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都会では冬のにおいも正しくない

東北から関東へ引っ越して二度目の冬。
故郷とその周辺からは雪の便りが届いている。
窓を開けなくても外の雪がどんな様子か分かる、しんっとした冬の夜。
ああ、明日は何時に家を出れば間に合うだろう?
車から雪をおろす時間を逆算する。
雪かきは少しでも気温の上がった午後でいいか。

去年の12月、初めて迎えるこちらの冬に、
いや、私の体感では冬がきておらず、ただただ時差ボケのように季節感がバグっていた。今、冬なの?かといって秋や春でもない。
それなりには寒い。
でも、雪が降らないとか気温の違いだけじゃなくて、空気が違う。
鼻先が覚えている、冬の空気とにおい、氷点下のいたみ。
首をすぼめて歩くと、
雪で湿った足元と街路樹のにおい。
雪の上を車が走る音。昼間でもぼんやりとヘッドライトが光る。
狭くなった道を譲り合いながら歩く。

雪国での生活は大変だ。
でも、当然丸見えのアスファルトの上で自転車を漕ぎながら思う。
かさかさした都会の冬のにおいは、やっぱり私には正しくない。



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