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相棒3 第3話「双頭の悪魔Ⅲ〜悪徳の連鎖」感想

中編はこちら

「双頭の悪魔」最終回
長く複雑で重苦しい大長編のラスト。
ただこの話が終わっても「女優」に話が繋がるので、あまりラストという感じがしない。

【あらすじ】

右京らは、政治紙の記者・鹿手袋刺傷事件と首相補佐官の死亡事件に関連があるとにらみ捜査を進める。
鹿手袋は、代議士の片山が官房長官・朱雀の愛人で、多額の機密費を手にしていると右京に話していた。
右京は、鹿手袋が片山の秘密をつかんだために襲われたと推理する。

脚本:輿水泰弘
監督:和泉聖治

【ゲスト】

片山雛子(演:木村佳乃さん)
朱雀武比古(演:本田博太郎さん)
加賀谷秀之(演:佐戸井けん太さん)
鹿手袋啓介(演:西村雅彦さん)
瀬戸内米蔵(演:津川雅彦さん)

後編に海音寺出てないのか…

【感想】

《盗聴犯》

杉下右京、内閣官房長官を1KILL

なおその後は音越•鶴田•武智と最低でも3名の官房長官退陣に絡む模様。(もっといたかも

朱雀が沢村に盗聴器を依頼するが、沢村は朱雀を裏切り彼の部屋にまで盗聴器を仕掛けた。
沢村は所業がバレると朱雀を脅す始末。
それを知った朱雀は加賀谷と共謀して沢村を殺した。

ぶっちゃけ殺人としては普通
密室殺人は第一発見者になった際に隙を見て鍵を沢村のポケットに入れ直しただけ、アリバイは政治家の慣習を利用しかつ雛子という奥の手を用意してただけ。
面白みはあまり感じない。

ただ沢村を直接殺すって部分に納得感があるのは良き。
裏切りにより自分のメンツを潰されただけなら殺人っていうリスキーな手段に走るのはダメだが、沢村に脅迫されたという場面があったので殺して解決しようという考えは理解できる。
官房長官が私怨で殺人とか権力を振るのは下の下よ。
お前の事だぞ武智官房長官。

気になるのは盗聴の主犯
実行犯は沢村で指示したのは朱雀という事だが、指示者が本当に朱雀なのか疑問は残る。

朱雀「閣議に出席できるのは首相と閣僚と官房副長官と内閣法政局長官だけだ!」
右京「ですからその中に犯人がいるんですよ!」

相棒3「双頭の悪魔」より

怪しいのは内閣総理大臣の大賀宗次郎

今回盗聴器が仕掛けられたのは官房長官とその秘書官の執務室、官房副長官室、給湯室…そして首相と秘書官の執務室に仕掛けられていた。

右京は、朱雀が沢村へ指示したにも関わらず自身の部屋にも勝手に盗聴器が仕込まれた事を怒ったと推測しており、朱雀もそれを認めていた。
でも勝手に朱雀部屋に盗聴器を仕掛けるなら、閣議室へも勝手に盗聴器を付けてもおかしく無いのでは?

また、依頼主なのに部屋に盗聴器を付けられて激昂したという意味だと朱雀だけじゃなく大賀首相にも沢村を殺害する動機がある。
よって盗聴命令の順番は"大賀→朱雀→沢村"なのかと考えている。

もしくは沢村は朱雀と大賀からそれぞれ盗聴依頼を受けたWスパイのような活動をしていたのかもしれない。
沢村は加賀谷達への発言的から総理寄りのアンチ朱雀で、実際に役職も総理補佐官なので総理に近い。
だからこそ朱雀は沢村を仲間に引き入れたかったと考えれば辻褄が合う。

まぁ結局朱雀は官房機密費の事も含めて国の為に不利な情報は語らずに捕まってしまった。
傀儡とはいえ総理を守って逮捕か、総理と敵対した結果の逮捕か…どちらなのかは不明。

ただその後朱雀は懲役18年の判決を受け、鶴田が手を回すまでは仮釈放すら許してもらえなかった。
朱雀が大賀の為…いや、日本国家の為に自身に有利な情報を話さずに服役し続けた存在ならもっと早くに仮釈放されても良かったはず。
実際『相棒』ワールドだと閣下ですら司法取引で不起訴にさせられた実績がある訳だしね。
やっぱ政治の世界って怖いな。

