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相棒2 第2話「特命係復活」感想

前編の感想はこちら

久々に観たけどやっぱり面白い!!
小暮ひとみ逮捕への攻防戦、S1から広がった警察という組織の大きさ。
この2つが噛み合い進んでいく物語で浅倉が劇薬を投入してくる。

何度観ても飽きないなぁ…。

【あらすじ】

右京の追及に犯行を自供したひとみが、直後に服毒自殺を図った。
幸い一命を取り留めたが、勝手な捜査でひとみを追い詰めたと判断された右京らは処分が下るまで謹慎するよう命じられる。
「謹慎か…」
さすがの薫も肩を落とすが、なぜか右京は闘志満々。
「売られた喧嘩は買います、そして必ず勝ちます」
右京は命令を無視し、ひとみにお詫びと言いながら花束を手渡す。
しかしそれは新たなる宣戦布告だった…。

脚本:輿水泰弘
監督:和泉聖治

【ゲスト】

小暮ひとみ(演:須藤理彩さん)

【感想】

《ファザコン》

[小暮ひとみ]
パパじゃないからよ
みんな偽物だったからよ
私が欲しいのは、パパだもの

相棒2「特命係復活」より

『相棒』犯人の動機でトップクラスにぶっ飛んでる。
父親を恋愛対象として愛し、拒絶され想いが遂げられないとなると毒殺。
以降は遺体を愛しながらも失った父親を求めて雰囲気の近い年配男性と懇意になり、父親と違うとなると殺す。
ざっと書いただけでもヤバい。

『相棒』でファザコンだとS12「プロテクト」もあるが、小暮が圧倒的にヤバい。
ここまでの輿水脚本でも少しはあったが、甲斐ファミリーを始めとしたヤバい家族を書くのが得意分野になっていくので、今回の話でその方向性を確立させた感もある。

[杉下右京]
僕はねぇ、亀山君
どちらかというと穏やかな人間です
争い事は好みません
しかし、売られたケンカは買いますよ
そして、必ず勝ちます…!!

相棒2「特命係復活」より

マリーゴールドの花言葉は"悪をくじく"

特命係が父親への倒錯した愛情を利用するのは残酷だが最高の意趣返し。
父親への愛情で人を殺さずにはいられない女性を父親を利用して追い詰めていく。

というか今回の特命係がやった事って
•学校に押しかけてくる(謹慎中)
•家に押しかけてくる(謹慎中)
•夜分に庭へ侵入し起きるまで待つ
•不在時勝手に家に上がって細工をする
完全に言い訳不要の違法捜査で笑う
とうか最後の件は右京本人も違法捜査を認めてる。
今回は連続殺人犯を捕まえる為という大義名分があるけど、他警察官の違法行為には厳しいくせに自分だけ棚にあげるところは本当に直した方が良い。(なお20年経過しても直らない模様

そこまでやって最終的にはサイコパスである筈の小暮ひとみを悪夢幻聴幻覚が出るまで精神的に追い詰めていくヤバさ。
この敵と認めた者に徹底的にいやらしくアタックしていくのが杉下右京らしさだよな。

全てを明らかにされ、最後に残ったのは父親が家族を愛していた証。
それを見て小暮は真実の涙を流す。

ここからは想像の余地を出ないが、恐らく小暮が愛していたのは"母を愛していた父"だったんだろう。
幼少期に幸せに過ごし母とも仲が良いが比較すると父親の方が好き(LIKE)だった小暮少女。
父が自分よりも母を愛しているのを嫉妬の感情を持っていたが、2人が幸せに生きている事に小暮少女も満足はしていた。
しかし母が死に父は落ち込み、昔のように笑わなくなった。 
父が好き(LIKE)だった小暮少女は自分が母の代わりになろうと思い、その想いが暴走した結果LIKEからLOVEへ感情が切り替わった。

だから父から自分が拒否された事で
「何故母は良くて私はダメなのか」
「また私はパパに笑って欲しいだけ」

失恋の悲しみと、親子の愛情、母への嫉妬がグチャグチャになり殺害を決行した。

でも歪んではいても、根本にあるのは両親への純粋な愛情。
故に最後の写真を見て、本当に自分が求めそして自分で消してしまった理想を思い出して涙したんだと思う。
父親への愛情だけなら後悔も無く涙しないが、両親への想いが鍵だったんだと思う。

なのでそもそもパパだけでなく家族そのものを求めていて、パパだけじゃそれに足りないから被害者達は殺された。
不倫したり若い大学院生に欲情したりと救いようも無いが、最初から彼等がパパ検定に合格する可能性は0だった

