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「おばあちゃんと桜」ハンドメイド小噺

5/14、15にハンドメイドイベントに参加した時のお話です。

私の住む街、札幌では、毎年4月末ごろからゴールデンウィークにかけて桜が満開になります。
しかし今年は約2週間も早い4月14日に開花予想となりました。

お花のモチーフが多い私の作品を見て、多くの方が「春らしくて可愛いね」とお声をかけてくれました。
おばあちゃんの温かいお話も桜の話題から始まりました。

「春だね〜桜色も華やかで綺麗だわ」と、ひとりのおばあちゃんが足を止めてくれたので、もう桜は見ましたか?と聞いてみました。
正直、何の意図もなく、その前に足を止めてくれた方々への接客にも使っていた質問でした。

おばあちゃんは青森県弘前の桜を見に行った小旅行の思い出を話してくれました。
有名どころの弘前城へは行かなかったけれど、ドライブしながら見た桜はどれも綺麗で、行きのワクワクから、余韻に浸った帰り道まで、道中も楽しかった。
行って損はないわよ!と笑顔満開!

ところがその後に続いた言葉は
「主人がいなくなっちゃったから、もう見に行けないのよ」

数年前に旦那さんを亡くしたおばあちゃんは、旦那さんと一緒に沢山旅をした車を今でも残しているそうです。
「お前は免許も取らないでいいよ、死ぬまで俺が、どこへでも連れてってやるから」
そんなことを言っていたのに、車だけ残して先に行っちゃったのよ。
おばあちゃんは少し寂しそうでした。

思い出話をひとしきり終えたおばあちゃんは、晴れの空の青が好きなのよ。と、青系の作品をいくつか手に取ってくれました。
最終的にはブレスレットを選び、もう一つ…。

「これは孫に、お揃いにしようかしら」

同じデザインの桜色のブレスレットを選んでくれました。

途端に私は「おばあちゃん!」と少し大きな声を上げてしまいました。
「お孫さんと桜を見に行きましょう!車がなくても、のんびりお散歩しましょう!おじいちゃんの思い出話をしながら!」

おばあちゃんはくしゃっと笑って、そうしようかしら、と答えてくれました。

最後に、「まだまだ旅の途中だよ、色々な所に行ってきてね」と握手をさせていただきました。
おばあちゃんは「ブレスレットをつけてお出かけしますね」とおじぎをして笑顔で去っていきました。

なんて素敵な日だろう。

その後も次の日も沢山の出会いがあり、嬉しいお言葉をいただき、少しお客様に寄り添うこともできました。
誰かの人生や日常にきらめきを、ビーズという種から素敵な花を咲かせてほしい。私の作家としての夢が叶っていく瞬間を味わうことができて幸せです。

私の幸せが誰かの幸せに
誰かの幸せが私の幸せに

今後の活動にも光が見えた小噺でした。


今日の一枚

春色のブレスレット

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