「鵺の陰陽師」を読んで欲しいからオススメポイント言う奴
前置き
皆さん、少年ジャンプ読んでますか?!
私は読んでます
もう社会も親も自分自身も私を少年だとカウントしないのに少年ジャンプに縋っています!!
能力は子供の時と大差ないのに背負う責任は大人のそれになっていきます!!!
ありのままの自分でいいって歌手は歌うのに停滞は許されねぇんだ!!!!
誰か助けてくれよ!!!!!!!
なぁ!!!!!!!!!!!!
ーーーーーーーーッス…
さて皆さん「鵺の陰陽師」という漫画をご存知でしょうか?
週刊少年ジャンプ2023年24号から連載スタートの話題作です。
私が今最も好きな漫画で、普段は格ゲー衰退論と経済と政治と宗教と野球の話しかしない硬派な私のツイ垢はこの漫画の話題で持ちきりです。
今回はそんな「鵺の陰陽師」の魅力を何とか広めて、打ち切りを回避して…
アニメ化してUFOの美麗作画で(容姿がかなり人間に近いから明らかにレベル3以上はある)幻妖に立ち向かう膳野君がみてえ~!!
ニコニコのコメント欄で「周防先輩の霊衣リナリーのパクリじゃん←は?哪吒太子の風火輪モチーフだろちゃんとお勉強しようなキモオタ君←早口で言ってそう」みたいな底辺の喧嘩見てえ~!!!
直前まで滅茶苦茶テンパってたのに「助けて」の呟きにノータイムで「はい…!今助けます!」と答える学郎を見て周防先輩と一緒に脳が焼かれてえ~!!!!!
とはいえ未読の人や読んでいても幻妖に憑かれていない人は「この漫画のどこがおもしろいの?」と気になると思うので
今回は打ち切りレースで怨嗟渦巻く蠱毒と化した週刊少年ジャンプにおいて私が「鵺の陰陽師」に見た「不思議な面白さ」について書きます。
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面白さ①王道な本筋、異様に濃い俗筋
あまりにもベタな本筋
「鵺の陰陽師」1話のあらすじをざっっっっくり説明すると
「心優しいが気弱な少年」が「ひょんなことから封印が解けてしまい妖怪が活発化する学校」で「最初は戦うことへの恐怖から逃げる」が「身近な人の死への恐怖」で「戦う決意をして」「大妖怪とタッグで妖怪退治をすることになる」
未読の皆さんはどう思いました?
「二万回見ました!」と南沢海になってしまうのも無理はない。
ジャンプを長いこと読んでると見かける「早期に打ち切られるテンプレ退魔物」の詰め合わせのような導入です。
「具体的なタイトルは思い出せないがこれと似たような導入の漫画を読んだ事ある気がする…」という奴です。
王道を通り越してお約束レベルの展開の中でそれでも私の目を引き付けたのが
俗筋:馬鹿な男子高校生のノリと新ジャンル:膳野
この漫画、主人公組以外のキャラが異様に濃いんですよ(今は主人公も鵺さんもキャラが立っているのだが前半はそれ以上にサブキャラ達の描写に力が入っていた)(なんで??)
