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愛を紡ぐ贈り物:モンブラン・パーティの物語

贈り物の魔法

彼女はプレゼントをするのが好きでした。友達や親、親戚など、関わった人々の誕生日やクリスマスなどのイベントがあるときは、喜んでプレゼントを送っていました。当時の私は、稼いだお金は自分で使うものという意識が強かったので、親しい人に送るのはまだしも、しょっちゅう友達にプレゼントを送る感覚が理解できませんでした。

プレゼントをもらって嬉しいことは理解できます。しかし、彼女はプレゼントを贈っているときも嬉しそうにしていました。彼女の心からの笑顔が伝わってきました。彼女はよく出かけ先で「ちょっとプレゼントを見たいからいい?」と言います。決して金銭的な余裕があるわけではないので、予算の制約もありました。しかし、彼女は送る相手の好みを的確に把握しており、限られた予算の中で精一杯考えて選んでいました。選んでいるときの彼女の表情はいつも笑顔でした。

彼女は、私へのプレゼント選びも同じく嬉しそうにしてくれました。彼女は私の好みもほぼ完全に把握しており、絶対の自信を持っているようでした。毎回サプライズで、渡すまで中身を伏せてくれました。正直、突拍子もないプレゼントもありましたが、ほぼ100%喜んでしまいます。初めは喜び方がぎこちなかったのですが、次第に私も彼女もハイテンションになるようになりました。

いつしか、彼女のプレゼントの習慣が私にも移り、自分の彼女に対して、常日頃から好みを把握し(裏技を使っていましたが、笑)、彼女を喜ばせるために、試行錯誤し、そして毎回確実に喜ばせることに成功していました。

※サプライズ好きな彼女のプレゼントエピソードは小説「あいから」にもあります。


モンブラン・パーティの約束

彼女とのプレゼントのやり取りを経験し、もらう側だけでなく渡す側も幸せな気持ちになることがわかりました。それ以来、娘たちにプレゼントを渡す際にも、色々と考えるようになりました。考えている時間が、実は幸せな時間なのです。

サッカーのための寮に住む長女は、普段からサッカーのスパイクや必要な用品を買ってもらっているためか、誕生日やクリスマスのプレゼントをいつも遠慮してしまいます。私は遠慮する必要はないと思いますが、これは長女なりの配慮なのでしょう。

ジジョの誕生日が近づいてきたため、何をするかを考えました。いつも行くレストランでの食事は、事前の休日に行きましたが、当日何もしないのもどうかと思いました。そこで「モンブラン・パーティ」を思いつきました。都内のお店で色々なモンブランを買ってきて、スイーツが好きなジジョを喜ばせようと考えたのです。「誕生日当日はスイーツを食べるか」と提案したところ、ジジョは喜んでいました。もちろん、ただスイーツを買うだけではなく、色々と計画していました。そのための有給休暇も取っていました。しかし、誕生日前日にインフルエンザと診断され、食欲がないため、誕生日当日にはモンブラン・パーティを行うことができませんでした。

しばらくして、自称反抗期のジジョが何とも言えない表情で「あのさ、誕生日にスイーツ食べようって言ったじゃん」と言いました。多分反抗期の娘は親とスイーツを食べようとは普通言わないと思います。「わかったよ、ちょっと待ってね」と嬉しそうに返しました。

物語の世界をさらに深めるため、こちらの曲を聴いてみてください。

サプライズの連鎖:サプライズと笑顔の物語


ピエール・エルメ


モンブラン


コンビニ・モンブラン

当日、私は資格試験受験のために渋谷にいました。ピエール・エルメのモンブランを主役にするつもりで、渋谷の店舗に足を運びました。残念ながらモンブランはなかったのですが、他にも美味しそうなケーキがありました。モンブランでなくても喜ぶだろうと思い、迷わず購入しました。(このエッセイでの「モンブラン・パーティ」は何だと怒られそうですが、笑)もちろん、これだけで終わるわけがありません。一品よりも多くある方が喜ぶに違いないと思い、次に三軒茶屋に移動しました。あまりお店を知らなかったので、スマートフォンで検索し、雰囲気の良さそうな2軒の店を見つけました。評価も高かったです。実際に行ってみると、お店も店員さんも雰囲気が良く、目当てのモンブランもありました。迷わず2店舗で購入しました。サプライズのためにはジャブも必要です。そこで、主要なコンビニ3社でモンブランを購入しました(一店舗ではモンブランがなく、エクレアにしましたが、それはご愛嬌です)。大量のモンブランとケーキを持って家に戻りました。3つの袋には幸せが詰まっていました。次女が出かけていたので、彼女の帰りを待ちました。帰ってきた瞬間、「約束のケーキを買ってきたから、一度部屋に行って」と伝えると、「わかった!」と既に嬉しそうでした。まずはジャブとしてコンビニのモンブランを出したら、彼女は満面の笑みを浮かべました。正直、「誕生日なのにコンビニ?」と言われるのではないかと心配していましたが、それだけで大変喜んでくれて、素晴らしい子に育ったなと思いました。「これだけじゃないよ!これからがモンブラン・パーティだ」と言って、モンブランを出すと、「うわー!」と大喜びしました。「父親を舐めるんじゃない。お前の父はやるときはやる男だ。俺の本気を見てくれ」と心の中で思いながら、ピエール・エルメのケーキを出したら、「うわー、ピエール・エルメだ!美味しそう!」と笑顔が弾けました。どこかで見たことのある表情でした。

あなたのお母さんから学んだことをあなたへ

こうして、大切な彼女が教えてくれたサプライズの精神は、僕の中で生き続けています。彼女から学んだ幸せのおすそ分けを、彼女との間に生まれたジジョにお返ししています。

かつて、私はプレゼントというものを自己の喜びのために存在するものだと考えていました。しかし、彼女との出会いがすべてを変えたのです。彼女は、与える喜びが、もらう喜びに匹敵する、いやそれ以上のものであることを私に教えてくれました。彼女の微笑みから、その純粋な心からの贈り物の価値を学んだのです。

そして今、その教えは私の中で息づいています。彼女から受け継いだ愛のメッセージを、私たちの娘、ジジョに伝え続けています。彼女がくれた無数のプレゼントの記憶。それらは私の心にいつも温かな灯をともし続けています。

「あいから」では、この温かな灯がどのように私たちの生活を豊かにし、また次世代へと受け継がれていくのかを、一つ一つのエピソードを通じて綴っていきます。プレゼントの背後にある物語、愛情の深さ、そしてそれを贈る行為の意味を探りながら、心温まる物語へと皆様をお誘いします。

あいからをぜひ手にとってください。


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