【エッセイ】ディープ横浜探訪記 <上>

2018年5月31日木曜日。
ヨコハマ、たそがれ……てない午前中、私はディープな横浜を知る友人と、小雨の降る日ノ出町駅で待ち合わせをして合流していた。

横浜と言えば、中華街、外国人墓地、赤レンガ倉庫、ランドマークタワー……いろいろとメジャーどころの観光地がたくさん出てくる場所ではあるが、今回のテーマは「ディープ横浜」。そんなチャラチャラした場所には行かないのである。行かないのである。大事なことだから、2回書いてみた。

さて、日ノ出町駅からどうしましょうか。ディープな横浜を知る友人(以下、ディープさん)と話しながら、土地勘の全くない私はトコトコついていくことしかできない。ディープとは何ぞや。何がディープなのか。私はそれを知る必要がある。この目に焼き付け、写真を撮ってやる。取材だ、取材。取材デビューだ。あっ、そうだ、そもそもがこの散策、私の取材練習が目的であった。そこんとこ、忘れちゃならない。

まずは、日ノ出町から福富町まで歩く。
福富町には、外国人……と言っても、中国や韓国の人向けなのだろうか、そんなお店が並んでいる通りがある。Hey!アッメーリカ!!エッゲーレス!!な場所はない。そして、午前中だからか、人気が少ない。新大久保のいつでも混んでる韓国人街よりも、大久保の方の大きいけど昼間は少し寂れた韓国人街、の方がイメージとしては近いと思う。韓国料理屋さんの合間合間に、ガールズバーだとか、ソープらしき店だとかがひっそりとさりげなく存在し、とにかく怪しい。すごい。ディープだ。華々しい横浜しか知らない人は、おったまげるであろう寂れっぷりと怪しさだ。良い。とても良い。私好みである。

ディープさんが言う。「実は、横浜って治安が悪いんだよ。」
これには私もおったまげである。しかしディープさん曰く、外国人のいるところ(横浜は外国ととても繋がりがある土地ですからね)、しかも外国人街のあるこの辺りは、とにかく治安がよろしくない、と。えー?そうなのー?と思いながら話を聞いていたのだが、ふと見ると、夜になると誘導灯になるであろうポール型のガードレールのようなものが、ボッコボコに壊されている。察した。ここは、昼は寂れた新宿歌舞伎町だ。夜になるとどうなるのか。個人的にはとても興味があるので、次は是非夜に出向きたい。

「たしかこの辺り……」ディープさんが何かディープなものを探している。この外国人通りだけで随分私好みなのに、一体何が出てくるのか。
「あ!ここ!!」

なんてこった!!失礼ながら、ほとんど廃墟ではないか!!なんて味のある建物だろうか。右側に見切れて写るマンションとの比較で、この味のある建物がさらに引き立っている。これが、かつての横浜福富町の家屋の姿なのである。これと比べちゃ、マンションなんてつまらない建物ですよ。よくぞ、私が来るまで残っていてくれた。ありがとう。そして、ディープ最高。

その後、徒歩で伊勢佐木町へ。
でっかいBOOKOFF発見!ディープさんはディープさんで靴が見たかったそうなので(地下がモードオフのようになっている)、入店。BOOKOFF大好きな私が見るのはもちろん、マンガコーナーだ。……安い!!!いわゆる「全巻セット」が、異様に安い。異様すぎる。ディープだ、とゆうか、大発見だ。おそらく、土地が安いのだろう。同じBOOKOFFでも、少しオシャンティな場所にあるBOOKOFFの「全巻セット」はお高いのである。しかし、私が欲しい「いぬやしき」全巻は、まだまだ人気があるらしく、ほかのBOOKOFFとほとんど変わらぬお値段であった。ぐぬぬ。

ディープさん、そろそろお腹が空きました。

ってなわけで、鎌倉街道を渡って、大通公園沿いのカリー屋さん「アルペンジロー」に到着。

ここがまた、いろいろとディープ。私が先に何を書いても、おそらくわけわからなくて伝わりづらいので、まずは写真を見ていただきたい。

私が注文したのは、「鶏と豚のカリー(中辛) ¥1080(税込)」である。

さて、どこから突っ込めば良いのかわからない読者の戸惑いが伺えます。

まず、気になるのはご飯ですかね。そう、飯盒(はんごう)に入って出てくるのだ。そして、隣のカリー(注:カレー、ではないのだ)は、ミニフライパンにシャバシャバしたスープカレーに近いルーと、新鮮なお野菜に美味しいと確信できるお肉たち。と言うのもこのカリー、ミニフライパンに入れて、もう一度火を通しているそうなのだ。香ばしい香りが、既に美味しい。

食べ方は自由自在。おそらくスタンダードなのは、あっためられて出てくるお皿にご飯を飯盒からよそって、スープのようなカリーをかけていただくスタイル。まずは、スタンダードナンバーでスタート!いただきます!

