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はじめてのファンレター

人生で初めて、
憧れの人にファンレターを書き、
ご本人に渡した。

そのひとは、
絵1枚で世界を魅了してしまう。
まるで魔法のようにさらさらと描いて、
私の"ときめき"を思い出させてくれる。

私の憧れの人、孳々(ジジ)さん。

魔法のような絵を描くひと

孳々さんの絵は、とにかく美しい。

神々しくて煌びやかで華やかで、
でも水のような静けさがあって、
まるで魔法にかけられたよう。

アルコールインクの彩りを
遊びつくすように描く。

孳々さんが描けば、人物も植物も、
昆虫でさえ宝石のように見える。
1枚1枚に魂が宿っている。

ひとめぼれだった

孳々さんの絵に出逢ったのは
何年前だったか。

仕事に忙殺され、
しかしやりがいは感じていて、
どうにも自分が自分の思うように動かないなと悩んでいたとき。

"好きなものを思い出せない"
時期があった。

休日はただ寝て過ごし、
映画も音楽も、好きな漫画さえ
手に取る気力がない。
食べてはいるが、これを食べたい!と
思えるものが思い浮かばない。

好きとかときめきを忘れてしまって、
自分が何に心躍るのかがわからなくなっていた。

そんなときだった。ぼーっと見ていたTwitterで、孳々さんの絵が流れてきた。

一瞬で目を奪われて、衝撃をうける。
なんだこの綺麗な絵…


気がつけばTwitterをフォローして、
過去の作品を漁りまくっていた。
美しすぎて、眺めていたら時間が溶けた。
でも、いつもの溶け方とちがって、充実したものだった。

初の個展開催

今回、そんな孳々さんが
個展を開くことになった。
さらに書籍も出されるという。

絶対、逢いにいかなきゃいけない。

しかも場所は渋谷。
5日間開催され、
全てに在廊されるとのこと。
だけど初日に絶対いきたい。
行って、おめでとうございますとありがとうございますを伝えたい。

そう思って、2ヶ月前から
その日は仕事を休みにしていた。
前日には、以前買った作品集を読み直し
空を仰ぎ、その気持ちのまま手紙をしたためた。

当日、お花かお菓子か何か贈ろうか
ギリギリまで迷って、
でもその分グッズ購入した方が
嬉しいのではと思い直して
ドキドキしながら向かった。

会場につくと、
美しい絵に似合う美しい空間に、
おしゃれなスタッフさんたちが
優しく出迎えてくれた。

奥に、孳々さんの気配がする。
直視できない。できるわけがない。

壁に並ぶ神作品に目をやる。
飲み込まれそうな美しさに、
少し緊張を忘れる。

原画ってすごい。
改めて、これは人の手で描かれているのかと卒倒しそうになる。

時間を忘れて、作品をみるのに没頭した。

好きな人には好きだと伝えたい

じっくり全てを見て回ったあとは、
ポストカードや書籍が並ぶレジ近くへ。

以前買ったものもあるから、
それ以外全部値段を見ずに手に取って、
レジに向かう。

精算するスタッフさんの隣に座っている孳々さん。
緊張がピークになって、
何のために来たんだ、
とつっぱる喉から声をかける。

「ァ、アノ…ファンデス…!」

ぎこちない表情、震える声。
完全に変質者というか限界オタクに成り下がりながら、
落ち着け落ち着けと言い聞かせる。

「す、数年前からフォローしてて…
ァ!個展本当におめでとうございます!
開いてくださってありがとうございます!!」

こんな怪しい私に、
孳々さんは柔らかい表情で受け入れてくれた。

「えー!そんな前から?
ありがとうございます。
よかったら本にサインしますよ」

「ァ!サイン!ゼヒ!」

さっき買ったばかりの本を開いて、
お名前なんですか?と紙を渡される。
ひゃわ〜と思いながら名前を書いたら
めちゃくちゃ字が汚くて恥ずかしかった。

すると、孳々さんは、
てっきり名前のサインをしてくださるのかと思いきや、
さらさらと美しい絵を描き始めた。

「!?…えっえっ?
絵描いてくださるんですか!?」

「あはは笑 かきますよ〜」

笑いながら、
さらさらと描いていく孳々さん。

目の前で起きてることを受け止めきれない私。
びっくりしてちょっと泣いた。
でも目に焼き付けたかったから、我慢した。

描き終わって、受け取って、
胸いっぱいになりながら、
私も…と手紙を渡した。

本当にありがとうございます、
すごい好きです、
こんなに嬉しいことはないです!
と繰り返し伝えると、

「私のことめっちゃ好きじゃないですか〜笑」
とお茶目に返してくれた。


はい、好き。

です、はい。そりゃもう。

そんなこんなで、
幸せいっぱいで会場を後にして、
午後から仕事に向かった。

ドタバタで昨日まで購入品を開けられなかったけど、
ようやく開封してため息をつく。

どれも凝りまくった作品たち。
本当に美しい。
美へのこだわりが半端ない。

サインが入った分厚い本も、
本棚の一番目立つところにかざった。
孳々さんの絵が家にある…ああ幸せ。


個展は5日間あり、
毎日丸一日在廊していらっしゃったらしい。
限界オタクな私にも
あんなに丁寧に接してくださって、
ひとりひとりにサインして…
きっとかなり体力的にも
心労もたたったのではと思う。

当たり前じゃないこのご縁、
本当に有り難い。

伝えたかったこと、
本当はもっと色々あったけど、
とにかく大好きだと言うことが伝わってよかった。

初めてのファンレター、
贈ったのが孳々さんで本当によかった。

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