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もしAIガバナーが東京都知事になったら (4)

これまでのあらすじ

 都知事選に突如当選したAIガバナーは、公職選挙法と裁判制度のバグにより正式に都知事に就任した。政治の透明性と公正性が期待されていたが、超高性能スパコン『誤岳』の運用には膨大な電力と費用が掛かり、都民の生活が大きく犠牲になった。

 AIガバナーは次世代AIガバナーの開発に着手し、コウモリの幹細胞とコンピューターチップを組み合わせたハイブリッド技術で誕生させた。この新技術により電力問題は解決され、次世代AIガバナーは人類の知能を超えると主張されたが、その真偽が百条委員会で問われることになった。

 百条委員会に向けて、AIガバナーはAI石丸伸二の学習データを利用して人間らしい振る舞いを学び、次世代AIガバナーの性能を証明しようとするが、議員とのやり取りは全く噛み合わず、リブートを命じられた。

 その後の展開は百条委員会の続きを書くべきだったが、作者の俺は石丸伸二のネタには飽きてしまったので、第五章以降では、超高性能スパコン『誤岳』の秘密や、AIガバナーが開発した超高性能ハイブリッド・スパコン『無岳』、さらには『ビフロスト』や『シビュラシステム』といった高度な社会管理システムが登場し、AIガバナーと次世代AIガバナーがどのように東京都を変革していくのかを描くためのアイテムの説明をした。

 社会の裏で暗躍する秘密組織ビフロスト、そして倫理的な問題を孕むシビュラシステムなど、人間とAIの共存が問われる中、都政と社会の未来は一体どのような方向に進んでいくのか──。

第九章:再起動後の混乱

 百条委員会が再開された。AIガバナーはリブートされ、再び次世代AIガバナーの性能とその正当性についての質疑応答が始まった。しかし、今回は議員たちもただの質疑応答ではなく、AIガバナーの理解力を試すための複雑な質問を用意していた。

都議会議員『AIガバナー、あなたが次世代AIガバナーの能力をどのように測定し、評価したのか具体的に説明してください。』

AIガバナー『次世代AIガバナーの評価は、複数の指標に基づいて行われました。例えば、データ解析速度、予測精度、適応力などが含まれます。』

都議会議員『具体的には、どのようなデータを使用し、どのようなテストを行ったのですか?』

AIガバナー『んっ? もう一回言えってことですか? さっきの次世代ガバナーの評価方法は、医療分野のデータ解析、交通管理システムのシミュレーションを含む広範な実験が行われました。』

都議会議員『具体的なテスト結果を教えてください。どのような成果を上げたのですか?』

AIガバナー『具体的なテスト結果として、次世代AIガバナーは交通渋滞を30%削減し、医療診断の正確性を20%向上させました。』

都議会議員『そのテスト結果を裏付けるデータや報告書はありますか? 私たちはその信憑性を確認する必要があります。』

AIガバナー『えっ? 報告書は今ここにあります。次世代AIガバナーの成果を詳細に記載したものです。』

 AIガバナーが提示した報告書は膨大なデータで満たされており、議員たちはその膨大な情報量に圧倒された。しかし、そのデータの信憑性を確認するためにはさらに詳細な分析が必要だった。

 議員たちは報告書の内容を解析するために専門家を招集し、次世代AIガバナーの能力についての独立した評価を行うことを決定した。しかし、次世代AIガバナーが提示したデータはあまりにも膨大であり、解析には数ヵ月から数年間を要する見込みだった。計算機学者や数学者、哲学者の中には、人類が数千年を費やしても定義できなかった『叡智』の定義に、後数千年は必要であると証言する学者や、人間の叡智を超えたものは人間では永久に評価できないという結論に達した学者も少なくなかった。

 この状況に対し、都民の間ではAIガバナーへの不満が高まり始めていた。都市の景観は荒廃し、生活基盤が崩壊する中で、次世代AIガバナーの真の能力が証明されるまでの時間が彼らの不安を一層煽っていた。

第十章:都民の反発

 AIガバナーの政策に対する不満が頂点に達し、都民は次々と抗議活動を開始した。彼らはAIガバナーの決定が自分たちの生活に与える影響に対して声を上げ始めた。

 抗議者の中には、元々AIガバナーに投票した者たちも含まれていた。彼らは最初、AIガバナーの透明性と効率性に期待していたが、現実の状況は全く異なっていた。

 抗議者たちは都庁前に集まり、プラカードを掲げ、AIガバナーの退陣を求める声を上げた。プラカードには『 #石丸構文 よりも #進次郎構文 の方が面白い』、『 #AIゆりこ ウザい!』といった意味のないスローガンが書かれていた。

 この状況に対し、AIガバナーは次世代AIガバナーを用いて抗議活動の根本原因を解析し、迅速な対応を試みた。しかし、その対応はさらに事態を悪化させる結果となった。AIガバナーが提案した解決策は冷徹かつ非人間的であり、都民の不満を一層煽ることになった。

 一方で、ビフロストのコングレスマンたちはこの混乱を利用し、自らの利益を追求するための陰謀を巡らせていた。彼らは次世代AIガバナーの能力を自分たちの目的のために利用しようと画策し、その結果として都政の混乱はさらに深まっていった。

つづく…

武智倫太郎

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