「……不思議……」
これが、私の第一声である。
本当に不思議なのである。こんな味は初めて食べた。カリーなのに、カリーじゃない。私の知ってるカリーじゃない。そんな味なのである。

カリースープのみでいただいてみる。口の中に広がるのは、香ばしいスパイスの味ではなく、じっくり煮込んだお野菜の優しくて甘い味!そして、あとから来るほんのり中辛スパイス!こ、これは…!!美味しいお野菜をふんだんに使った贅沢なスープ!!って言い切っちゃう!!微量の絶妙なバランスのスパイスで、我々の「カリー」「カレー」のイメージを破壊しに来ている!!なんて恐ろしい子……ッ!

語彙が無さすぎてとにかくすごく美味しいことを、「!」をたくさん使って誤魔化しているのがバレバレです。私なんぞには、この美味しさは表現不可能です。本当に不思議なカリーでありました。美味しすぎて、最終的にはこんな食べ方までしたほどです。

ご飯にスープが染み込んで、贅沢に贅沢を重ねたお味に。更に、忘れちゃいけないのがお肉!!!お肉のそれはそれは美味しいこと!!!!自称肉マニアの私の舌を、とろっとろに溶かしました。

次に行く時は、是非とも別のカリーを食べたい。カリーコンプリートしたい。

アルペンジロー
〒231-0058 神奈川県横浜市中区弥生町3-26
045-261-4307
ランチ:11:00~15:00
夜の部:17:00~21:30
定休日:月曜日

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ディープ横浜は、床までディープ!

食休みがてら、また歩くことに。何故そんなに歩くのか。単純なことだ、お金がもったいない。そして、単純にお金が無い。それに、道行くものがディープなのだ、見逃してはならない。

私は大抵、下を向いて歩く。人と目が合うと殺されるかもしれないからだ(ニンゲン…コワイ…)。それに、万が一床に障害物があれば、マンガみたいにけっつまずくのだ、それはもう見事に。だから、下を向くのは重要なのだ。そんな私の習性が、ステキなディープを発見した。

羽衣町の道で見つけたタイルである。名曲であり、完全に子どもの絶賛トラウマ曲で有名な「赤い靴」である。『いい爺さん』に連れられたのかと思いきや(それでも怖いのに…)『異人さん』に連れられたと知った時には戦慄したものです。そんな経験あるでしょ?「赤い靴」。

横浜の至る所に、こんな風に絵の描かれたタイルがたくさんあった。自転車発祥の地であるから昔の自転車の絵のタイルだったり、横浜の著名人の絵のタイルだったり、挙げるとキリがないので赤い靴だけに留めておく。というか、そんないろんなタイル写真、撮り忘れた。取材者失格である。折角のディープを撮り逃した。俺のばかやろう。全部、雨のせいだ。

そうこう下を向いて歩いているうちに、ディープさんに「ほら、見てごらん」と言われて顔を上げた。

しまった!!チャラチャラしてる所に出てきてしまった!!!かの有名な、馬車道である。しかし、次の目的地に行くには、ここを通らねばならぬのである。ぐぬぬぬぬ。

……でも。街灯、ステキだな……(惚れ惚れ)。ふ、ふん!まぁ、少しくらいチャラチャラしてる所も通ってみてもまぁいいんじゃない?

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ディープさん、食後のデザートが食べたいです!!

そして、辿り着いたのは…
横浜・老舗の喫茶店、「馬車道十番館」。知る人ぞ知る、有名店でもあります。
何故か外観の写真が手元にない。完全に撮り忘れである。取材者失格、その2である。全部、雨のせいだ~second~。
しかし!名物である「内装」は、バッチリ写真を撮りましたとも!!!