その極地が膳野君(下の名前は不明)
1話の膳野君の説明としては
・坊ちゃんカット
・眼鏡
・不良生徒に開幕1ページでパシられそうになる
・が「てめえらで行けよタコ」とハチャメチャに好戦的
・その後事を荒立てたくない主人公の学郎が肩代わりしたパシリと学郎自身の昼飯代を建て替えようとする
・パシリさせた学郎を馬鹿にする不良達に「胸糞悪い話が嫌いなんだよ」と掴みかかる
・その3コマ後には白ブリーフ一丁でボコられる
・そのタイミングで乱入してきた幻妖(人の腕を飛ばせる怪物)から不良と学郎を逃がすために囮になる
・その背中をみて学郎は強くなる決意をする
とあまりに『濃い』
読み切り版にいた委員長ヒロインを外してでも出したかいがある。
しかもこの濃さで彼は「現地に赴任している陰陽師」や「主人公を小さいころから守ってきた兄貴分」というバックボーンがあるわけでもない。
何なら7話現在で苗字しか判明しておらず名前すら分からない。
(私は早く膳野君で跡部様ゲームがしたいのに…)
少なくとも陰陽師バトルで彼が活躍することは今のところ無さそうな一般人だ。
しかし第1話の掲載時は「鵺の陰陽師」よりも「膳野」で検索した方がTwitterの話題が引っかかる位に彼の衝撃はデカかった。
(思えばあの時点で私は幻妖に憑かれていたのかもしれない)
しかも彼、普通の男子高校らしく「学校のマドンナと挨拶しちゃったぜ…!」と学郎に報告したりもする。
マジで黄金の精神持ってるだけの一般高校生じゃねぇか!!!
少なくとも私が今まで読んできた漫画の中で膳野タイプの登場人物は膳野以外見たことがありません。
他にも学生になりますしている鵺さんを「血の繋がっていない姉」と伝えた学郎に対して「えっちすぎんだろ!!」とキレる男などあまりにもキャラの個性が強い
一件必要なさそうに見える、あまりにも濃い彼らの内面を描写することで「学郎が守るべきかけがえのない日常」という面を強く読者に印象付けているのは見事な手法だと思う。
(実際は川江先生が男子高校生のノリを書きたいだけな人なのかもしれない)(描写一つでも人によって見え方が違い過ぎる)(鵺要素ここ?)
こういった濃い俗筋が妙なツボ(ジャンプを読んでいる時に普通押されることはない)を刺激して私は無事にこの作品のファンになってしまった。
面白さ②打ち切り回避の安定択の「速さ」を重視していない
ジャンプといえば打ち切りレースの過酷さで知られています。早い物だと4~5話で打ち切りが決まるパターンもあり無情な見切りの速さが連載の質を高めてると言えます。
その関係でジャンプの新連載の展開にはとにかく「速さ」が求められます。
これゆえに部員集めからやるタイプのスポーツ漫画は鬼門とされています。
逆に速さを意識している漫画は残る可能性が大きく
私の一番好きなジャンプ漫画の火の丸相撲は3話で他校と試合をしたり黒子のバスケも4~5話で黄瀬を出しています。
アンデラとかレジエレキみたいなスピード感でした。
そこでこの鵺の陰陽師2話
「1話で覚醒した主人公の能力説明」なんてありきたりなルートを走るのではありません。
「超強い幻妖のお姉さんが主人公をポケモンカードでボコボコにした後クラスメイトの中の良さを見せつけた後、幻妖がとりついた先生を男子全員で窓に押しやり、窓から先生が落ちてなんやかんやで学郎が幻妖を払う」
というかなり攻めた内容です。(決まり手:突き落とし)
第23話ぐらいの箸休め回みたいなあらすじだ。
勿論、「学郎がクラスメイトから認められる」「陰陽師という存在についての言及」等の下準備要素はあるのだが
例えば「クラスメイトに陰陽師がいて2話で仲良くなり最後に陰陽師であることが発覚する」とかそういう「繋ぎ」の要素があるわけでもなく極論、「飛ばしたところで困らない」話ではある。
けど後々の「来るのかい?ゲームじゃないから手加減してあげるよ」のカッコよさや学郎自身の善性を示すのには非常に有効な回だった。
そして何よりもクラスメイトの濃い描写から「一話の膳野は偶然の産物じゃない、計算して作ったものだ」というメッセージを川江先生から受信出来たのだ。
(もしかしたら全くそんな意図はなく単に私が変な電波を受信しているだけかも知れない)
(逆に「ある」んじゃないのか?どうなんだギメイ?)(なあギメイどうなんだ?)
