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相棒22 第2話「無敵の人~特命係VS公安…巨悪への反撃」感想

前編の感想はこちら


SP回で求められている事を全部達成してくれた高レベルな物語でした!
"特命係の活躍、ゲストの掘り下げ、レギュラメンバーの見せ場、笑える小ネタ、重厚なテーマ、複雑なミステリー、面白い物語"
これらが全て揃うのは隙が無く本当に美しい。

因みに予告の"衝撃のラスト15分"という煽りは上原さんが爆弾を投げた瞬間からなので、その後の怒涛の展開を考えると納得感しかない。

【あらすじ】

危険な宗教団体と警察に繋がりが!?
カギを握る元公安の男の秘密とは

阿佐子が捜している失踪中の婚約者は偽名を使っていて、実は鶴見征一という公安部の捜査員だったことが判明する。
鶴見は3年前、自ら志願して『微笑みの楽園』という宗教団体に潜入。
しかし、その後『微笑みの楽園』側に取り込まれ、懲戒免職になったという。
公安部長の御法川は保身の為、それを隠蔽していた。
美彌子が銃撃されたのは、その一件を掘り返そうとした為と思われた。
公安と『微笑みの楽園』をめぐる一連の出来事に、ただならぬ闇があると感じた右京は、カギを握る鶴見の捜索を続行。
すると、潜入捜査員として様々な肩書きを使い分けていたと思われる鶴見に、驚くべき秘密があることが見えてくる。

一連の事件の首謀者は元公安の刑事!?
背後では警察サイドの大物たちが暗躍
右京を頼った女性にも命の危機が……
特命係が絡まり合った事件の真相に迫る!

脚本:神森万里江
監督:橋本一

【ゲスト】

上原阿佐子
(演:栗山千明さん)

やっぱり栗山千明は危険人物じゃなきゃね!!

嘘を付くのが得意とは言ってたけど、正体を表すまで本当に騙されてました。

鶴見征一
(演:市川知宏さん)

マジで『VIVANT』

公安を抜けた後に非公式だけど活動を行うっていう設定が完全に『VIVANT』よ。
しかも仕事内容に殺しもあるっていう冷酷さ。
演者の市川さんは言葉数少なかったけど顔色声色で特殊捜査官の雰囲気を出していて最高だった。

御法川誠太郎
(演:田中美央さん)

『相棒』ワールドの公安が真っ黒過ぎて笑う。
少しは『VIVANT』野崎さんの爪の垢を煎じて飲んで欲しい。

末次広平
(演:俊藤光利さん)

予想通り事件の鍵を握っていた。

俊藤さんは個人的には『ウルトラマンネクサス』溝呂木や『仮面ライダーアマゾンズ』などの特撮関連が連想される。

今回もだけど影はあるが根が優しいって役が抜群に似合う俳優だよね。

坪内吉謙
(演:伊東孝明さん)

今回の被害者。
伊東さんのカルト信者らしい不気味な雰囲気を保ちながら、怒りながら正論を言うっていう芝居が上手くて惚れ惚れする。
怒ったと思ったらスイッチ変わったように教義を穏やかに語るのも凄い。

【感想】

《権力の暴走》

[杉下右京]
人を護らずして国を護れますか!?
それは、権力の暴走というものです。

相棒S22「無敵の人」

今回内容としては二軸あり
一つ目は『微笑みの楽園』を潰したい公安部がマッチポンプで事件を起こして摘発に動く組織犯罪。
二つ目は事件で恋人を失った上原さんが実行犯だった鶴見を特命係を利用して追いかけるという怨恨。

これらが複雑だけど美しく絡み合っていて全部解決した後の満足感は高い。

まず公安が正しいか正しくないかといえば、手法は間違っていても考え方については正しいと思っている。
現実の話だと『オウム真理教』が解体され後継団体の『アレフ』や『光の輪』などを危険視するのは当然だと思うし、そんな組織に公安が潜入してくれたら有難いし、何なら問答無用で解散解体してくれとも思ってしまう。
だからマッチポンプで事件を起こして公安が教団を潰そうというのは理解できるし、応援する側に回っても良い。
でもその為に無実で無関係の人間を死なせてしまったのは断罪に値する

そこに関して御法川は"社会の安全と治安維持の為"とか抜かしていたけど、その為に命が失われるのは右京さんの言う通り権力の暴走に他ならない。
嘘の拳銃摘発で教団潰せるんなら最初からそれをやれ。
何で爆破事件起こしたり平井蓮殺しとんねんと強く思う。
多分官房長ならずっと教団内に潜入捜査をさせて何かあったらスグに潰すか、もしくは最初から拳銃摘発みたいな罠で誰も死なす事なく解決してたと思う。

