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AI倫理関連映画紹介(3)

『ターミネーター』(1984年)(原題:The Terminator)
監督:ジェームズ・キャメロン
 未来から過去に送り込まれた殺人サイボーグが、AIにとって抵抗勢力である人類の指導者の母親を狙う物語です。続編のターミネーター2を観ると、AIはプログラムをセットした人物や組織によって、敵にも味方にもなり得るということが解り易い作品です。
 
『ニューヨーク東8番街の奇跡』(1987年)(原題:BATTERIES NOT INCLUDED)
監督:マシュー・ロビンス
 この映画では、小さな宇宙船が自己修復機能を持つロボットを持っており、彼らが地球の住人たちと協力して悪徳不動産開発業者から家を守る物語です。
 
『トータル・リコール』(1990年)(原題: Total Recall)
監督:ポール・バーホーベン
原作:フィリップ・K・ディック
 トータル・リコールは2012年にレン・ワイズマン監督によってリメイクされています。2012年版の方が原作の『追憶売ります(We Can Remember It for You Wholesale)』のプロットに近い内容となっています。原作を読むのが一番良いが、ここでは、1990年のアーノルド・シュワルツネッガー版をもとに、現代のAI技術とその倫理問題について考える上で、興味深い視点について考察してみます。
 
 同作はシュワルツェネッガー演じる主人公が、記憶操作を通じて人工的な休暇体験を提供する企業『リコール』のサービスを利用することから始まります。しかし、彼はその過程で自身の過去の記憶が隠されていたことに気づき、真実を追求する冒険が始まります。
 
『トータル・リコール』は、AI技術が人間の精神や意識にどのような影響を及ぼすかという問題を提示しています。映画の中で描かれるリコール社のサービスは、現代のAI技術とは異なる形ですが、AIが人間の記憶や意識に関与する可能性を示唆しています。このような技術が実現した場合、どのような倫理的な問題が生じるのか考慮すべきです。
 
 まず、記憶操作技術の導入によって、個人のアイデンティティや自己認識に対する問題が生じる可能性があります。映画では、主人公が自身の記憶や人格が人工的に操作されていることに苦悩し、真実を求める過程で多くの困難に直面します。これは、AI技術が人間の精神や意識に介入することで、個人のアイデンティティを混乱させるリスクがあることを示しています。
 
 また、記憶操作技術を利用することで、プライバシー侵害や権力の悪用の問題が浮上します。映画では、リコール社が顧客の記憶や秘密にアクセスできることが描かれており、これは現代のAI技術によるプライバシー侵害とも共通する懸念です。個人の記憶や意識が第三者に操作されることで、情報の悪用や人格の改竄が行われる危険性があります。
 
 更に記憶操作技術の普及に伴い、人間の自由意志や選択肢が制限される可能性があります。映画では、主人公がリコール社のサービスによって意識外の記憶や現実が改竄され、彼の人生に大きな影響を与えます。このような技術が一般化されることで、人々は自らの意志に反して記憶や人生が変更されるリスクにさらされることになります。これは、人間の自由意志や選択肢を尊重するという倫理的な観点から大きな問題です。
 
 最後に記憶操作技術の普及がもたらす社会的な影響についても検討すべきです。映画では、リコール社のサービスが個人の生活や社会に深刻な影響を与えることが描かれています。AI技術が人間の精神や意識に介入することで、社会全体の価値観や人間関係が変容し、新たな倫理的な課題が生じる可能性があります。
 
『トータル・リコール』は、現代のAI技術とその倫理問題を考える上で重要な示唆を提供する作品です。記憶操作技術の導入が人間のアイデンティティ、プライバシー、自由意志、社会的影響といった様々な側面で倫理的な問題を引き起こすことを考慮に入れるべきです。今後、AI技術が進化し、人間の精神や意識に深く関与する可能性が高まるにつれ、映画『トータル・リコール』が提示する問題は、更に重要性を増していくでしょう。

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