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日本経済を分析するためのノート(10)

さて、きわめて粗っぽく日本経済の構造をまとめてみましたが、こうした見方を補足するために二つの考え方について考えてみることにします。
その一つは、日本経済の停滞は労働生産性の上昇が停滞しているためであるというとらえ方です。そしてもう一つは規制緩和が進まないのが停滞をもたらしているという考え方です。野口氏の著書においてもこうした見解がしばしば見られます。

まず、日本経済の停滞は労働生産性の上昇が停滞しているためである、というとらえ方についてです。これは端的に言えば、労働生産性の上昇が低いためにGDPの伸びが低くなっているということです。
しかしこれは成り立たない議論です。
それは今のことを正確に言えばただちにわかります。すなわちこの説は
GDPを総労働時間で割った値が伸びないためにGDPが伸びない
となるからです。労働生産性を決定する変数がGDPなのであり、GDPを決定する変数が労働生産性であるわけではありません。
じつはこのように言う場合には、労働生産性ということを付加価値の労働生産性ということではなく、普通の意味での労働生産性という意味で使っているのです。
しかし、生産の効率性の上昇はGDPの上昇に直ちにつながるわけではありません。そのためには需要の増大がなければなりません。そうでなければこのノートの(3)で言ったようなことになってしまいます。
にもかかわらず需要面を無視してしまうのは、こう言っている人のたいていが、付加価値の労働生産性と普通の意味での労働生産性を一緒にしてしまうという誤りをおかしているからです。
つまり、生産の効率がよくならないからGDPが伸びない、ということを、この生産の効率のことを「労働生産性」と言うことによって付加価値の労働生産性のことであるかのようにして、これが伸びなければGDPが伸びないのは当然であるかのように論じているのです。

つづく

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