とはいえ総理すら朱雀の言いなりだという描写があったのと、総理の耳には入れないように秘書官達が奮闘してる場面もあったので、何も知らない大賀さんという可能性も十分にあり得るのもまた面白い。
これだけの事件なのに総理が蚊帳の外ってのもそれはそれで日本を風刺してる感がある。

余談だけど
「沢村は自殺したり盗聴器を付けるような男じゃない」と信じていた瀬戸内さんの株は急落。
雛子といい右京といい、良い人なんだけど致命的に人を見る目が無いんだよなぁ…。

また瀬戸内は自身の感情としては、小松原の真実を告発して雛子に罪を償って欲しいという義憤
しかしそれをやると雛子の為に死んだ小松原の死が無駄になってしまうやるせなさ
この自縄自縛に陥ってしまった。
S9「暴発」で摘発の為に自殺した鎌田の為に彼をただの薬物売人にするという判断を下した早乙女に近いものがある。

因みに少し苦言になるが、沢村殺しは手口から犯人は2名以上いう前提にも関わらずロリコン加賀谷の格闘術が高すぎて1人でも成り立っていた
沢村の手を自身の両足で押さえ込みながら延長コードで首を絞めるという離れ技。
アレなら別に朱雀が口を塞いで殺させる必要性が無かった。
とりあえず加賀谷の趣味を落語じゃなくてプロレス観戦とかにするべきだった。

《窃盗事件》

課長「殺しか?」
右京「これはある意味…窃盗でしょうかね」

相棒3「双頭の悪魔」より

略奪愛は窃盗

右京さんが亀山君を必死に気遣ってるのが地味に感動する。
前回の傷心亀山を見てかける言葉が見つからなかったり、課長の詮索を避ける為に不器用すぎる面白発言しちゃったりと諸々最高すぎる。

"花の里"でもたまきさんに亀山君の件を相談したりと丸くなった兆候が見て取れる。
異動時もショックだったけど、亀山が気持ち良く行けるように去るもの追わず精神だったが、いなくなって彼のありがたみに気付いたのかもしれない。

でも肝心のたまきさんからは
「無理よ」の一言で斬られる始末。
実際"女心分からないブラザーズ(兄)"なので、下手に慰めようとして亀山も美和子も怒らせるのが目に見えてる。
頑張れ杉下右京

[奥寺美和子]
何なのよ!
これ見よがしにこんな物持ってきて!

相棒3「双頭の悪魔」より

ごめん、この頃の美和子嫌いだわ

まずお前は半年間亀山を騙し続けていた。
そして浮気相手が瀕死の重傷で亀山が本気で怒れない時に浮気を告白した。
更に仕事で亀山が浮気相手と会わなきゃいけないのに、浮気相手の見舞いに頻繁に行った。

これ見よがしにと言うならば、見舞いの件とかは美和子の方がよっぽどこれ見よがしだ。
そんな中で亀山は美和子の想いを受け入れて、鹿手袋を1発殴ってお終いにしようとしたら先制パンチを貰う始末。
マジで可哀想過ぎる

美和子が最近笑ってなかったのに気付かず、そして幸せに出来なかった事は亀山の気遣いが足りなかったのかもしれない。
でもマトモな神経してたら3人で会っちゃうと美和子が苦しむから見舞いには来なくても良いとか言うはずだろ!

もう20年近く経過して、その後復縁して結婚して今はラブラブ夫婦になってるのを知ってても亀山が可哀想過ぎて腹が立ってくる。

《今回のMVP》

片山雛子

いつまでも難破舟にしがみつくほど馬鹿じゃない

相棒3「双頭の悪魔」より

終わってみれば全て雛子の独壇場だった。
ここまで色々と暗躍しながら彼女自身は沢村補佐官殺人事件と鹿手袋刺傷事件には1mmも絡んでいないのが本当に恐ろしい。

盗聴器を仕掛けられた結果、沢村と鹿手袋に朱雀との愛人関係やお手当として機密費を受け取っていた事を知られた。
秘密を知った沢村は朱雀と加賀谷に殺され鹿手袋は軽くあしらって対処した。
しかし秘書の小松原は勝手にヤクザへ依頼し鹿手袋に制裁を加えさせたので、小松原を自死させて自身が関与した痕跡を完全に消し去る
小松原の死の真相を知った瀬戸内へは彼の性格に訴えかけて握り潰させる
また朱雀から偽のアリバイ作りに使われそうになった瞬間に即座に切り捨てた

