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音源作りで学んだこと(オンライン授業合唱指導映像篇)

私は同じ声楽家の妹と、「AINANA」というユニットを立ち上げていて、新しいクラシックの楽しみ方を追求している(かなりクレイジーな方向に猪突猛進中)。先日Twitterに投稿した「声楽科体操」


 という作品が思ったより多くの人の目に触れたのだが、それがきっかけである仕事をいただいた。

その方は音楽の教師をされている方(以下 先生)で、自粛中のオンライン授業のための指導映像をつくるのを手伝ってほしい、ということだった。教育のために我々ができることがあるなら、と喜んでお引き受けした。

内容は、音楽の教科書に載っている「翼をください」や「ふるさと(嵐の方)」などの合唱曲のパート別映像と、2声一緒の映像と、レッスン動画というものだった。レッスン動画については後に説明する。

何が大変だったか。まず、言わせていただこう。※暴言が続きます

「ふるさと」、サビ、つらい!!

なぜ辛かったか、答えは明確である。メロディーがわれわれが歌いにくい音域(高いミ~ファ)でうろちょろするからである!!なんでそこに居座るのだサビのメロディーよ…!!この歌いにくい音域、チェンジとかパッサッジョとか言われるが、要は低い音と高い音の橋渡しになる音域で、ものすごく「出しにくい」のだ。これは「なるべく高いポジションを保持する」ことと「背中の筋肉を意識する」の二点の注意で割と解決できた(はず)。

映像見る→「あれ?楽譜ばっかり見てる」→「カメラよく見ないと」→「あれ、ほぼ暗譜…?」

前回の音源作りの後だったので、曲も簡易で、いくらか安心していた我々であったが、その考えは非常に甘かった。撮った映像を見返すと、どうも目線が下がって美しくない。楽譜を見ているせいである。楽譜をiPadに入れてカメラの横に置くも、やはり目線が下ではなく横にそれたというだけであった。仕方なく我々は、できるだけ暗譜をして撮影に臨むことになった。

悲劇は私ではなく妹の方に起こった。妹は下のパートを担当していたので、旋律が覚えにくいのだ。何度も歌詞またはメロディーを間違え、のどが疲弊しきるまでやり直すはめになった。気づくと、6時間経っていた(2曲分の収録しか終えられていなかった)。

↓ 撮影の様子(機材セッティングという名のジャングル)

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「やりすぎ」の向こう側

「レッスン動画」では、先生の指示にしたがって、指導前の演奏と指導後の演奏を示す、いわばbefore-after動画を作った。先生からは「顔芸を期待しています」とコメントをいただいていた。

先生の指示は、至って真っ当な指示であったので、どこに「顔芸」をいれるのか少し考えた。オーバーリアクションを求められているのはわかるが、相手の生徒さんはそれを見てどう思うのだろう...

考えた挙句、先生の指示を「普通に」汲み取った「ノーマルバージョン」と、とにかく過剰に先生の指示を表現した「ハードバージョン」の二種類を用意し、先生にご意向に沿う方を選んでいただくことにした。

予想通り「ハードバージョン」の収録は難航した。(映像はハードバージョンの様子)

要は芸人レベルにぶっとんだ様子を延々カメラに向かってやっていくのである。まじで恥ずかしかったが、「どこまでオーバーにできるか」「どうやったらオーバーに見えるか/聞こえるか」を追求することは非常に勉強になった。「ハード」から「ノーマル」に戻ったとき、「普通に誇張する」だけではできなかった「あと一歩」の表現が、一度「ハード」で思いっきりやってみたことによって、再現力がこじ開けられ、できるようになっていたからである。これは大きな気づきだった。

正直かなり大変だったが、すべての映像を納入し終わった時に、先生はこうおっしゃってくださった。

「このオンライン授業づくりがなければ、精神的に追い込まれていたのではないかと思いました。本当に感謝いたします。」

音楽の先生は、この閉塞した社会の中で、新たな授業環境を生み出さなければならない。コロナは音楽に厳しい。そんな中でもがく教師の方々の苦しみは如何ばかりか。

自分たちの拙い演奏が、少しでも先生の役に立つことを祈っている。


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