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きっと僕ら全部、忘れてしまうから
年を取ると、趣味が無くなる、物事に興味をなくす、ということの意味が最近わかるようになってきた気がする。
理由は主に2つある
1つは年をとると集中力を失うこと、夜通し、朝まで本を読むとか、連続ドラマを一気に続けてみる、そんな集中力は若者の特権なのだということが今はわかる(たまにやるけど)。それは、精神的なものというより、体力的なものだ。
「精神は肉体を凌駕する」こと自体若者の特権だし、そのうえで精神に肉体がついていけるのが若者の特権なのだ。
そして2つ目は、「忘れてしまう」ということだ。通った美味しい店の味を忘れる、行ったライブを。見た映画を忘れる。…それはまあいいだろう。
本当に辛いことは、最も悲しいことは、見に行ったことも覚えている、舞台の雰囲気も覚えている。そして、感動した記憶もある。叫んだ記憶も、涙した記憶もある。
にも関わらず、
「何に感動したか」「何に心震えたか」を思い出せないことだ。
もちろん、多くの経験をしていく過程で、昔より刺激や感動が減っていくのは仕方ない。だが、明らかに現場で感動し、涙を流した記憶もあるのに、感動が詰まっていた心の、その部分は空虚な穴になっていて。泣いた記憶も叫んだ記憶もあるのに、「何に感動したか」を思い出せないことは虚しい。
穴が空いたバケツで水を汲んでいたと気づいた時、人は、水を汲むことをやめる。それが物事に興味を失うことの一つの本質だと思う。
だからせめて、感動した映画を見た時は、デザインに触れた時は、ライブに行った時は、その記憶を書き留めておこう。
というのが、今年のこのnoteの趣旨である。
ずっとやろうと思っていたのにずいぶん時間がかかってしまった。
芸術はそこにあるものである。それは、彼らのものである。
ただ、そこで生まれた感動や感情は、芸術から自分の経験や記憶が生み出した精製物である。それを取り出して、自分のために取っておこう。
きっと僕らは、やがて全部忘れてしまうから。
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