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【長編小説】「青く、きらめく」

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大学の演劇サークルで出会った、カケル、マリ、美晴。三人の視点で描いた、恋愛青春小説。
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.3 第一章 風の章

「これ。首元、寒そうですから」  部が終わって帰ろうとしたとき、仏頂面のまま、マリがプレ…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.4 第一章 風の章

「あ……ありがとうございます」  美晴は、少し動揺したように目を泳がせた。 「どういたしま…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.5 第一章 風の章

 その週の金曜日、部で美晴の歓迎会が行われた。  美晴と、先に入った一年生の優、あと二年…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.6 第一章 風の章

 目が覚めたのは、午前も大分日が昇ってからだった。昨夜も、風が吹きすさんでいた。いく分、…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.7 第一章 風の章

〝今日、会えないかな〟  マリからそんなメールが入ったのは、日曜日の朝だった。カケルは、…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.8 第二章 海の章

   二、海の章  自分の部屋のドアをくぐると、マリはパタン、と後ろ手で扉を閉めた。いつ…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.9 第二章 海の章

「何か、用?」  この人だ。ひと目見て、すぐ分かった。きびすを返そうと思っていたマリは、じっとカケルの顔を見たまま、黙って劇団のビラを差し出した。 「これをもらって。見に来ました」 「ああ」  カケルは、一瞬ビラに目を落とすと、再びマリの顔を見た。怪げんそうな顔が、少しだけやわらいだ。 「入りなよ。もうすぐ新歓公演だけど。練習見ていく?」  マリは、こっくりうなずいた。  入学前から、自分はカケルと出会っていたのだ。すっとした顔立ち。全体の立ち姿。そのたたずまい。それは、マ

【連載小説】「青く、きらめく」Vol.10 第二章 海の章

 キャンパスからの帰り道は、うっすらと雨で濡れている。土ぼこりが濡れた、雨の日の匂い。マ…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.11第二章 海の章

 マリは、少し緊張気味にスペースに向かう。一歩一歩、秘かな祈りをこめながら。どうか、カケ…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.12第二章 海の章

 あの夏も、そうだった。  本家に集まらないか、という話が持ち上がった夏休み。確か、おば…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.13第三章 雲の章

三、雲の章  もう、一時間も海辺で過ごしてしまった。海を目にした瞬間、先ほどまでの落ち込…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.14第三章 雲の章

 「行こう」  カケルは、振り返らずに海岸を後にする。向かう江の島のすぐ右隣りに、一片の…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.15第三章 雲の章

 カケルと美晴は、しばらく黙ったまま、並んでその風景を眺めた。  ただ茫洋と広がる海。と…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.16 第三章 雲の章

 部屋のどこかで電話が鳴っている。それが自分の携帯だ、と気づくまでに、少し時間を要した。心が、今ここにいる自分の体を留守にしていたようだ。 「美晴? 元気にしてる?」  哀しい記憶の中とはまるで別人のような母の声がして、美晴は一気に現実に戻される。 「お母さん……」  泣くつもりはなかったのに、ひと言発したら、涙があふれて止まらなくなった。 「どうしたの?」  無言でしゃくりあげる娘の声に慌てている。 「何かあったの?」  ううん、何にも、と小さく言うのが精一杯だった。美晴が