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【長編小説】「青く、きらめく」

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大学の演劇サークルで出会った、カケル、マリ、美晴。三人の視点で描いた、恋愛青春小説。
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#物語

【連載小説】「青く、きらめく」Vol.1 第一章 風の章

   一、風の章  どこか遠くへ行きたい。できれば、北がいい。子どもの頃からずっとそう思…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.2 第一章 風の章

  マリは――と、カケルは思いを巡らす。マリは、新入生の時から、何か堂々として自信ありげ…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.3 第一章 風の章

「これ。首元、寒そうですから」  部が終わって帰ろうとしたとき、仏頂面のまま、マリがプレ…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.4 第一章 風の章

「あ……ありがとうございます」  美晴は、少し動揺したように目を泳がせた。 「どういたしま…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.5 第一章 風の章

 その週の金曜日、部で美晴の歓迎会が行われた。  美晴と、先に入った一年生の優、あと二年…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.6 第一章 風の章

 目が覚めたのは、午前も大分日が昇ってからだった。昨夜も、風が吹きすさんでいた。いく分、…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.8 第二章 海の章

   二、海の章  自分の部屋のドアをくぐると、マリはパタン、と後ろ手で扉を閉めた。いつもの見慣れた部屋が、まるで違う場所にみたいに目に映る。  ほっとひとつ、肩で息をする。体がほどける。次の瞬間、マリは小さな子どものようにベッドに飛び込み、クッションを抱きしめた。 ――キスをした。カケルと、キスをした。  望んでいたような、望んでいなかったような。抑えきれない感情は、不思議な泡となってマリの胸に押し寄せた。もっと早く、こうなりたかった気がする。いや、こうなるまでもっと長く

【連載小説】「青く、きらめく」Vol.9 第二章 海の章

「何か、用?」  この人だ。ひと目見て、すぐ分かった。きびすを返そうと思っていたマリは、…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.10 第二章 海の章

 キャンパスからの帰り道は、うっすらと雨で濡れている。土ぼこりが濡れた、雨の日の匂い。マ…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.11第二章 海の章

 マリは、少し緊張気味にスペースに向かう。一歩一歩、秘かな祈りをこめながら。どうか、カケ…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.12第二章 海の章

 あの夏も、そうだった。  本家に集まらないか、という話が持ち上がった夏休み。確か、おば…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.13第三章 雲の章

三、雲の章  もう、一時間も海辺で過ごしてしまった。海を目にした瞬間、先ほどまでの落ち込…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.14第三章 雲の章

 「行こう」  カケルは、振り返らずに海岸を後にする。向かう江の島のすぐ右隣りに、一片の…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.15第三章 雲の章

 カケルと美晴は、しばらく黙ったまま、並んでその風景を眺めた。  ただ茫洋と広がる海。とびが、ぴーひょろろーと鳴きながら、ときおり舞い出る。翼をはためかさずに滑空して、どこかへ消えていく。さわさわと、南国の木の細い葉がゆれる。すぐ下には、店のカラフルなパラソルがひとつ、見える。「生しらす」の長い旗も、身をひるがえしている。 「たぶん、最後だと思うんだ」  ふいに、カケルが口を開いた。 「舞台に立つのも、脚本を書くのも」  美晴は、黙ってカケルの横顔を見た。 「それが終わったら