【連載小説】「青く、きらめく」Vol.21 第四章 風の章、再び
部屋中に、トマトソースの甘酸っぱい香りが漂っていて、ふつふつと鍋で煮える音がする。ほとんど無言で、美晴は台所に立っていた。カケルは、横になりながら、まだ熱のある目でぼんやり美晴の後ろ姿を見つめている。美晴がそこにいることは、とても不思議な状況のはずなのに、ちっとも不自然ではなく、それがカケルを妙に安心させた。静かに目を閉じる。ゆでたジャガイモのいい匂いが、湯気と共に部屋の空気を温かなものにしている。
アルミのグラタン皿にあつあつの料理が二つ並んで出てきた。出来上がった料理