眠る前の話

「人生は、プラスマイナスゼロだ」って、いつもの、あなたの持論。

嫌なことがあった時のあたしを、諭すみたいに。

「それじゃぁ、良いことがあった時に、素直に喜べなくなる。また悪いことが起きて、ゼロにされるなんて、なんか悔しいじゃない?

いつかあたしの人生が終わる時、たったひとつでもいいから、プラスが多かったって言ってみせるわ」

そうやって隣で噛み付くあたしを、可愛くないとあしらって、あなたは眠りにつく。

急に寂しくなって、静かな寝息を立て始めるあなたの、左腕にそっと頭を乗せる。

あなたに出会えたことで、あたしの人生が、もうゼロになることはないってこと、

目が覚めたら、教えてあげるね。