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20世紀のIntel + Microsoft = 21世紀のNVIDIA

21世紀においてかつてIntelとMicrosoftが担っていた役割をNVIDIAは一社で提供しているというお話をします。


ポジティブフィードバックによるはずみ車

はずみ車とは自分の力でどんどん加速することのたとえです。
増えることがますます増えることを加速することを意味します。
ハードウェアが売れるとソフトウェアを提供する企業が増える。ソフトウェアが増えると需要が増えてハードウェアが売れる。ハードウェアが売れると・・・の繰り返しがその例です。
1980年代のPCでいれば、ハードウェアのIntelとソフトウェアのMicrosoftがこの関係でした。

Intel + Microsoft = NVIDIA

40年たった2020年代の生成AIにおいてこのIntelとMicrosoftの役割を果たしているのがNVIDIAです。NVIDIAはGPUと呼ばれる並列計算用の半導体を提供しています。また、その上で、ソフトウェアを開発するためのCUDAというライブラリを自社で提供しています。
CUDAはもともとコンピュータグラフィックをカスタマイズするためのライブラリでした。2012年に深層学習を研究していたトロント大学のIlya SutskeverがGPUを深層学習に利用することを思いつきました。その後、CUDAはAI学習に広く使われています。Illya SutskeverがOpenAIの創立にかかわったときにはNVIDIAは当時非営利の研究組織だったOpenAIに最新のGPUを提供しています。これがChatGPTの誕生へとつながりました。
いまやCUDAは単にプログラムを開発するだけでなく、大量のGPUを1個のGPUとみてプログラムを書くための開発+実行環境としても使われています。大量のGPUと大量のGPU間通信でおこるエラーによっていちいち復旧処理をしていたら生成AIの開発は苦痛に満ちたものになります。CUDAはAIエンジニアを関係ないトラブルシューティングから解放してくれます。大規模な学習問題に立ち向かうAIエンジニアにとってCUDAは神と言えます。NVIDIAはこの資産を守るためにCUDAをNVIDIA半導体以外で実行することを禁止しています。

時価総額3兆ドル

いよいよ時価総額は3兆ドルを超え、Appleを抜いて世界2位になりました。急激な上昇をリスクだと考える一方で、世界1位になるのは時間の問題だと捉えられています。

怖いのは独占禁止法

もはや怖いのは独占禁止法だけではないでしょうか。これも1990年代のMicrosoftと同じです。買いまくっているのは生成AI開発競争に後れをとりたくない巨大IT企業です。それでも独占禁止法にひっかかるのでしょうか。また、いまや経済安全保障の一丁目一番地のNVIDIAを米国が規制するのでしょうか。今後の展開が興味深いです。

むすび

Intel + Microsoft = NVIDIAは以前の記事でも触れましたが、面白い視点なのでもう一回書きました([ai300lab])。

参考文献

  • [ai300lab]  生成AI半導体ブームの終わりの始まり https://note.com/ai300lab/n/n7b7e1ba2056f 2024年

  • [Cusumano] Nvidia at the Center of the Generative AI Ecosystem—For Now Michael Cusumano https://cacm.acm.org/opinion/nvidia-at-the-center-of-the-generative-ai-ecosystem-for-now/ 2024年


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