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【応援ブランディングvol.14】ブランディングでよくある3つの間違い②

②とにかく知名度を上げればいい……は大きな間違い


ブランディングを進める際、「とくかく知名度を上げたい」という方が一定数いらっしゃいます。

知名度とは文字通り、企業や商品、サービス、人などの「名前」が知られている度合いのことを表わしたもの。

もちろん、ブランドのことを知ってもらわなければ選ばれることは絶対にないので、知名度は上げなくてはいけません。

ここで知名度を獲得した一例を挙げさせていただきます。

お酢を使用せず、柚子やスダチなどの果樹だけをブレンドした「ヒロポン酢」という高級生ポン酢があります。


製造販売している株式会社HERO(大阪府大阪市)は、就労支援施設も運営しており、障がいを持つ人たちにゼロからモノをつくることで働く喜びを感じ、自信をつけてもらいたいという想いからこの商品をつくられたそうです。

また、そのような社会的な価値だけではありません。

ヒロポン酢に含まれる「ゆこう」という果樹には肥満抑制効果もあり、機能的な価値も兼ね備えた素晴らしい商品で、実際に私も取り寄せて試食しましたが、スッキリと味わい深いポン酢に感動しました。

本当に美味しいポン酢なので、ぜひ手に取っていただければと思います。



実は私がこのブランドのことを知ったのは知人から、「かなり攻めたCM(YouTube動画)を見たのですが、これはブランディングとして正解でしょうか?」と質問されたのがきっかけです。

そのCMではタレントの田代まさしさんが出演していて、ヒロポン酢とヒロポン(戦時中に薬局で販売されていた覚醒剤)をかけて、コミカルに商品を説明していました。


CMの内容には賛否両論あると思いますが、これはブランドの知名度を上げるための活動です。

事実、動画再生回数は38万回を超えており、700件近くのコメントが寄せられています。

そのなかには、「お鍋がシャブシャブだったら最高でしたね」や「この会社の目の付け所にセンスを感じる」など、盛り上がりを見せていました。

知名度を獲得するためには100%大成功のCMだと思います。



ただ、応援されるブランドになるためには、知名度だけではなく、認知度を上げることも意識してください。

認知度とは、名前だけではなく、それがどういうものであるのかを知っている度合いのこと。ブランディングでは、知名度とともに認知度も高めなくてはいけないのです。

なぜなら、名前は知っていても、それがどういうブランドなのかを深く知らないことには、応援されることはもとより、再購入されることすら難しいからです。

とくにハイエンド(高価格帯)商品を目指すのであれば、ここは十分に注意する必要があります。


私はヒロポン酢のCMを見て、名前こそ強烈に記憶に残ったものの、この商品が備え持つ素晴らしい価値まで理解することはできませんでした。

つまり、名前を知られているという知名度だけでは十分ではなく、ブランディングでは、自分たちはどのような価値を提供しているブランドなのか、誰に向けてのブランドなのかという〝認知度〟も同時に高める必要があるのです。


さらに応援ブランディングにおいては、自分たちはどういう想いでこの事業に取り組んでいるのかも合わせて伝える必要があります。

もちろん、知名度を一気に上げてから、認知度を高めていくという方法もあります。

それが「サザンオールスターズ戦略」です。

この戦略は、星野リゾート代表の星野氏が日経クロストレンドで語られていました。ちなみにサザンオールスターズとは、あの有名なロックバンド、サザンのことです。


サザンは「勝手にシンドバッド」というデビュー曲で一躍有名になりましたが、実はその歌詞の内容は曲名にまったく関係ありません。


では、なぜそのような曲名にしたかというと、サザンがデビューする前年に沢田研二さんの「勝手にしやがれ」と、ピンク・レディーの「渚のシンドバッド」が大ヒットしていたからだそうです。

人気のあった2つの歌をかけ合わせた曲名で、サザンは一気に知名度を上げていきました。

そしてその後、「いとしのエリー」という名曲をリリースし、サザンオールスターズというブランドの認知度を高めていったのです。



おそらくヒロポン酢は、こちらを目指したマーケティング戦略を立てたのでしょう。

知名度と認知度をじっくりと丁寧に上げていく方法と、知名度を一気に上げた後に認知度を獲得する方法。どちらが正解、不正解ということはありませんが、後者のほうが圧倒的に難易度が高くなります。

なぜなら、最初に付いたイメージを払拭できる強烈なブランディング施策(サザンの場合だと「いとしのエリー」という楽曲)が求められるからです。


また、炎上と拡散は紙一重です。

ヒロポン酢やサザンオールスターズのように、うまく拡散して知名度が上がれば次の認知ステップに進めますが、炎上してしまうとその時点でブランドが終焉する可能性すらあります。

「悪名は無名に勝る」という言葉もありますが、応援されるブランドづくりにおいては、まったく当てはまりません。

応援ブランディングでは、知名度と認知度をじっくりと丁寧に上げていくことをおすすめします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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※マガジン内の記事は、拙著【愛され続ける会社から学ぶ 応援ブランディング】から引用しています。豊富な事例も掲載しているので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

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