病院へ


弟が一昨日出所してから一睡もしていなかったらしい。
心配した父が病院に連れていき、17日に精神病院での入院が決まった。

一進一退のこの病気と、宗教二世だからこその苦悩。
そして未来。

私は未来を見て、というより前しか向けなかった。
後ろを振り返ると飲み込まれるから。
今でも意地でも振り返らないのは、思い出したくないから。
過去を振り返ってもいい事があった試しがないから。

弟はその逆でずっと過去に飲み込まれている。
ただし飲み込またくて飲み込まれてるのではないのだろうと最近になって思い始めた。

遺書の塊。
何通も書かれている魂の叫び。
助けてくれと叫んでいる。
どうしたら弟を過去の闇から出してあげることができるのだろうと考えている私にぽつりと旦那が言った。
「一番かわいそうなのはお前なんじゃない?」

同じ環境で育っても前だけを見て歩いてきた私が可哀想?
頑張ったではなくて?

そうか、私は可哀想なのかもしれない。
前だけを見るしかなくて一生懸命走ってきたその先で何を得たんだろう。
何も無かった。
一生懸命育てた子供たち?
仕事?
家?
そんなものが欲しかったんじゃない。

私には何もない。
そうか、私が一番かわいそうなのかも。
逃げることをせず、見ないように蓋をして傷ついた足を庇いもせずに走ってしまったから
足が完全に使い物にならなくなってしまった。
誰も私の本当はわからない。
誰も私の傷付いた気持ちに気がついてくれない。

それに気がついた時、ここからどう歩いていけばいいのかわからなくなってしまった。
ここからは自分がいたわれなかった自分の足をなんとかしなければ。

弟と一緒に私も癒していってあげないと。
どうやって?

暗闇に私も引きずり込まれた気がする。

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