第12夜👀人気の「ハイブリッド・ドッグ」・「デザイナー・ドッグ」って、なに？《第１章》最近人気の「ハイブリッドドッグ」・「デザイナードッグ」

相棒たちとの暮らし方

2301114_更新231126

今回は、３章でお届けしております。
生物の専門家ではない私が調べた内容になります。
最新情報で追記などがありましたら、温かいコメントを
お願いします！

１章　最近人気の「ハイブリッドドッグ」・「デザイナードッグ」
２章　遺伝子疾患を知ろう
３章　相棒たちとの付き合い方

相棒たちとの暮らし方

1章.　最近人気の「ハイブリッドドッグ」・「デザイナードッグ」

 ペット人気は、コロナ禍の"おうち時間の相棒”として日本だけでなく、全世界で高まりました。
　一般社団法人ペットフード協会が、昨年（2022年）に発表した「全国犬猫飼育実態調査」による新規飼育者飼育頭数をコロナ前の2019年比でみますと、猫は101％と横ばいですが、犬は122％と堅調に増加しています。
増え続ける飼い主のニーズにこたえて、室内でも飼いやすいように犬はより小型にしようとする動きが世界中で見られています。

・人気の小型犬「マルプー」や「シープー」は純血種の交配

特に、小型犬のトイプードルの交配種である、「マルプー」や「シープー」は人気芸能人やYoutuberが飼っていることも多く人気が高まっているようです。

マルプーは「マルチーズ　×　トイプードル」の交配で生まれた犬で
体高20～30㎝、体重2～3Kg程度。

シープーは「シーズー　×　トイプードル」の交配で生まれた犬で
体高20~28cm、体重3~7kg程度。

マルプー　写真出典：Pet News Storage

シープー　写真出典：あにまろ～る

写真からも伝わる「ぬいぐるみのように可愛らしい姿」ですね。

特徴は
　・小型であること
　・犬アレルギーが出難いこと
　　トイプードルの特性である毛が抜け難いため、犬アレルギーが他の犬種
　　よりも出難い

これらが、人気の要因のようです。

・ハイブリッドドッグ　または、デザイナードッグとは？

さて、今回のお題でもあります「ハイブリッドドッグ」「デザイナードッグ」とは、共に純血種の交配で生まれた犬を指します。
これらは、純血種の特性の”いいとこどり”が出来ると言われています。
今回、名称を『ハイブリッド犬』と統一して以下に、ご説明していきますね。

先ず、ここでは純血種と混血犬について説明します。

犬の分類には3つあると言われています。
「ビレッジ犬」「ハイブリッド犬」「ミックス犬」です。

ビレッジ犬
ビレッジ犬とは、その名の通り村(ビレッジ）の犬のことで、田舎や昔の村にいた犬を指し、初期の混血犬にしばしば使われていました。これらの犬から選抜された犬種が、ケネルクラブにより純血種として分類されている犬たちの元になりました。ケネルクラブとは、各国にある畜犬団体の事でイギリスが最も古いといわれ1873年に純血種の犬籍（けんせき）管理を統括する目的で設立されました。
純血種の犬の管理、純血種を生み出す事は19世紀に高まっていたようです。
まだ、約150年程度と新しい分野なんですね。

ハイブリッド犬
ハイブリッド犬とは、異なる２種類の純血種を交配するした時に、その第一世代の子を”ハイブリッド”と呼びます。これらハイブリッドドックは各純血種の特性である健康や高い知性などを兼ね備え、純血種よりも免疫力も高く、健康であるとも言われています。しかし、そのハイブリッド同士を掛け合わせると、予測できないような気質、健康問題を持った世代が生まれる可能性があることも判っています。

ミックス犬
ミックス犬とは、純血種以外の交配により生まれた犬を指します。これらの名称は、両親、祖父母、曾祖父母などが、とてもランダムな遺伝子ミックスを持っています。

・ハイブリッドの関心が高まりと、衝撃の事実

今から約35年前の1989年、オーストラリアの盲導犬団体に勤務していたウォーリー・コンロン氏が、介助を必要としているが動物アレルギーを持つ人のために、知的で働き者であるラブラドールレトリバーと、毛が抜けにくく動物アレルギーがあっても飼いやすいと言われるスタンダードプードルを交配させて、「ラブラドゥードル」を世に送り出しました。これがきっかけとなり、ハイブリッド犬に関心が集まり始めます。