何が「名物」であるか、おわかりいただけるだろうか。そう、ステンドグラスである。明治時代の文明開化、ハイカラを再現した建物の造りになっており、2階はバー(写真の2枚目左側に、「英国風 酒場」の文字がある)、3階はレストラン、4階と5階は結婚式の披露宴が開けるような宴会場となっている。

以下、公式サイト(http://www.yokohama-jyubankan.co.jp/) からの引用。

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横浜と共に歩む

横浜開港の頃、海岸沿いに建てられた外国の商館は「一番館」「二番館」・・と呼ばれていました。山手十番館は母体である勝烈庵の十番目の店として昭和42年(1967年)に明治100年を記念して建てられたものです。その後、「株式会社 横浜十番館」として独立、馬車道十番館、別館馬車道十番館などを開館し、現在に至っています。

横浜・関内には開港当時の面影を物語る数多くの建造物や資料が残されていましたが、大正の震災や戦災でそのほとんどが失われてしまいました。

馬車道十番館は、そのころの建築様式を参考に、明治の西洋館を再現致しました。館内に保存された開化期の文明の香りを伝える数々の資料と併せて古き良き時代を偲んで頂ければ幸いです。

なお当所は、明治の先覚者でガス事業の創始者でもある高島嘉右衛門家の旧跡に当たります。

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とても勉強になりますね、公式サイト。昭和に造られたのに、このハイカラ感にはグウの音も出ません。ステンドグラスに、洋作り木造の天井とファン、スズランのような照明…私ははしゃぎにはしゃぎまくりマクスリスティーでしたとも。文明開化、ハイカラ、超最高。私の心を見事にイーグルキャッチ。写真バッシャバシャ撮った。

さて、ハイカラ喫茶店で優雅にデザートと珈琲を嗜むことに致しましょう。

十番館オリジナルブレンドコーヒー ¥628(税込)

十番館パフェ ¥756(税込)

珈琲とパフェとはあまり関係ありませんが、写真の奥に見える赤い椅子も、なんともハイカラです。ヨダレが出ます。思わず書き口調までいつの間にか丁寧語です。
頼んだものは、初回なので「基礎を押さえよう」と、定番そうなものを選びました。

さて、珈琲やパフェの食レポは、数多の文章が上手い人がそれはもうステキに書いてくださってると思うので、ディープを重きに置いている私は違うものを紹介しますよ。こらそこ、逃げるなとか言わない。私は私のディープを貫くのである。
珈琲の写真で、何か気付いたことはありませんか??ちょっと気になったのでアップの写真をば。

左はお砂糖、その右隣はミルク。えっ、一番右奥の白い液体は何…???? ソッコーで店員さんに訊きました。分からないことはすぐ人に訊く主義です。

「これ、生クリームなんです。」

店員さん曰く、馬車道十番館創業当時…というか、文明開化の時代は何でも生クリームをかけることがツウというか、流行りというか、高級志向の現れだったそうです。それをそのまま、ここでは再現しているとのこと。

この生クリーム、皆様の知ってる生クリームとは全く違うシロモノです。甘さ控えめ、しかし濃厚な牛乳のかほりと舌触り…酸味の効いたフルーツにかけると、大変よく合います。そうすると練乳と勘違いされてしまう書き方なんですが、練乳ではないのです。誰がなんと言おうと、これは「文明開化の生クリーム」なんです。
また、珈琲に入れるミルクも、やはり濃厚で大変美味しかったです。「牛乳」が高級品だった文明開化の時代を考えると、まさにこれは本当に贅沢品…!!嗚呼日本人よ。洗練されている最先端の贅沢も良いが、古き良き時代の贅沢も味わっておくと良いと思うぞよ。カッフェーがなければ、アイスクリンも生まれず、気軽にスーパーカップが食べられなかったのかもしれないのだから。…おっと、どこから目線なのかわからない呟き、失礼致しました。

馬車道十番館
〒231-0014 神奈川県横浜市中区常盤町5-67
045-651-2621(代表)
レストラン 11:00~22:00
喫茶・売店 10:00~22:00
バー 16:00~23:00

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ハイカラ、レトロ、生クリーム、珈琲、パフェを堪能した後。雨が小雨ながらも強めに。ディープさんが、ビニール傘じゃない傘が欲しい、と言い出した。それでは、次項から、傘を探しながら更なるディープを求める旅に出かけるとしよう。

<下>に続く→ https://note.mu/ai_yokoki0730/n/n4855ea8c29f6

#エッセイ #横浜 #ディープ #探訪記

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