまった。自分の部屋の机の上のことだ。IgA血管炎で年始から入院。退院してからもしばらくベッドの上から動けない状態が続いた。こんなに長期化すると思っていなかったので、机の上も荒れ放題。ただ、そんな雑然とした中でも僕の机の上で異彩を放っているものがある。それは本立てにきちんと整えて保管してある2部の新聞。


「あけおめ。今年もよろしく!仕事と全然関係ないんだけど、今日の朝日新聞って手に入ったりしない?」

2024年1月4日の夕方。
会社の後輩に、新年の挨拶もそこそこに年明け早々お願いのLINEを送った。この時僕は、IgA血管炎の症状のピークで宮崎の総合病院に入院中。
することもなく暇で、スマホでSNSのタイムラインを眺めていた。その時に、偶然目に入ったのがとある広告だった。

呪術廻戦25巻発売記念 新聞広告

それは、漫画「呪術廻戦」の単行本25巻が発売されるという告知用の新聞広告。
この広告の仕掛けに、心を動かされた。具体的には「これ欲しい!」と思ってしまったのだ。

この一面広告は、実は中央で2つに分かれている。左側の「五条悟」は読売新聞、右側の「両面宿儺」は朝日新聞。これらの片面ずつの広告を合わせることで1つの大きな一面広告が完成する。もちろん、片面ずつでも成り立つようにはなっているのだが、漫画のファンとしては両方揃えたいというのが心情だ。

どこで手に入るんだ?

普段、取っていない新聞の広告。しかも、入院中で外出はできない。入手方法を考えた。
すぐに「あ!」と思い立ち、財布だけ持って病室を後にした。

正直なところ、この時の足の痛さはMAX。むくんでいて地に足を付けるのも痛いくらいだった。それでも、足を引きずりながら病院附属のコンビニに向かった。

「そこまでして…」と思うかもしれないが、これには新聞広告ならではの仕掛けがある。

この広告は「この日しか手に入らない」のだ。

明日になれば、前日の新聞は価値を無くす。そして販売店から一斉に姿を消す。とすると、この広告は2024年の1月4日にしか入手することはできない。しかも、気付いたのは夕方。時間もない。

おー…マジかよ。

イテテテ…と足を引きずって入ったコンビニには、残念ながら読売新聞しか置いてなかった。個人的には、どちらかというと「五条悟」というキャラクターの方が好きなので、とりあえず片面を確保したことに満足した。ただ、やっぱりもう片方も欲しい。そこで入院中の事情も全て話し、北九州の実家に帰省していた後輩に朝日新聞を頼んだのだった。

「無事に確保できました!無事に退院されることを願っています!」

しばらくしてLINEでメッセージが届いた。

「ありがとう!」

年始から、その後輩にめちゃくちゃ感謝した。あの時、協力してもらって手に入れた広告は大切に保管してある。

モノより思い出。
一昔前にそんなキャッチコピーが有名になったが、こういう手に入れる体験も含めて「広告」なのかもしれない。

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