この「「ラブラドゥードル」を世に送り出したコンロン氏は後に、オーストラリア放送協会のポッドキャストで後悔の念を表明しました。2019年のCNN記事によると、ウォーリー・コンロン氏（90）はオーストラリアの盲導犬団体に勤務していた1989年、ラブラドールとプードルの交配によりラブラドゥードルを生み出したことを「パンドラの箱を開け、フランケンシュタインの怪物を解き放ってしまった」と後悔の念を持って振り返ります。

これがきっかけとなり、「倫理観に欠ける冷酷な人々」が子犬の健康を顧みずにラブラドゥードルを繁殖させる現状につながった。

コンロン氏によると、ラブラドゥードルの多くは精神に異常をきたしているか遺伝上の問題を抱えており、健康な子犬が誕生する例は「ごくわずか」だという。

今や交雑は行き過ぎであり、先天性疾患のリスクを増大させかねないとコンロン氏。今回のポッドキャストでは特に、ロットワイラーとプードルの雑種「ロトル」を酷評した。

現在ではデザイナー犬は広く見られるが、そこには批判も付きまとう。例えば、ラブラドゥードルはラブラドールレトリバーとプードルに共通の股関節形成不全や眼病を発症する可能性がある。

CNN‗2019年9月27日の記事より

現在ではラブラドゥードル（雑種大1代　(F1)）のブリーディングはあまり行われていないそうです。

≪参考≫アレルギーを持つ方にも優しい介助犬

現在、「ラブラドゥードル」という名前は2つの個体群を示しています。
１つは、ラブラドールレトリーバーとプードルの雑種第1代
もう１つは、一般社団法人　日本オーストラリアンラブラドゥードル協会(ALAJ）が定める交配の犬種です。

ラブラドゥードル　出典：わんちゃんホンポ

ALAJは、日本で唯一、オーストラリアン・ラブラドゥードに対する犬籍登録と血統書の発行を行う機関です。

オーストラリアン・ラブラドゥードルは、1970年半ばにオーストラリアにある盲導犬協会が、アレルギーを持つ方にも優しい犬種を生み出す活動から誕生した犬種で、アレルギー症状の出にくいスタンダード・プードルと、人懐っこく飼い主さんに忠実なラブラドール・レトリバーの交配から誕生しました。その後、スパニエル系の犬種やレトリバー種などの交配が進み、現在のオーストラリアン・ラブラドゥードルが誕生したとされています。

オーストラリアン・ラブラドゥードルは、抜け毛の少ない事からアレルギーを持つ方にやさしい介助犬を生み出すという目標を持って計画交配により生まれました。多くの愛好家たちはこの犬種を固有の犬種として国際登録簿に認めさせようとしているそうです。

遺伝子的には、ほぼプードル

　オーストラリアン・ラブラドゥードルの犬種の遺伝子分析によると（論文：2020年）、遺伝子的にはほぼプードルであることが判明しました。毛が抜けにくく動物アレルギーがあっても飼いやすいと言われるプードルの特性がでていることを示す結果にもなりました。

また、研究者は今回の結果は、ごくわずかな遺伝子変異でも新しい犬種として定義できることを示すとも伝えています。

以下は、公式に認定されたオーストラリアン・ラブラドゥードルの先祖犬６種です（2004年10月）。

1. プードル（スタンダード、ミニチュア、トイ）

2. ラブラドール・レトリーバー

3. アイリッシュ・ウォーター・スパニエル

4. カーリー・コーテッド・レトリーバー

5. アメリカン・コッカー・スパニエル

6. イングリッシュ・コッカー・スパニエル

・30年掛けて誕生した使役犬”スリモヴ・ドッグ”

”交配で遺伝上の問題を抱える確率が高い”というこの話は、”同じ犬同士”と安易に考えていた私にとっては衝撃的な内容でした。

次は、別の角度から交配について考えてみましょう。
目的の犬をつくり出すために、30年掛けたスリモヴ・ドックのお話です。

イヌ科(Canidea)の動物の種もしくは、亜種を超えた交配により生まれた交雑種(ハイブリッド）の総称をカニド・ハイブリッドといいます。この、カニド。ハイブリッド犬種としてロシアで生まれた使役犬にスリモヴ・ドックがいます。
　このスリモヴ・ドックの誕生の目的は警察犬、探知犬としての活躍です。

