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忘れがたいドイツ歌曲のレッスン② 〜初夏の思い出:マーラー《Ich atmet' einen linden Duft (私はやさしい香りを吸った)》〜

 こんにちは。noteの記事に遊びに来てくださりありがとうございます。宜しければ最後までお付き合いください。

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 この記事は、10月4日(日)に開催いたします、「Project NAKA Auftakt Concert 櫻井愛子・伊澤悠 ジョイントリサイタル」をより楽しんでいただくために、ソプラノ歌手の櫻井愛子が、思い出深いドイツ歌曲のレッスンを振り返るコラムです。

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 じめじめした季節が続いていますね。

 こういう時期におすすめの曲があります。グスタフ・マーラー作曲の《Ich atmet' einen linden Duft (私はやさしい香りを吸った)》という歌曲です。

ピアノ版↓

オーケストラ版↓

  この曲を初めてさらった時、季節は丁度5月ごろでした。
コレペティ(ピアニストであり発声を教えてくださる先生)のレッスンの時、まず最初の4小節ほどを歌うと、先生が「ちょっと窓を開けてみて」とおっしゃいました。
 ウィーン音大の声楽科の校舎にはクーラーはなかったので、暑い日は窓を開けてレッスンをしていました(それでも最近は暑すぎてレッスンにならないので、クーラーの導入を検討しているそうですが)。たまに虫が入ってきたりして、レッスンを中断して一生懸命部屋から追い出したこともありました。
 窓は、古い校舎でしたので、木枠で、白くペンキで塗られた二重窓でした。先生に言われた通りに窓を開けると、目の前に大きな樹が、そよっと吹きあがる風に、枝を揺らしながら立っていました。リンデン(Linden)という木で、ウィーンでは街路樹として街中でもよく見かけることができます。初夏に白く小さな花をたわわに付けます。

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 「よくにおいをかいでごらん」と先生に言われるがまま、窓から身を乗り出して鼻に意識を集中させると、すずしい風に乗って、甘い、凛とした香りが。先生がそっと言いました。

「それが『linden Duft(やさしいかおり)』だよ」

 曲を表現するとき、私はいつも「映像」として考えることが多いのですが、それはいつも視覚的にしか想像できてないということになります。それをコレペティの先生は見事に見破って、「匂いも想像して表現しろ」と教えてくださったのだと思います。
 あと、ヨーロッパの歌曲にはよく「バラの花」が登場するのですが、大体毎回「匂いを嗅いで!」と言われます。(笑)

 今でも、この曲の前奏を聴くと、あのやさしい、爽やかな甘い香りが漂ってくるような気がします。


おまけ 
 どんな香りなのかな、と気になった方へ。リンデンの精油というものが発売されているのを今回初めて知りました!是非ご自宅でもその香りを味わってみてください(以下は一例です。「リンデン 精油」と検索すると沢山出てきます)。

つづく。



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