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少し待つてはどうだ晩霜のやうに降る詩のきらめくまでを(「静かな生活」短歌日記2010/岡井隆/ふらんす堂)



3月31日

  初桜待ちたる日々も過ぎにけり
もう少し待つてはどうだ晩霜のやうに降る詩のきらめくまでを 

   (「静かな生活」短歌日記2010 岡井隆 ふらんす堂 )


二〇一〇年の一年間、毎日ふらんす堂のホームページに掲げられた歌を日付順に編んだのが、この『静かな生活』である。
                 (あとがきより)

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賞をもらった辺りか開いてもらった会でか短歌はなにか。と聞かれ、
短歌はおまもりです とこたえた。

2011年の地震で、あからさまに調子をくずしたときは、

もう少し待つてはどうだ  

が わたしのおまもりだった。


この歌は どの様にも受けとれる。占いの言葉みたい。         それくらいの感じが よかった。


もう少し余裕をもって 
形勢をととのえて                          ゆったりと 大らかにとらえてはどうか。

そんな岡井さんの声を思いうかべるのだった。


大阪に帰り、女友だちと大阪城公園に行ったりした。          友だちはやさしく。大阪はゆれなかった。

そんなときにも ふいに

もう少し待つてはどうだ 

があらわれた。

晩霜 ばんそう おそじも 
四月から五月にかけておりる霜。農作物に大きな被害を与える。


結局、空から詩は降って来なかったのだけれど 

もう少し待つてはどうだ晩霜のやうに降る詩のきらめくまでを


今思うと この歌が こころに降ってきた 
きらめく詩だったのかもしれない。

もうすこし待つてはどうだをあてにしてやりすごしたね 
4月と5月を              今橋 愛
 

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  「敵は幾万ありとても/すべて烏合の聖なるぞ」(軍歌)
さうだろうさうだろうなあ青空に税金(タックス)みたいな白雲うかぶ

 この歌集の歌には、こんな風に歌のまえに詞書(ことばがき)が付く。
 歌と詞書の取り合わせ、力の加減も、洋服のコーディネートのようで面白い。

すきな歌を以下に

三丁目の眼医者に行つて目を治せ世界がみえなくなるその前に
なにか大きな季節が過ぎて白藤の棚仰ぐため遠回りせり 
美しい詩を読みつくすやうに食むこれは一本の胡瓜であるが 




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