面白さ③防御力が「分からない」低いんじゃなくて「分からない」
注意 ここから輪をかけて「いや、それ違くない?」と思われる持論が増えますが私も(これは強みなんだよな…?)と半信半疑で書いているのであなたの違和感は正常です。でも僕も突っ走ります。かかってこい
ジャンプの感想スレなどで良くこすられる言説に「漫画の防御力」という物があります。
リンクはこちら
ジャンプの漫画学校講義録⑥ 作家編 松井優征先生「防御力をつければ勝率も上がる」 - ジャンプの漫画学校 (hatenablog.com)
「魔人探偵脳嚙ネウロ」「暗殺教室」「逃げ上手の若君」でおなじみの松井先生がとある企画で語った説なのですが松井先生の漫画の上手さも相まってかなりの信用が置かれており、スレでは注釈なく「○○は防御力高いだけでフックがない」みたいな使われ方をしています。
漫画以外にも通用すると思うので是非とも1度見て頂きたい。
そんな防御力論を大雑把に抜き出すと以下の通りです
読者のお金以外のコスト(時間や読むのに必要な労力)を減らそう!そのためには
①大筋を理解するのが容易
②どこに注目して読めばいいかはっきりしている
③文字数を一文字でも少なく
④絵が疲れない
⑤不快にさせるキャラやストーリー展開がない
⑥つまらないコメディシーンやセンスのないオシャレは省く
⑦読んだ時間・労力の割に内容が濃い
これを鵺の陰陽師に当てはめていくと
①微妙。学郎の育成が当面の目標だがその先が分からない。
②アウト。川江先生的には男子高校生のノリが注目させたい所かもしれないが…
③分からない。ここで言う文字数は「設定の複雑さ」に近いものがあるが鵺の陰陽師は本筋と関係ない所で文字数を使うし本筋の設定はかなりスパッと説明してる。(なんなら「二大名家」という重要そうな設定を枠外の脚注で解説してる)(なんで?)
④当てはまってる。基本的に幻妖絡みは「黒」が基調でそれ以外は「白」を基調にしてるため見やすい。
⑤当てはまっている。独特の味わいがあるキャラとストーリーだが不快さは無いし絶妙な塩梅、学郎もオドオドしているが人助けの際にはためらわず動けるすげえやつ(後方膳野面)
⑥マジでわからない。「つまらない」コメディーシーンということなら「いや、面白いが…?」と反論するが
「その面白さって大衆からみて面白いものなの?君がこのマンガをネタ漫画として見てたから面白く感じるだけじゃないの?」とガン詰めされたら「ん んお ああ」「ん?んおお んああ」と揺らぐ自信がある。
鵺の陰陽師の1番難しい部分で(俺はめちゃくちゃ好きだが他の人にウケるか…?)がかなり多い。
⑦分からない。読みやすくて内容は「濃い」のだがその濃さ(俗筋)を本来の味と捉えてしまっていいのか?
看板メニューよりも人気なサイドメニューがある店状態になってないか?
いやそもそもこの漫画の看板メニューは何なんだ?どうなんだギメイ?
