日本はAI開発が遅れている!?各国との比較や挽回するために必要なこととは
日本のAI開発が本当に遅れているのか、そしてなぜ遅れているのか、気になりますよね。
この記事では、日本のAI開発の現状と他国との比較を通じて、その問題点を明らかにします。さらに、日本がAI開発の遅れを挽回するために鍵となるポイントも紹介します。
最近のAI関連ニュースからも、各国の動向が見えてくるでしょう。この記事を通じて、日本のAI開発の未来について考えてみてください。
日本・アメリカ・中国のAI関連ニュース
まずは、日本、アメリカ、中国の最近のAI関連ニュースをいくつか紹介します。現在のAIを取り巻く状況はどうなっているのか、確認してみましょう。
日本
2023年10月17日、内閣府特命担当大臣(科学技術政策担当)の高市早苗氏は「CEATEC 2023」(幕張メッセ)で「AIがもたらす社会変革」と題した基調講演を行いました。
この講演の中で高市氏は、生成AIが多くの場面で活用できることに触れ、大きな期待を寄せていると語りました。一方、犯罪や権利の侵害などのリスクはあるため、政府としても対応すべき課題だとしています。
加えて、日本の競争力強化には、企業がAI開発力を身につけることが重要とし、非IT産業がAI導入の遅れによって競争力を失わないようにすることも重要だとしました。
参考:高市早苗氏、「AI導入遅れで日本が競争力失わないことが重要」
また、2023年10月30日には、日本新聞協会が「生成AIに関する基本的な考え方」を公表しました。これは、生成AIを使用した記事が制限されなければ報道機関が打撃を受け、国民の「知る権利」を阻害しかねないとして定められたものです。
2023年11月現在は、Web上の記事などは著作権者の許可なく収集できます。しかし、報道機関からすれば相当のコストをかけて取材・制作した記事を無料で使用されているなどの問題があるため、政府は議論するべきだとしています。
参考:日本新聞協会、「生成AIに関する基本的な考え方」公表しルール整備求める…記事の無断利用進めば「知る権利」阻害も
アメリカ
アメリカのバイデン大統領は2023年10月30日、AIリスク軽減に関する大統領令に署名しました。
内容としては、アメリカの安全保障や経済などにリスクをもたらすAIシステムの開発者は一般公開前にテストを受け、アメリカ政府と共有しなければならないというものです。
バイデン氏は、AIの可能性を生かしながらリスクを避けるには技術管理が必要としています。
参考:米、AIリスク軽減へ大統領令 公開前に安全評価義務付け
また同日、AI熟練技術者のビザ要件を緩和するという報道も出ており、AIのリスクに対処しながら競争力の向上にも力を入れているようです。
参考:米、AI熟練技術者のビザ要件緩和 政府高官「我々が競争をリード」
中国
世界知的所有権機関(WIPO)のデータによると、2022年に出願された中国の研究機関によるAI関連特許は2万9,853件でした。
これは、アメリカの出願件数の約1.8倍にあたり、世界のAI関連特許出願数の4割強を占めています。日本と韓国を合わせても1万6,700件だったことを考えると、どれだけ多くのAI関連特許が出願されたかが分かるでしょう。
参考:中国、AI特許出願件数で米に対しリード拡大-22年は世界の4割強に
また、中国のAI関連のスタートアップ企業である百川智能(バイチュアンAI)が、創業わずか半年で3億ドル(約449億円)の資金調達に成功したようです。
投資家リストには、中国の大手IT企業であるアリババやテンセント、シャオミの名前があり、国全体でAI開発に力を入れていることが分かります。
参考:中国AIスタートアップ「創業半年で450億円」調達 アリババ、テンセント、シャオミがこぞって出資
日本はAI開発が遅れている?
