パルプ小説練習 #2

MAKE MONEYを目指してパルプ小説の練習をする。

プラクティス3

 佐野が倒れている。俺は何が起きたかわからない。わかるのは、右手の銃が、確かな熱量をもってそこにあるということ。
「弾が…なんで…?」
 俺は銃を確認する。
 しかしその時だった。
「いいから続けろよ、隆太」
 神崎がニヤけながらそう耳打ちする。そして、何事もなかったかのように演技を続けている。

 芝居なんて続けている場合じゃない。俺は佐野のもとに駆け付けようとした。だが驚いたことに、佐野の死体は黒子によって回収されていた。バックステージへと引きずられていく佐野。そして俺も、体のいたるところに赤い点が集まっていることに気づく。客席の向こう側から俺は狙われているのだ。

 俺は続けるしかなかった。中断は死を意味するんだ。神崎がこっちを向いてニヤついている。俺は奴の前に進み出た。次は俺のセリフだからだ。ステージの中央に俺は立ち、スポットライトが俺だけを丸く暗闇から切り取る。
 俺は客席を見遣る。俺の今の状況を、この中の何人が知っているのだろう。

 静寂。
 全員が次の俺のセリフを待っていた。空気の流れを体で感じる。神崎は側でまだニヤついている。俺は頭がおかしくなりそうだった。実弾の入った拳銃。佐野の死。俺が殺した。止められない芝居…。
 俺は一度目を閉じた。俺は自問自答する。おれはどうするべきだ?


 次に俺は目を開く。すると不思議なことに、俺は次に自分が何をすべきか理解していた。
 俺は深く息を吸い込んでから、こう言った。
「でもとにかく、お前だけは許さねえんだわ」
 俺は後ろを振り返り神崎のクソ野郎に銃を向けた。
 目を見開く神崎。その顔面に、俺は全弾丸をぶち込んだ。



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