マガジンのカバー画像

おんがく

47
運営しているクリエイター

2017年6月の記事一覧

浅漬け

浅漬け

ザ・ローリング・ストーンズ
『BLUE & LONESOME』
2016年

さわやかである。ブルージーだったり、スモーキーだったり、ダウナーだったり、気怠かったり、というようなポーズがない。かといって、リラックスしきっているわけでもない。あえてさらりと粗くやってますよ、的なフレンドリーさとも違う。慎重さに傾かない程度に丁寧なアプローチで、奏でられている。無論、正装ではない。誠実なドレスダウン

もっとみる
光あるところで馬鹿をやる。Suchmos『THE KIDS」

光あるところで馬鹿をやる。Suchmos『THE KIDS」

Suchmos
『THE KIDS』
2017年

Suchmosには隙がある。そこが好ましい。寸分の隙もなく作り上げられたものは気恥ずかしい。よっぽどオリジナルな構築を完璧に果たしていれば話は別だが、寸分の隙もなく作り上げられたもののほとんどは、ツッコミを入れられたくないばっかりの、ただの過剰防衛に過ぎない。言ってみれば、それらは、よく出来た模範解答でしかないのだ。それも、かなり物欲しげな。

もっとみる

神よ、わたくしの大事なひとに伝えてほしい

岡村靖幸
「ラブメッセージ」
2015年

「はっきりもっと勇敢になって」から8年。 岡村靖幸はようやく、永きにわたる低迷期から脱しようとしているのかもしれない。凄まじいほどの名曲、ではない。むしろ、己の限界に向きあった末にもたらされた自然体のエナジーがすこやかで、低空のまばゆさに満ちている。
「はっきりもっと勇敢になって」には、天使、というフレーズがあったが、ここでは、神よ、わたくしの大事なひ

もっとみる

あの世でもらう批評が本当なのさ

椎名林檎とトータス松本
「目抜き通り」
2017年

 銀座の複合商業施設のテーマ曲だが、コマーシャリズムをはるかに超えた地点できらめている。時代心理を鮮やかにトレースした、2017年を代表する名曲。もし「紅白歌合戦」というメディアにいまも一年を振り返るという意味があるのだとしたら、この歌が歌われなければ何も始まらない。
 「目抜き通り」というのは銀座の比喩でもあるが、椎名林檎によれば「陽の当

もっとみる