初めて母の介護用オムツを買いに行く

母がオムツを履くようになり、オムツ事情もいろいろあるなぁ~ということを改めて考える機会になった。

まずオムツは、やはり人の自尊心に大きく関わっている。

私は医療ソーシャルワーカーの仕事をしているが、以前病院で勤務していた時、オムツは嫌だと、何とか自分でトイレに行っていたがその途中に転倒し、とうとう完全にオムツを履くことになってしまった90代の男性患者さんがおられた。

その方いわく「皆は(排泄を)オムツのなかですればいいと簡単に言うけれど、そんなん一度もしたことないから、どうやってしたらええんかわからへんのや、、、」と言われていた。

言われてみれば、意識的には確かにそうだ。ただ、赤ちゃんのときは絶対オムツをしていたはずだけど、、、そんなこと誰も覚えちゃいない(「いやいや、あなたもしてたんだから、オムツでするの大丈夫ですよ。自信持って!」なんて、今のその方には決して言えないし)。

でも、そのあとに「いくつになっても、初めて経験することがあるもんやなぁ、、、」と、しみじみおっしゃられたのだ。私は、相当辛い思いをされているにも関わらず、現状をそんな風に深く捉えられるその方を、すごいなぁと尊敬せずにはおれなかった、という思い出がある。

また、父が3年ほど前に、屋根の上の落ち葉掃除をしていて梯子から落ち、圧迫骨折をして入院したときも、安静にするためにオムツを勧められたが、頑として応じなかった。痛いのを我慢して入院当初から自分でトイレに行っていたのだ。その甲斐あって父は、2か月近く入院可能な回復期リハビリテーション病棟を、1か月たたない内に退院してきた。「オムツは絶対に嫌だ!!」という気持ちはやはり大事なんだろうなぁと思う。本件では、父あっぱれ。

とはいえ私は、将来トイレに行けなくなったら、旦那さんにオムツを替えてもらうのはやぶさかではないと思っている。しかし女性でも、絶対に旦那さんに介護してもらいたくないという人もいたので、個人の性格によるだろう。

まぁ事前に色々考えたところで、現実はいつの間にか目に前にやってくる。

当事者ではない立場からすると「トイレに行けなくなったら、さぁオムツ」と、安易に考えていたが、いざ母のためのオムツを初めて買いに行った時には、戸惑った。

オムツは、どれもこれも大容量で売られている。これは、一度オムツになったら、もうオムツ街道まっしぐらということなのだろうか、、、。きっとそうなんだろうな、、、と、今後もオムツを買いに来る自分を想像し複雑な気持ちになる。そしてあまりの種類の多さに「どれを選べばいいのか、、、」とすっかりひるんでしまった。

が、そんななか、『まるで下着』とか『素肌のような肌触り』というような気遣いのあるコメントで、履く人への配慮が感じられる商品もあって、少し安心できた。そして更になんと!『お試し3個パック』というものも見つかったのだ。「そうそうこの配慮(初めて履く人にとっては)大事ですよね!!」と、迷いなく3個パックを買った。

しかし、3個パックなんてきっとコストがかかるだろうなーと思うけど、その配慮への心意気が素晴らしい。「大量に買うようになったら、きっとお宅の商品を買わせていただきます!」と忠誠を誓ったから、きっとそんなお客さんはたくさんいて元は取れているに違いないと思う。そして、忠誠を守り私はそのメーカーのオムツを継続して買っている。

また、尿取りパットに関しても、ザ、介護用尿取りパット!というものから、ちょっとおしゃれな生理用ナプキンのような見た目のものもあり、なるべく抵抗のないものはないかと色々見ていたら、思った以上に、選ぶのに時間がかかってしまった。それでもなんとか購入を終え、やれやれと帰ってきて、はたと思った。

よく考えたら、私たちだって、一か月のなかで5日間くらい生理用ナプキンをつけるだけでもかぶれたりかゆくなったりするものだ。それが毎日となると、オムツかぶれはどんなものなのだろうと。きっと肌の弱い人には辛いだろう。そんなことも思いやれず、トイレに行けないなら、オムツにすればいいと簡単に考えていた自分の無神経さに唐突に気づき、一人で愕然とした。

何事も、その立場になってみないと分からない。

オムツになるということに関して(あ、オムツにはならない。オムツを使うようになるだ)、家族の立場であっても、こんなに色んな思いが交錯するのだ。みんな色んな思いを乗り越えて親の介護をしているのか、、、知らなかったな。考えが及ばなかったな。そういうことはきっと他にもいくらでもあるだろうな。今度、仕事で患者さんと関わる時には、もう少し相手の気持ちが分かる自分になれていたらいいなと、本当に思った。

とはいえ、やっぱオムツは必要!!

現実に戻り、「うむむ、どうやって言ってお母さんに履かそうかな~」と思考をめぐらせる私であった(結局は案外あっさり履いてくれて、「間に合わなかったらここでしちゃう~」と笑っていました)。こちらも、ある意味、母あっぱれ。


追記:女性は生理用ナプキンをしている分、男性に比べてオムツに抵抗が少ないのかも知れませんね~(個人的考察)。


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