『微笑みの楽園』が"悪"ではなかったという事に騙された。
日本は過去にはオウム、近年だと旧統一教会と国家単位でカルト宗教に苦しめられてきた歴史があるので先入観だけで『微笑みの楽園』は"悪"だと断定してしまった
でも今回坪内は過去を悔いて仲間達を大切にしたりと理解できるギリギリの人間だったのが面白い。
まぁ吉井(鶴見)の暴走を警戒してたとはいえ実質黙認状態なのは如何かと思うので完全擁護はできないけどね。

というか右京さんは外界の繋がりを絶たせるのがカルトのやり方と言っていたけど鶴見や平井蓮を考えると外に出るのも自由っぽいし、献金問題とかも言及されてないしカルトじゃない可能性が高い
それどころか内部に学校と病院が完備され自給自足も行いつつ子供達も活き活きとしてるのを見ると超絶良い宗教な可能性すらある
坪内さんの雰囲気が独特過ぎて損してる説があるな。

ぶっちゃけ劇場版Ⅱとの既視感が凄い。
劇場版Ⅱは偽テロ事件を起こし国民の危機感情を煽るのが目的という、今回よりも悪質な動機ではあったがマッチポンプで事件を起こした結果死人が出て、恋人がその復讐の為に動き出すっていう流れが殆ど同じ。
強いて言えば上原さんは鶴見をただの教団信者としか認識していなかったって事くらいかな。

なので特命係が鶴見の正体を上原に教えて弁護士の立場で真実を明らかにして公安や内調などの警察組織に一矢報いる…みたいな展開もあるかもしれない。(可能性は限りなく0だと思うが

また残念な点だと鶴見という人物が深く描かれていなかった事。
何故教団潜入に志願したのか、そして何故教団を潰す為に無関係な殺人まで容認するようになったのか…

例えば10年前の『神の国』事件で大切な人が死んでその復讐目的みたいなものがあれば納得感もあるし、上原さんとの対峙も復讐の連鎖という深い物語にもなっていたと思う。
それが無いから上原さんの行動に正当性が生まれて単なる復讐の物語で収まってしまった。

また御法川に「お会いできて良かった」と語っており、単に直接の労いを感謝としているのかそれとも別の理由なのかも分からない。
村上さんと上原さんの重要な言葉と同じなので、何かバックボーンはあるような気がしている。
この変も掘り下げたら部下をただの狂信者で終わらせるっていうS8「暴発」みたいに御法川の葛藤を描けたかもしれない。
そうなると最後の御法川の発狂もネタ以上の意味が出たと思うしね。

《無敵の人》

[ひろゆき]
本来人間は、逮捕されると職を追われたり社会的な信用を失うことから、犯罪行為に手を染めることを躊躇する。

ところが元から無職で社会的信用が皆無な人には、逮捕されることがリスクにならないため
「刑務所もそんなに悪いとこじゃないのかもね」
程度の環境の変化にしか過ぎなくなる。

そのような人間が、インターネットの発達によりそれなりの社会的影響力を行使できるようになったことで「自分が警察その他多くの人間を動かせる」事に満足感・充実感を見出した。

"無敵の人" wiki

今回のサブタイは社の台詞で組織に縛られずに何も恐れずに突き進んでいく特命係…と見せかけて恋人が殺され失うものが何もない上原さんの事を示唆していた。

そうなると今回の物語は"無敵の人"っていう言葉(?)解釈を広げたように思える。
正直なところ、上原さんは良い仕事にも就いていて言い方は悪いが"恋人しか失っていない"とも言える。
家族や友人(美和子を除く)は描写されてないが、支えてくれる人間もきっといた。

なので"無敵の人"従来の意味合いである「社会に対しての復讐」ではなく、目的を成す為なら全てを捨てても良いっていう『HUNTER×HUNTER』ゴンさん的な考えも一種の"無敵の人"と再定義されてる。

この考えは面白いんだけど、そうなると大半の犯罪者は"無敵の人"って扱いになるからこの解釈を肯定するのはちょっと難しいかな。

復讐とは自分の運命への決着を付ける為にある

また右京さんはそんな上原の復讐心を鶴見を殺す事で村上さんとの大切な思い出も憎しみや絶望で塗りつぶしてしまうのかと説いて心を折ったけど、個人的にこちらは説得力不足。

