幸せになって、

莉ちゃんの将来の夢は精神科医だった。
親に恩返しをしたいからお金を貯めるんだと言っていた。
莉ちゃんは幼稚園を卒業する時期くらいから居なくなった。
仲の良かった友達が別の学校に行くからだ。
代わりに私が生まれた。
私は勉強が得意じゃなかったから、毎日親に内緒で友達と遊んでいた。
親に問い詰められても、今は居ない「嘘つきくん」が親を宥めた。
暫くして圭壱が生まれた。圭壱は勉強が大好きだから家で勉強をして、私の足りない分を補ってくれた。小学2年生の出来事だった。
小学2年生の夏頃、暑くて寝れない日が続いた。
親は寝ている、孤独になった気分だった。一武が生まれた。
一武は寝るのが得意だった。
小学3年生の頃、日直で会を1人で回していた時、男友達からありもしない嘘をつかれた。必死に弁解をしたけど先生までもが男友達に加勢した。皆が私を責めた。
人前に立つのが少しだけ怖くなった。自分が責められた訳じゃないって現実逃避をした。それから自分が少しだけ幼く感じるようになった。言葉が上手く出なくてすぐ泣くようになった。多分魅月が生まれた瞬間だったんだろうと思う。
しばらくしたら、人前に立つのは怖く無くなったし幼くもなくなった。完璧に魅月と分離したんだと思う。
しばらくはこの5人で生活を回していた。
愛が家で親との交流をして、
私が学校で友達を作って、
圭壱が勉強をして、
一武が睡眠を取ってくれて、
辛い時は魅月が泣いてストレスを解消してくれた。

そんな生活をして3年、小学6年生の頃、莉ちゃんが戻ってきた。
いなくなった間の記憶は無かった、でも何故か学習した所の内容は理解していた。
でも莉ちゃんはまだ主人格として生きていく程の力は無かった。
そして中学生になった。
まだ私が主人格。

5月4日、強制交代が起きて莉ちゃんになった。
莉ちゃんには「嘔吐恐怖症」と「対人恐怖症」があった。
場所は教室だったので先生に言い保健室に行った、結局その日は早退した。
次の日も学校に行った、でも教室が無理だった。
その日は保健室で一日を過ごして友達と家に帰った。
その日の夕方、莉ちゃんは魅月と混ざった状態で泣きながらお母さんにずっと気分が悪くて学校に行けない事を伝えた。

機体ちゃんは4月から中学2年生になった。行事が沢山ある。
宿泊学習、文化祭、音楽発表会、体育祭、委員会や部活もある。
今は無理だろうと思う。でも莉ちゃんには良い意味の思い出になるような生活をして欲しい。だから私は統合しない。莉ちゃんが思い出に残るような事をして、幸せになったら私は静かに居なくなるよ。それまでの道は私達が作ってあげるから。

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