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【戯曲】泣いた赤鬼と鶴の恩返し 第2話

ナレーターA  よひょうとつうはよく働き、貧しくとも仲良く暮らしていまし
     た。
     そんなある日、つうは古い機織り機を使い、何日もかけて一枚の
     見事な反物を織りました。

よひょう  つう。あの反物を売ったおかげで、こんけのお金がもらえたべ
つう    お・・・かね? それはそんなにいいものなの?
よひょう  なに言ってるべ。お金さえあれば、いい暮らしができる。美味
     いものを食べて、いい服を着て・・・ぜいたくな暮らしができる
     べさ
つう    そう、よかったわね。あんたが喜んでくれることが、あたしに
     は、いっとううれしい



ナレーターA  織っている間は決して覗いてはいけない、とよひょうに約束させ
     たつうは、機織り機のある部屋にこもり、美しい反物を何枚も織
     りました。


   M4 【わたしはピアノ】

人もうらやむよな仲が いつも自慢の二人だった
あなたとならどこまでも行けるつもりでいたのに

突然の嵐みたいに 音を立てて崩れてく
涙が出ないのはなぜ 教えて欲しいだけさ

あなたから目が離せない 二人して聴くわラリーカールソン
陽だまりの中で抱かれ いつしか時のつれづれに

思い出に酔う暇もなく 心から好きよと言えた
あのころが懐かしくて なにもかも

あなたがいなければ 一から十まで一人
言葉もないままに 生きてる
繰り返すのはただ ロンリープレイ


ナレーターA  しかし、反物を織れば織るほど、つうはどんどん痩せて、弱々し
     くなっていきました。

             ※

ナレーターB  赤鬼が立札を立ててからしばらくして、青鬼が様子を見に来ました。

青鬼   赤鬼はどうしているだろう。人間の友達はできたかな

ナレーターB  しかし赤鬼は一人で部屋にこもり、しょんぼりした顔をしていま
     した。

青鬼   一体どうしたんだ。元気がないな。人間はあの立札を読んでくれ
     なかったのかい

赤鬼   読んだよ。けれどもみんな、『こんなのを信じて、遊びに行った
    ら鬼に食われるに違いない。騙されるもんか』って、来てくれな
    いんだ

青鬼   そうか。よし、俺にひとつ案がある。これからふもとへ行って、
    俺が人間たちの前でひと暴れするんだ。

赤鬼   なんだって。そんなことをしたらますます鬼が人間から嫌われる
    よ。

青鬼   まあ聞けよ。そこに君がやってきて、暴れている俺をやっつけるんだ。そうしたら、人間たちはきみが優しい鬼だってわかるだろう。

赤鬼   なるほど、それはいい案だ。ありがとう、青鬼!


ナレーターB  暴れる青鬼をやっつけた赤鬼を見て、村の人たちは大喜びしまし
     た。
     そして次の日から、赤鬼の家にはたくさんの人が遊びにくるよう
     になりました。

   M5 【友よ】

あの場所めがけ みなで駆け出せ
見てる前だけ 顔は晴ればれ
当たり前 変わりばえない日々が
実は大事 かけがえない日々が

君が明かした 夢の話が
いつの間にか 僕の目をさました
デカい世界へと 願い描いて
この冒険を共に 続けてこう

もし君があてもなく 遠ざかる星空を眺めてたら
言葉なく 君のそばにいるから 決して一人にはしないから

何十年先も 君を友達って思ってる
辛い時はなんでも 話してよ
いいことばかりじゃない この先の僕らの毎日に
これだけはずっと言える
本当 ありがとう 友よ


ナレーターB  赤鬼は大喜びでお客さんをもてなしては、毎日楽しく過ごしていました。

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