次に会う日を楽しみに
家康との戦を目前に、調略と軍議の嵐の中にいる。
8月も半ばを過ぎ、私は各々の布陣や兵站を練る中で、我が友・大谷吉継に山中村への陣地構築を指示していた。主戦場がここ大垣城ではなく関ヶ原近辺になるであろうと見越しての布陣である。吉継は平塚らを伴い、ひと足先に陣地の整備を開始する手はずだ。出立を控えた吉継が大垣城へ顔を見せたのは、予定よりもやや早い秋晴れの日だった。
「刑部、よく来てくれた」
従者に手を引かれ、黒い杖をついた吉継が戸口に現れた時、私はなんとも言えない感情に襲われた。