あなたの知らない生成AIの世界:大企業がAIガバナンスの誤解を生む元凶
『生成AI(Generative AI)』という単語や概念は、2023年に入ってから定義も無いまま乱用されるようになり、非常に多くの誤解が含まれています。新規に参入してきた『生成AI』関連サービスを提供する企業の説明にも、明らかに間違っている内容が多いです。
経産省や総務省も『生成AI』の定義をせずに用語を乱用しており、非常に誤解が目立ちます。このような現象が発生している元凶は、AIに詳しい松尾豊さんが『AI研究の第一人者』と称して、ChatGPTのみが生成AIであるかのような情報を自民党や総務省や経産省に拡散してしまったからです。
『生成AI』関連サービスを提供しているAI専門外の企業や、コンサルティング会社が作成している資料は、松尾豊の資料よりは少しはマトモで、『生成AIの種類』として、(1) 画像生成、(2) テキスト生成、(3) 動画生成、(4) 音声生成に分類している企業も多いです。しかし、これでも生成AIの説明としては、簡略化し過ぎており、正確な表現からは程遠いと言えるでしょう。
『狭義の生成AI』という条件であれば、(1) テキスト、(2) 映像・画像、(3) 音声・音楽のような分類でも、意味は通じなくもありません。但し、多くの『AI無知』な弁護士や監査法人やコンサルティングファームなども、このような簡略化し過ぎた生成AIの概念で、知的財産権や、情報・AI倫理を論じているので、日本のAI関連のガイドラインは、海外と比較すると驚くほど的外れな内容になっています。
広義の生成AIの定義
『生成AI』とは、新しいコンテンツを自動的に作成できる技術の総称です。生成AIには、画像、テキスト、音楽、動画、ゲームなどのメディアコンテンツだけでなく、新薬、新素材などの科学技術的なコンテンツ、自動車やロボット制御AI技術なども含まれます。『生成AI』という用語は、通常、AIが何か新しいデータを『生成』するときに使われます。生成モデルは、学習したデータのパターンを理解し、その理解を基に新しいデータを作り出すことが可能です。
『生成AI』は複数の異なる技術を組み合わせて使われることも多く、業種や業界によって用途や定義が異なる場合もあります。
以下に多くの方々が『生成AI』だと認識できていないものの例を挙げてみましょう。
科学系生成AI:新しい科学的モデルの生成、複雑なシミュレーションの生成などを行い科学的な新発見に活躍しています。
エンジニアリング系生成AI:新しい設計や製品の概念を生成します。
医療系生成AI:医療診断、治療戦略、新薬候補の生成などで活用されています。
自動車制御系生成AI:自動運転システムのための生成AIです。自動車の運転を模倣する方法を学習し、状況に応じて適切な運転行動を生成します。
ロボット制御系生成AI:ロボットの行動やタスクを生成するAIです。特定の環境やタスクに適応するための新しい行動や操作を生成するために使用されています。
3Dモデリング:生成AIは3Dモデルや地形を生成するために利用されます。これは、建築設計、映画やゲームのCGI、仮想現実(VR)などの分野で活用されています。
分子設計:化学や薬学の領域では、生成AIは新しい化合物や薬剤を設計するために使用されています。AIは既存の化合物の構造や性質を学び、新しい化合物を生成します。
製品設計:エンジニアリングや製造の分野では、AIは新しい製品設計を生成するために使われます。これは、既存の製品設計から学び、新しい設計を提案します。
プロシージャルコンテンツ生成:ビデオゲームの領域では、AIは新しいゲームレベル、敵キャラクター、アイテムなどのゲームコンテンツを生成します。
自動プログラミング:生成AIはコードを生成するために使用されることがあります。AIは既存のコードから学び、新たなコードを生成します。
データ拡張:生成AIは既存のデータセットを拡張するために使われます。これは主に小さなデータセットを持つ分野で有用で、新しいデータを生成して学習データを補完します。
上記のような『生成AI』以外にも『予測AI』、『分析AI』、『最適化AI』など、これまで日本の産業を牽引してきた重要なAI技術分野を軽視して、ChatGPTが流行ったというだけの理由で、日本の優秀なAI人材やスーパーコンピュータの富岳のような計算資源を、(1) テキスト、(2) 映像・画像、(3) 音声・音楽といった『生成AI』の一部の分野に集中させる日本政府の政策は愚策と言わざるを得ません。
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