天海を駆ける君
誰かが呼んでいる。とても遠いところで。
でも、誰よりも近いところで。
誰かが呼んでいる。私の名前を。
でも、私ではない名前を。
どうかお願いします。
この祈りの言葉が、あなたに届きますように。
――
快晴の日だった。
海はどこよりも青く澄み渡り、濁りや曇りも一点もなく、ただ青々としたその姿をいつものようにどっしりとその身を沈み込ませていた。
私はなぜだか朝から頭の中がぼんやりとしたまま、学校の授業をこなし、放課後のいつもの業務をただ黙々とこなし続けていた。
「おかしいな・・・」
そう思っているのは私一人で、周囲の人にはいつもの朝倉先生に見えていることだろう。冷静な自分を頭の中で感じる。まるで本当の自分が、そこにいる自分を隣からじっと見ているようで、少しの気持ち悪さを持ちながら、その日は過ごしていた。
ぼんやりと、教室の窓から外を見る。
快晴だった。
その眩しさに目を細める。
特別授業の土曜日は午前中に学校が終わるので午後はとても静かだ。遠くの方で合唱部の発声練習が聞こえる。優秀校のうちは決して手を抜かない基礎練が有名だった。これからあと一時間近くは発声練習や基礎練習に時間を当てるのだろう。佐々木先生は非常に生徒思いで練習熱心ないい先生だと思う。小学校のうちから基礎ができるのであれば、あの子達も幸せだろう。音痴な私は、いつもそれをうらやましく思っていた。
なぜだろう。心が落ち着かない。ざわざわと、揺さぶってくる。
教壇に肘をついて考え込むように頬を手で包む込んだ。
自分らしくないわ、そう思いながら深いため息をついた。
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