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日本経済を分析するためのノート(11)

労働生産性とGDPについて具体的に見てみましょう。
下図は2005年から2013年までの労働生産性の平均値を要因分解したものです。

厚生労働省 平成28年度版労働経済の分析より https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/16/dl/16-1-2.pdf

このグラフから当時の日本では次のようなことが起こっていたと推定できます。すなわち、
生産を効率化したが、需要が増えずに価格を下げ労働投入量も減らしたため、得られた付加価値(名目GDP)が減り、労働生産性は変わらなかった。
しかし物価全体が下がったため、その分実質労働生産性は上がった。
ということです。

次に1995年から2020年の実質労働生産性と実質GDPと総労働時間の25年間の平均伸び率を国際比較してみます。
実質労働生産性
日本1.3% アメリカ1.7% イギリス1.2% フランス1.0% ドイツ1.1%
実質GDP
日本0.6% アメリカ2.2% イギリス1.6% フランス1.2% ドイツ1.1%
総労働時間
日本-0.7% アメリカ0.5% イギリス0.3% フランス0.2% ドイツ0.1%
(出所:厚生労働省)
日本は実質労働生産性の伸びは2番目に高いにもかかわらず、実質GDPの伸びは最下位です。この差はどこからきているのか。それは総労働時間が短くなっているためです。
ここで
実質労働生産性の伸び率=実質GDPの伸び率-総労働時間の伸び率
となっていることは直ちにわかると思います。それは実質労働生産性の定義からして当然のことです。
では就業者数をみてみましょう。

日本の就業者数の推移
 (総務省統計局 労働力調査 長期時系列データ https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tclass=000000110009&cycle=0 より加工して作成)

1995年から2020年までのあいだで就業者数は1.04倍程度に増加しています。
しかし雇用者の内情を見ると次のようになります。

立命館大学 佐藤敬二教授のサイトより
https://www.ritsumei.ac.jp/~satokei/sociallaw/temporaryworkers.html

つまり正規雇用者は減り、非正規の雇用者の数も割合も増大しているのです。非正規雇用者の割合は20%程度から40%近くにまで増大しています。

以上のことから、
日本経済は生産の効率化(普通の意味での労働生産性の上昇)にもかかわらず、需要が伸びなかったため、正規雇用を非正規雇用の労働者に置き換えながら総労働時間を減らしてきた。このためGDPの成長率は低下したままで一人当たりのGDPはOECD諸国の中で2000年の2位から2022年の21位にまで転落した。
ということが言えるのではないかと思います。

つづく


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