大切な思い出があっても幸せな未来を奪われた怒りや哀しみは復讐をして晴れる訳じゃないが、やる事で自分の運命に決着をつけられるとも思う。

鶴見は死んで"負の理由"でも生きる目的を失い呆然と留置所にいるくらいなら自分の手で鶴見を終わらせてあげるべきだった気もする。
この場合の思い出は所詮慰めにしかならない

最後にツッコミどころだけど、教団にも持って行った爆弾水筒は見た感じ一定以上の衝撃で爆発する物だと思うけど山道逃走中とかマジで危なかったと思う。

考察全部ハズれた!!!

上原さんの正体は前編の推理で辿り着く事は可能だと思うので悔しい…!

・牧村との回想場面が無い
・牧村との写真が1枚だけ
・哀しみの表情で写真を眺める表情
・鶴見も同じ写真を持っているのに写真がしっかり画面に映らない
・婚約したばかりなのに年季の入った指輪
・爆破事故で誰かを待っていた男性
・末広さんの影が薄すぎる
ここまでヒントが出ていて全部不審だと思っていたのに辿り着けない察しの悪さ。

でもまぁカイト君逮捕ENDを超事前に当てたり(当たってほしくは無かったが)、S20「復活」で証人保護プログラムを当てた実績もあるので懲りずに予想しまくります!

《今回のMVP》

甲斐峯秋

社に公安の不審な動きを伝えて内調を巻き込んだのも彼だし、特命係に情報を伝えつつ見事に誘導して事件解決まで導いたのも彼。
カイト君の事もあるから清濁合わせつつも本気で組織を正そうと官房長イズムも持ち合わせてきている。
また最後に社は右京さんに失望されたけど、ちゃっかり峯秋さんの信頼ゲージは減っていないのもポイント(まぁ息子を闇堕ちさせた負い目もあるんだろうが
しっかり事件には噛んでいても危ない所には関与しない狡猾さ、嫌いじゃないです。

ただ残念なのが出世意欲を失っている事。
当初長官官房付になった際は復権を虎視眈々と狙い社と特命係を利用して衣笠とバチバチに争う姿勢だったけど、組織の風通しを良くして退陣するって言い出して焦った。

峯秋さんはいつか復権してカイト君の前で
「言った通りお前如きに塗られた泥なんてスグに洗い落とせたよ」
ってすまし顔で言うべきなんだよ!!!

【小ネタ&雑感】

•社さんの見舞いに来た峯秋さん優しい
•峯秋さんと比べて心配しない右京さんよ
•100歩譲って爆破事件は大義があるけど社への銃撃はヤバいだろ
•面会謝絶なのに峯秋さん入るなよ
•100万回特命係の「邪魔しない」を聞いた伊丹
•デリカシーのない右京さんを止める亀山君良き
•加工写真を何で鶴見も持ってるし
•公式インスタにも載ってる亀山君の記憶について台詞絶対にアドリブでしょ笑
•昔から時々良い事を言う亀山君
•もう部下でも同僚でもないけど協力する青木
•鑑識姿の特命係がちょっと声変えてて笑う
•劇団特命係with捜査一課
•特命係を追った人数を考えると吉川派多過ぎだろ
•青木も何で呼び出しに応じたんだよ
•官房長が死んだ場所で権力の暴走を非難するのは感慨深い
•御法川「組織の意向を無視して暴走しているのは君(右京)の方」←火の玉ストレート
•右京さんは私生活謎過ぎて一市民感じがないんだよなぁ
•土師も言うて内調と繋がってるゾ
•青木は多分人を好きになった事ないね
•椅子に座ったまま倒れるの笑った
•マンゾクってメルカリみたいなもの?
•明確な遺体が出る描写は今のご時世珍しい
•上原さんあの一瞬での記憶能力凄過ぎだろ
•この時代にもはや捜査の似顔絵って不要では…
•カイト君なら鶴見を殴ってた
•車椅子で突き進む社の大奥感
•25年間って事は御法川は47歳で部長?
•御法川の発狂芸だけど過去に鞄に顔突っ込んで叫んだ奴の印象には勝てない
•舌を噛んで自殺って可能なのか?
•S21「大金塊」を考えると社がラスボスか?
•衣笠に欠片も頭を下げない右京さん
•最後の墓参りは誰に対してだろ?(平井蓮か爆弾被害者かな

【次回】

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