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忘れがたいドイツ歌曲のレッスン① 〜シューベルト《鱒》〜

 こんにちは。櫻井愛子です。この記事を覗きに来てくださってありがとうございます。

実は、10月にピアニストの伊澤悠さんとドイツ歌曲のコンサートを開催することになりました。(詳細は以下のURLをご覧ください)

 私は正直、ドイツ語が未だに苦手ですが、留学を通して一歩ずつ、ドイツ歌曲と「お近づき」になるべくいろいろなことを試してきました。これから書く記事では、ドイツ語がてんで出来なかった私に、ウィーンの先生がいろいろと懇切丁寧に教えてくださった、自分にとって思い出深いレッスンを書いていこうかなと思っております。宜しければお付き合いください。

最初はやけくそで丁度いい

 ウィーンの音大に入学した最初の方のレッスンでは、王道のシューベルトの歌曲を見てもらうことが多かったです。《音楽に寄す》《糸を紡ぐグレートヒェン》などにその時初めて取り組みました(遅い)。
 見てもらう度に先生にいつもこう言われました。

「何言っているか全然わかりませーん」(真顔)

 実際それなりにドイツ語の発音を藝大の大学院で習っていた(はず)なので、毎レッスン言われるたびにかなりショックを受けていました。しかし、「わからない」と言われたら最後、相手にわかってもらうまでやるしか仕方がない。

 よく覚えているのが、《鱒》を持って行った時のことです。
「川のせせらぎに鱒が一匹泳いでいました~」といった和やかな冒頭部分を歌っていたところでした。

「”t”が足りない!もっと言って!」

 歌手の世界では日本人病としてよく知られている「子音超絶足りない病」ですが、一応それなりに気を付けていたので、「え?まだ足りないの?まじで?」という感覚でした。言われるがままに子音を強く発音してみましたが、「まだ足りない!」「足りない!」「もっと!!」と言われ続けました。

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 最終的に、やけくそになり、「もう唾も全力で飛ばしたれ!!(このコロナ禍では憚られるが)」という気持ちで「ttttttttttttt!!(断じて誇張ではありません)と歌ったところ、

「それで全然丁度いい、やりすぎじゃない、最低ラインだね

 と先生。
 本当にやけくそに発音したので、最早、鱒の泳ぐ川のせせらぎは、有象無象かがうごめく濁流となり、それは自身の思う和やかさと遠く離れてしまっていましたが、「世界観を雰囲気で表現する前にまずは何を言ってるか相手に伝わらなければ意味がないんだ」とその時悟りました。

 ちなみに同じような目にあった子音たちは、"ch", "(語尾の)D", "K", "F", "L", "M", "N", "P", ”S",  "V", "W"です、ってほとんどか。(笑)

 そのうちにお腹を使って子音を効率よく飛ばす方法や、口の形を変えたり、子音を置くタイミングを考えたりした結果、1年以上かかってヒトラーのような歌唱法から卒業しました(笑)。しかし、未だに「この子音が少ない!」と言われることがありますので、精進あるのみです!!頑張ります!

つづく。

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