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詩:白玉楼中



砂漠で水を求めるように
生きるための何かに縋りたい
渇望するほど誰かを求めてみたい
誰かと生きる時間に酔いしれてみたい

心の中の私は
崖っぷちにいて
頼りなく切れそうな糸に吊られるまま
いつも宙ぶらりん

幽渓に堕ちていく時を只管待ち
時々聞こえてくる声に掴まろうともせず

死後の楼閣に逝く時を待ち侘び
一手に空の中へ飛び立とうともせず

生きることもしない
死ぬこともしない

この世界は吹雪の暗中
空の糸が切れればきっと谷底に堕ちて
死後の世界は白刃の如く煌めいている

そうやって私は白玉楼中に希望を抱き
搏動を感じることもなく
ただ露と消える刻を待っているのかもしれない


ちがう

一本の糸に吊られた私は
本当は空飛ぶ船を待っている
「助けにきたよ」
その一言が欲しいんだ
翼賛の手を流れる時のままに求めている
驕奢を欲しいままに生きている

ああ
私は存在しない声を掌で握ろうと
何もない時間を我が物にしようと
心懸けずに
ただただ生きるために一筋の天与の糸に縋っていた
大きな駕籠の一肩となってくれる人を渇望していた
そんな理想に酔いしれていた
聞こえない誰かの声を歎願していたんだ

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