《いざさらば》

[浅倉禄郎]
俺の命は俺のものだ
俺の自由にする
いざさらば

相棒2「特命係復活」より

浅倉禄郎は死んだ。
最終回で再登場するが、間違いなく今回で死んだ。

今回の話を見返して浅倉についての認識が少し変わった。
亀山の親友で正義に燃えた検事である表の顔。
売春婦を許せず殺人を繰り返す裏の顔。
その矛盾に自分でも気付きながら衝動を止められない哀れな人間。

だからこそ、逮捕時に右京へ
「ありがとう」と感謝を言う事ができた。

でも正直逮捕後の浅倉は小暮告発の件で知的な部分を見せる事はあっても、基本的に表でも裏でも無い第三の顔を見せ続けた。
表の面が強ければ罪を後悔して贖罪に励むはずだし、裏の面が強ければ罪は後悔せず控訴や上告して足掻くはず

でもS1「目撃者」や今回では自分の生存については諦め、自暴自棄になっているように思える。
釘を飲んだりホモに走ろうとしたり、表裏どちらでもない異常行動が多すぎる。

少なくとも自分が解釈している浅倉禄郎は殺人鬼ではあるが、決して異常者では無い。
刑務所で死刑が決まり、最期の時を待つ中で狂ってしまったとしか思えない。

そんな彼が武藤との出会いで
「なんだか命が惜しくなった」とまでなり、司法で殺される事を拒否して自殺した。
でも正直自殺する意味が分からず、表の顔なら脱獄はしないし裏の顔なら潜伏してまた売春婦殺害を行うはず。
自由になり自分で自分の命に決着をつけるのを美学とするような誇り高い人間だとは正直思えない。

改めて解釈をするならば、もう浅倉は生きるのがツラくなったんだと思う
贖罪をするにはあまりにも人を殺しすぎた。
親友である亀山と美和子へ命懸けの脱獄までして助けを乞うても、無慈悲に一蹴された。
それで本当に自分を救ってくれる存在は誰もいない事を自覚し、新しい繋がりである武藤も殺人犯としての自分にしか興味がない。
そして自由は当然の如く無い。
生きていても過去の繋がりは途絶え、新しい繋がりは求められない。
ならばせめて最期の瞬間は"自由に"自分で選ぶ。

それが人間としての浅倉禄郎の答えな気がする。

また数ある自殺手法で崖からの落下を選んだのは、車のブレーキに細工して崖から落ちた母親と同じ死に方を選んだ節もある。
最初から最後まで愛する母を殺した罪悪感に苛まれ続けた哀れな殺人鬼…浅倉禄郎に合掌したい。

《今回のMVP》

宮部たまき

小暮ひとみがファザコンの可能性がある事を特命係に伝えた功績が大きい。
これがあったから、右京も推理の方向性が定まって小暮を追い詰める事が出来た。

因みに今回の"花の里"にオレンジのマリーゴールドがあるんだけど、小暮に渡したのと同じタイミングなので一緒に買ったんだなと思う。
亀山の入れ知恵かもしれないが、初期の冷徹杉下右京がたまきさん宛に花を買ったと思うとちょっと萌える。
お前ら結婚しろ。

【小ネタ&雑感】

•昔は"威風堂々"がよく使われてたな
•特命係が謹慎を受けるのは初か?
•右京さんがグレーのスーツは珍しい
•まだ花の里の店内が安定してない
•とてつもなく無礼な刑事が1名(亀山は…
•近いうちに島流しの約束をする官房長ww
•お父さんは後の鮎川教授です
•無限お詫び作戦
•伊丹「運転免許試験場の亀山ぁ〜」
•取調室で怒られるのはこれが最初で最後かも
•※怖い顔で食べてますがラムネです
•缶だけでグラスも持ってくるのは良い娘
•小暮邸の撮影場所どこだろ(めっちゃ豪邸
•こんなデカい家に1人だと掃除大変そう
•ワインセラーもあるの考えたら光熱費怖い
•お父さんはミイラになったのか…(相棒でも最もグロテスクな死体
•嘘の涙は見ていられるが、真実の涙はツラい
•島流しを"おもてなし"みたいに言うなw(時代先取ってるな
•特命係が落ち着くと笑う右京さん好き
•浅倉に"さん"付けする右京よき
•海よりも下の岸壁に落ちてそう
•課長がコーヒーより紅茶を飲みたがるのは珍しい

【次回】

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