よく日本はAI開発の面で、他国より遅れていると言われることがあります。しかし、これは本当なのでしょうか。
結論としては、以下3つの要因から、日本はAI開発で遅れていると言えそうです。
人材不足
論文数の低下
論文の質の低下
人材不足
まず、人材不足により、AI開発に人数を割けないことが挙げられます。
内閣府が公表するデータによると、日本は幅広い業種で人材不足に陥っていますが、特に非製造業の人材は不足傾向です。
出典:第1-3-1図 GDPギャップ、雇用人員判断DIの動向|内閣府
人材がいないことにはAI開発に着手できません。少子高齢化なども絡んできて難しい問題ではありますが、まずはこの人材不足を解決することにより、AI開発だけでなく、幅広い分野で状況が好転することが期待されます。
論文数の低下
文部科学省の科学技術・学術政策研究所が発表している資料によると、日本の科学技術に関する論文数は減少傾向にあり、20年前には上回っていた中国やドイツ、インドにも抜かれています。
参考:4.1.2研究活動の国別比較|科学技術・学術政策研究所
科学技術関連の論文の発表数が少ないということは、AI関連の論文も少ないと予想されます。中国やドイツ、インドが台頭してきているという現実は、危機感を感じさせますね。
論文の質の低下
続いて注目したいのが、引用されている論文の数です。被引用数がトップ10%の「注目論文数」を集計したところ、2019年以降中国が大きく数を伸ばしており、日本は中国の約1/20となっています。
多くの論文に引用されているということは、それだけ素晴らしい研究ができているということです。
その被引用数が少ないのは、研究・開発が遅れていると言えるのではないでしょうか。
日本はAI開発の遅れを挽回できるか?
AI開発で遅れているとされる日本が、これから挽回することはできるのでしょうか。
結論から言うと、挽回の可能性はあります。日本がAI開発の遅れを挽回するには、以下3つのポイントが重要だと考えます。
リスクよりもメリットに目を向ける
他社とのデータ連携を進める
「モノづくり」×「AI」
リスクよりもメリットに目を向ける
日本は国民性も相まって、慎重さが目立ちます。もちろん、慎重に物事を進めるのは失敗を避けるうえで素晴らしいことですが、ときには思い切った行動が必要になるのも事実です。
PwC Japanグループの調査によると、生成AI活用に関して感じるリスクには、日本とアメリカで以下のような差があります。
日本は品質やコストなどのリスクに多くの目が向いているのに対し、アメリカは約半数がリスクはない/分からないと回答しています。
また、生成AIそのものに対しての不安よりも、我々が正しく扱えるかという方に目が向いているようです。
この結果から、日本はリスクをつぶす方向に、アメリカはメリットを生かす方に動いていると言えるでしょう。
未知のものを作るときには、分からないことや失敗はつきものです。ある程度思い切って、一歩踏み出すことも必要なのではないでしょうか。
他社とのデータ連携を進める
PwC Japanグループの調査によると、他社とのデータ連携においても、日本とアメリカで差があるようです。
どうしてもそれぞれの企業が単独でAIを活用していてもそれ止まりになってしまい、日本全体ではAI活用・開発は進みません。
外部とのデータ連携によって、新たなユースケースが広がる可能性もあります。日本企業は、もっと他社とのデータ連携を進めていくべきではないでしょうか。
「モノづくり」×「AI開発」
日本が誇る一大産業といえば、「モノづくり」ではないでしょうか。メイドインジャパンは高品質だと海外でも有名です。
その日本の強みとAI開発を掛け合わせるのは、一つの手ではないかなと思います。
たとえば、日本の自動車や電子部品の製造工程を画像・動画データやセンサーで取得し、最適な人員配置や製造ラインをAIに学習させます。
そのAIに「こんな製品を作りたい」と入力すれば、それをもとに最適な人員配置や製造ラインがわかるようになるのです。
そうすれば、日本のモノづくりはさらに発展していき、AI開発も進められます。
もちろん、データを取得するための下準備など、すぐにできるものではありません。しかし、AI開発の遅れを取り戻すには、せっかく日本が持っている現場ノウハウという宝を生かす方向もいいのではないかと思うのです。
何にせよ、「AI」×「○○」という掛け合わせが重要になるのは間違いないでしょう。
まとめ:日本のAI開発の遅れはまだ取り戻せる
複数のデータからも、日本がAI開発で遅れているのは間違いなさそうです。しかし、このまま何もしなければ、何も変わりません。
現在AI開発が進んでいるアメリカや中国を参考にしながら、日本独自の道でAI開発を進めていくことに期待しましょう。