ロシアの空港を守る探知犬を作り出すため、寒さに強く扱いやすいシベリアン・ハスキーと、酷暑に耐えて小型で鼻の利くゴールデン・ジャッカルを組み合わせた犬種が考案され、1975年に作出（さくしゅつ）が始まりました。

　シベリアン・ハスキー（メス）×　ゴールデン・ジャッカル(オス）

生まれたハーフ犬たちは鼻は非常に優れていましたが、ジャッカルの血が強すぎて警戒心が強く、訓練が難しかった為この犬たちを再び別のシベリアン・ハスキーとかけあわせる事により、ゴールデン・ジャッカルの血を4分の1引く犬を誕生させました。
　その後はこのゴールデン・ジャッカルの血を4分の1引く犬同士の交配によって犬種を改良・固定してスリモヴ・ドッグが完成しました。
　なお、遺伝子プールの改善のため、時々シベリアン・ハスキーを交配させる事も行ったそうです。遺伝子プールの改善とは、具体的は遺伝的に多様な犬同士を交配させる事を指します。犬に限らずあらゆる生物にあてはまる事ですが、健康と多様性を保つためには、遺伝子プールの管理が重要であることが理解できますね。

スリモヴ・ドック　出典https://world-note.com/dogs-in-russia/#toc8

スリモヴ・ドッグは訓練されて2002年から実際に空港で探知犬として使われるようになったそうで、およそ交配をはじめてから30年経っています。
しかし、まだ国外ではあまり知られていない犬種です。将来的には輸出を狙っているとも考えられているそうです。

特徴は、普通の犬の2～3倍の嗅覚を持っているとされ、性格は忠実で明るく、少々楽天的な一面もあるが飲み込みは早い。寿命は12～13年ほどで、18年生きた犬もいるそうです。

つづきは、『第２章　遺伝子疾患を知ろう』へ

≪参考≫
・芸能人にも大人気「ハイブリッドドッグ」に隠された、「残酷すぎる現実」石井 万寿美獣医師・作家まねき猫ホスピタル院長‗20211228：　https://gendai.media/articles/-/85584

・一般社団法人ペットフード協会　2022年「全国犬猫飼育実態調査：　https://petfood.or.jp/data/chart2022/3.pdf

・マルプーの特徴と写真「Pet　News Storage」　：https://www.petfamilyins.co.jp/pns/article/pfs202201r/

・シープーの特徴と写真「あにまろ～る」：https://animaroll.jp/dog-type/shih-tzu/1085657

・「ミックス犬」「ハイブリッド犬」「ビレッジドッグ」：混血犬のいろいろな呼び方：https://petty.jp/3439

・ザ・ケネルクラブ – Wikipedia

・「怪物解き放った」、ラブラドゥードルの生みの親が後悔表明：https://www.cnn.co.jp/fringe/35143198.html

・「ラブラドゥードルと呼ばれる犬のについて」と写真：https://wanchan.jp/osusume/detail/2749

・オーストラリアン・ラブラドゥードルを飼うには？費用やサイズ、飼い方をご紹介：https://www.petfamilyins.co.jp/pns/article/pfs202202e/#:~:text=%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%89%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%AB%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2&text=%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E7%97%87%E7%8A%B6%E3%81%AE%E5%87%BA%E3%81%AB%E3%81%8F%E3%81%84,%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

・一般社団法人オーストラリアンラブラドゥードル協会(ALAJ）：https://alaj.jp/　　、https://alaj.jp/breeding/

・現代のオーストラリアン・ラブラドゥードル犬種の遺伝子分析により、プードルのゲノムが過剰であることが判明（公開日2020年9月10日）：　
https://journals.plos.org/plosgenetics/article?id=10.1371/journal.pgen.1008956

・　スリモヴ・ドック　　　：スリモヴ・ドッグ – Wikipedia、
　カニド・ハイブリッド - Wikipedia、
　ロシアで生まれたカニド・ハイブリッド犬種、スリモヴ・ドッグ | For All Dogs (ameblo.jp)、　

・　犬の不思議を科学する⑯犬の健全性とスタンダードのジレンマ（4） – インブリーディングが遺伝的多様性に与える悪影響‗2020.03.16：https://mag.anicom-sompo.co.jp/11776