【コラム】画面と印刷物の色の違いについて
今日、さまざまな作品やオブジェクトがデジタルデータでつくられるようになっています。
ところでこの作品を印刷物にするとき、一つのポイントとなるのが「色」の問題です。印刷されたものを見て、画面で見ていたのと違うと思ったことがある方も多いでしょう。
似た例としては、展覧会などの絵画です。実物を見て感動し、ミュージアムショップで画集を買おうとしますが……色が全然違う! そんな思いに襲われた経験はありませんか。
印刷が悪い、と思われるかもしれませんが、画集はたいていは美術関係の専門の印刷屋さんが刷っています。それでも実物と大きく色がずれていってしまうのです。
画面はRGB、印刷はCMYK
パソコンやスマホで見る画像データはRGBというカラーモードで構成されています。R=RED、G=GREEN、B=BLUEですね。これは光の三原色といいます。混ぜれば混ぜるほど明るくなり、白に近づいていくため加法混色といわれています。
これにたいして印刷物はCMYKというカラーモードでできています。C:シアン、M:マゼンタ、Y:イエローです。これはインクの三原色といいます。この基準の色のインクを混ぜてさまざまな色を作り出していくのです。こちらは混ぜれば混ぜるほど暗くなり、黒に近づくために減法混色といわれます。
ところで理論上はすべてを混ぜると黒になるのですが、実際にはそうはならないため、キープレート(Key Plate)という基本的な版に黒色を使います。
そのためC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)の4色を合わせた色になるわけです(CMYKのKはKey PlateのKであって、KUROのKではありません)。
RGBをCMYKに変換すると色がくすむ
ところで、このRGBとCMYKでは表現できる色の領域(色空間とかカラースペースといわれるもの)に大きな差があります。
カラースペースはRGBの方がCMYKより広く、そのためRGBで表現されている色をCMYKに変えると、表現できない色は近似色に置き換えられてしまいます。
CMYKは色を混ぜると暗くなるので、特に鮮やかな色や薄い色は表すのが難しいのです。
またパステル調の色やメタリック、蛍光色などはCMYKでは表現できません。
その結果、RGBをCMYKに変えたときは、全体として色がくすんだ色味になってしまいます。
少しでも何とかするためには特色という特別な色を使うとか、5色で印刷するとか、RGB印刷という技術を使うとかのCMYK印刷以外の印刷方式をとるか、光沢の良い用紙を使うなどの方法をとるしかありません。
先に挙げた画集の作成などは、実物をカメラ撮りしてそれを印刷しますから、まず、カメラ撮りの時点で色が変わってしまいます。そしてそれがかなりうまく実物とあったものになったとしても、CMYKにしたときには大きく変わってしまうことが多いのです。実物とずれてしまうのは仕方のないことなのです。
色の変化が少しでもわかる方法
今日、多くの人が画像やイラストを日常的にスマホやパソコンなどで見ています。そのためRGBで見るのが普通の感覚になっています。
その眼で見るとCMYK印刷したものは濁ってくすんで見えます。
自分が画面で見ていたものと印刷されたものがあまりに違うというのでがっかりしてしまうことさえ考えられます。
色校正を頼むのがベスト
これを避けるためには、印刷屋さんに色校正を頼むのがベストでしょう。
印刷機で紙に刷ってもらった実際のものを見せてもらうのです。これを本機色校正といいます。
もっとも、そうするとその分の費用がかかってしまいます。しかし、実際にどうなるかは刷ってみなければわからないというのが実際のところなのです。
そうすると、そこまではやりたくないが、もう少しわかる方法はないのかと思われるでしょう。その方法を次にご紹介します。
ソフトでRGBをCMYKに変換する
先に「画面はRGB、印刷はCMYK」というタイトルのところで、図2)としてインクの三原色CMYを示しました。
けれど、これは本当は違うのです。
なぜならば、このCMYは画面上に示されているので、本当のCMYではありません。本当のCMYは印刷物でしか示すことができません。これはRGBで作った疑似的なCMYなのです。
しかしそれでもくすんだイメージは出せています。つまり変換後のイメージくらいならばソフトの力でパソコン上でも示すことはできるということです。
図1)とそれを画像ソフトでCMYKモードに変換したものを並べてみましょう。
印刷したものとはかなり違うように見えますが、それでも印刷したときに色がどのように変わるのかのイメージを湧かすくらいはできると思います。
RGBをCMYKに変換する機能のあるソフトといえばPhotoshopですが、無料で使用できるPhotopeaでもできます。
けれど、繰り返しになりますが、これは正確なものではなく、実際に刷ったものとはかなり異なってくるということは注意しておいてください。
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