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日本からぽつんと、夢いっぱいの目をしてクルーズに働きにきたaicoにとっては、船の人たちの話す言葉はコードネームのようで不思議いっぱいでした。中でも衝撃いっぱいだった単語は「ばばるー」です。

船で私はレストランでアシスタントサーバーとして働いていました。

メインのサーバーの人と一緒にテーブルをいくつかレストランで担当します。

クルーズに乗ってはじめてのメインサーバーは、ジャマイカ人のジャッキーでした。ジャッキーは言葉はきつく厳しいんだけども、とても優しいあたたかいお母さんのような人で大好きでした。

私に仕事を教えてくれるトレーナーは、イタリア人のミケーレでした。ミケーレは私のベストフレンド。当時レストランには日本人は働いていなかったため、パイサナのいなくて心細かった私を、イタリアパイサナグループに入れてくれた心優しい人でした。(えっパイサナってなあに?って?また今度ね)

ミケーレはお調子者だったのでよく冗談をいい、ジャッキーをからかいます。私は2人のやりとりをみてるのが楽しくってよく言葉がわからなくっても笑ってました。

するとジャッキーが私に、

「Aiko!Say Babaloo to Michele!(アイコ、ミケーレにばばるー!って言ってやれ)」と言いました。

でも意味がわからないのに、ばばるーって自分を親切にしてくれている人に言えません。そう、ジャッキーに説明しました。

するとジャッキーは

「Aiko, if you are good friend with him, he will be happy when you say you are babaloo to him(アイコ、もしミケーレといい友達なら、アイコがばばるーというと彼は喜ぶんだよ、ひゃっはっは)」

と何だかジャッキーは、とっても楽しそうです。

ミケーレが私達のところにきたので、「ミケーレ!You are babaloo big time! (あなたとってもばばるーね!)」と言ってみました。

すると思ったより大きな声で言っていたようでダイニングルーム全員が爆笑しました。

そしてミケーレに、ねえ、ばばるーってどういう意味なの?と聞いても、教えてくれないし、ジャッキーも誰も教えてくれないのです。

みんなに聞いても、「Babaloo is babaloo big time!(ばばるーといえばばばるーさ、ビッグタイム〜)」と教えてくれないのです。

ここでもこの言葉がなにを示すのか、感じなくてはいけませんでした。船ではいつもそう、言葉1つ1つに辞書はいらないのです、その感覚を掴んでそのみんなの使う言葉を使うことが常なのです。

ある時は、仲がいい人に、

「ヘイ!ばばるー!昨日飲みすぎたんじゃないの?」

といっていたり。

「ばばるー!お前このコーヒーカップ横取りしただろ?」

といっていたり、

「ばばるー!その服ちょーかわいいじゃん」

といっていたり。

また、ばばるーは派生するようで、女の子には

ババリーナ!そこで何してるの?」

と、ばばるーは、ばばりーな、という女性名詞にも変貌するよう。

なるほど、ばばるーとは、きっと良いときにも悪いときにもふざけたいときにも相手を呼称するときに使うんだなと感覚を養うわけです。

ある時、

仕事を終えて、上階のレストランで仕事を終えたチーム全員がエレベーターに乗った時、キッチンのスタッフが私に話しかけました。

「はろー もしもしーニイハオ」

と。

なので、私は迷わず、

「You, Babaloo big time!」

と言い放ったところ、チーム全員が爆笑していました。どうやらわたしは正しい場面でばばるーをつかうことをマスターできたよう。

そしてフランス人のリチャードパパが、新しい言葉を教えてくれました。

Aiko, you can tell him, "are you kuku or what?"(アイコ、あーゆーくくor うわっと って言ってやれよ、ひゃっはっは)

Kukuもきっとばばるーと同じ類でかつ、相手を陥れ、より言いくるめたいときに使う単語なんだろうと察知し、

Are you kuku or what? 

と言い放って、私にニイハオといったキッチンスタッフは完敗していました。

船ではこういう言葉遊びというか、とんち遊びが常で、そういうおもしろおかしいコミュニケーションをお互いに人種などの壁なんかまったくなく共通の海賊英語で話をすることが多くありました。

今となってはとても大事なコミュニケーションだったんだなと感じます。

-aico-


-Today's 海賊英語レッスン-

babaloo と are you kuku or what

Babalooは、相手に親しみをもって呼称するときにも使うし、攻め立てるときにも使う、ばばるー という言葉。

Kukuは、ちょっとおかしい人 というニュアンス。ふざけてるのか? と言いたい時に、are you kuku or what と冗談でいうことができますが、シリアスな場面でいうととてもシャープな印象の表現に変貌します。

これらは信頼があってこそ使える単語たちだと思います。


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