立ち回り方が完璧すぎる。
結局彼女は小松原以外何一つ失う事なく、今回の事態を乗り切った。
まさに疑惑という大海原に浮かんだ船の進路を間違えずに進みきる事ができた

右京も小松原の死で鹿手袋襲撃を裏付ける事には失敗したが、朱雀の偽アリバイに協力すると踏んでいたのでそこから雛子を崩そうとしていたはず。
でも雛子が朱雀を裏切った事でプランは完全に崩壊。
雛子への追求を断念せざるを得なくなった。

そりゃ右京さんもビックリよ

あと右京にやれる事があるなら、生前小松原が懇意にしていたヤクザ関係者を調べ上げて鹿手袋襲撃実行犯を見つける事しかない。
ただそれは雛子が指示していた訳ではないので、雛子を捕まえるには小松原への自殺幇助を立証しなければならない。
だが小松原は自殺を完遂し、唯一それを知る瀬戸内は自らを騙して証拠を消した。
今回に関して杉下右京は片山雛子に完全敗北を喫したと言っても過言ではない。

[片山雛子]
誰かの為に命を犠牲にする人って尊いと思ってた
美しいと思ってた
けど全然違う
ただそうゆう役割の人なんですよ
実は誰かの犠牲によって守られる人ほど尊くて美しい
世の中の2種類の人間なんです
犠牲を払って守る人と
その犠牲によって守られる人

相棒3「双頭の悪魔」より

雛子の考えはこの台詞に集約されている
犠牲を払って守ろうとした小松原ではなく、犠牲を払われた自身の方が尊いという理論。
雛子の極悪さとエゴからでた理論ではなく、勝ち続ける為に犠牲を払ってもらうに相応しい人間になるという強い覚悟を感じる。
犠牲を生んでも勝ち続ける事で、その犠牲を無駄なものにはしないという強さ。

また最後に言った朱雀の愛人であった事を否定したのは、元々愛人として近付いた訳ではなく愛人だと勘違いさせて取り入る事が目的だっただけだと思う。
身体は捧げても心までは捧げない。
あくまで機密費を貰って自身の政治資金にする為の高度なパパ活という考えでしか無かったんだと思う。

冠城は雛子を愛人にした朱雀を「趣味が悪い」と形容したが、当時28歳の雛子は『相棒』最上位クラスの美人なので朱雀が溺れてしまうのも分かりみしかない。

[片山雛子]
私は幸不幸に価値を置いていません
ただ、駆け上がるだけ
それだけです

相棒13「苦い水」より

今回全て大成功した片山雛子。
しかし小松原と瀬戸内は彼女が政治家になったのは失敗だと言っている
それは強さと引き換えに優しさなど人間性を失ってしまったからとも考えられる。

駆け上がり続けた先に何があるのか、失脚し仏門に入り再び政界に身を投じた彼女を何が待っているのか。
雛子の言う通り
「結論が出るのはまだ先」かもしれないが、今後の『相棒』シリーズでも彼女の動向からは目を離せない。

【小ネタ&雑感】

抱き合うな笑

•伊丹もショックだよな…
•小松原の死体を見て雛子は何を想うのか
•小松原が善良な市民だとツラくてやりきれないんだよな伊丹
•三浦「彼氏に聞けよ!」(もう彼氏じゃない
•流石に雛子もメンタルに来てそう
•よちよち歩きの雛ちゃん
•30年前に雛子の父は初当選したって話だと思う雛子が産まれた時には議員だったのか
•雛子「警察官だから規則は守らなきゃ」(それな
•最後に一つだけキャンセル
•亀山君がナチュラルに特命係にいる
•伊丹「所轄の亀山ァ〜」
•小松原本人が事務所に行ったのかよ
美和子が逆ギレするのは絶対におかしい
鹿手袋との2ショットで諦めがついた
亀山の力になってあげようとする右京さん涙
•亀山の名前を聞く朱雀が怖い
•加賀谷の離婚理由にロリコンなのが入ってそう
•加賀谷は警察庁出身だから小野田が連絡先知ってるのか!
•蛇よりしつこい杉下右京
•謎に長いバイオリンタイム

【次回】

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