よくわからなさ過ぎる、鵺的だ。
この不可解さがテンプレ的な面白さから外れてよりこの作品に引き込まれるきっかけになっている。
面白さ④藤堂葵と仲良くなれそうなヒロインの一貫性
基本的に漫画に置けるヒロインは属性を散らすのがスタンダードだ。
例えば
「君のことが大大大大大好きな100人の彼女」とか…
いやあれは極端な例だな……
最近のラブコメで例えるなら「恋染紅葉」の
紫之宮→世間知らずだけど一生懸命な女優。ドラマ撮影の為に転校してきた。料理が出来る。
七里→おっとりしてるが主人公への好意を明確に表しているナイスバディで主人公の幼なじみのグラビアモデル。料理が下手。
春日→野心が強く実家が貧乏で妹と弟の面倒見が良い腹黒系アイドル。ツンデレ。
としっかり要素をずらしてきている。
こうすることで「この子可愛いしこの漫画読んでみるかぁー」というフックが増えるのだ。
私も七里に釣られて恋染紅葉を読んでいた。
対する我らが鵺の陰陽師のヒロイン(藤野さんは現状分からないので保留)(でもLOLやってるから味方にはならなさそう)
鵺さん→主人公にとってのお姉さん的立ち位置。高身長。巨乳。主人公に膝枕してくれる。格ゲーの永パで主人公をぐちゃぐちゃにする。
周防先輩→主人公の先輩。高身長。巨乳。主人公をお姫様抱っこしてくれる。忘れろビームで主人公と私の情緒をぐちゃぐちゃにする。
一貫性があり過ぎる
だが散々鵺の陰陽師を推してきた私でもこれは流石にわかる。
「悪手」だ。
確かに好きな人には刺さるだろう、現に私にはモロ刺さりだ。
忘れろビームはマジで気持ち悪い笑みが出た。
しかし残酷な事を言えばヒロインの属性は客寄せの「道具」である。
1人の読者が好きなキャラを2人だすよりも
2人の読者が好きなキャラを2人出した方がいいに決まっている。
連載とはそういうテクニックの積み重ね…
「ーーーー!!!」
ん……?
鴨川会長!!!!?
……
しかしやはり週刊連載とは属性を分けるなどのテクニックが必要不可欠……!!
……
…………
………………ッ
……………………ッッ!!!!!!
面白さ⑤描写しなくてもいいところまで描写するのに必要な部分は絶対に削らない丁寧さ
ここまで鵺の陰陽師の独特な描写を紹介してきたがこれらは決して「ただ変な漫画」という訳ではない。
むしろ逆で、必要な部分をきっちりと認識できているのに横道にそれまくるから面白いのだ。
とくに好きなのがこの部分で
自己肯定感の低さから「この方法が本当に最善なのか」という迷いで決断が鈍くなりがちな学郎が「助けて」の一言で全て放り投げて
「はい、今助けます」と目の前の人を助けるのに全力を尽くす学郎とその様子を見て何かを思う周防先輩(誰かと組んで仕事をするのは珍しいらしいので対人で何かしらのトラブルあり?)という流れが絶妙な間を使って伝えられている。
漫画が上手い(小並感)
「しかし必要な部分も不要な部分も描写するなら何かしら削らないと枠が足りないだろ!」という読者の方もご安心。
この漫画は戦闘描写を限界まで削ることで登場人物たちの繊細な心情を書き出しているのです!
ん?
「退幻学園バトル新連載の触れ込みで始まっているのにバトルを省くのはおかしい」?
ーーーーーーーっ
新しい世界は確実に見せてくれるだろ!
まあ待って欲しい。
川江先生がバトルをしっかり描けるのは過去の読み切りで証明されてるし
来週の第8話は確実にバトル展開で
「鵺の陰陽師!バトル展開でも面白いなんて無敵じゃん!!」てTwitterで話題が沸騰するに決まっている。
後書き
正直、鵺の陰陽師より面白い漫画はあるかもしれない。
私にとっての魂の漫画である
「うえきの法則」「史上最強の弟子ケンイチ」「その淑女は偶像となる」に「鵺の陰陽師」が並ぶかは怪しい。そもそも未完結で現在7話までしか読んでいない。(‘‘魂の漫画の過半数サンデーじゃん‘‘とかいうやつはこっち来いお前も殴るから)
しかしこの少年ジャンプという日本一過酷な戦場で定石をぶん投げながら「鵺の陰陽師」という漫画が爆走することには大きな意義があると思う。
もちろんそんな小難しい話だけではなく漫画としても純粋に面白いし、こんなジャンキーの意味の分からない落書きなどなくても人気が出る漫画は出る。
まあ端的に言えば
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