color. 1話。
__午後2時。目が覚めた。
もう昼飯を摂る時間は過ぎてしまったか。仕方なく冷蔵庫から常備している栄養食のゼリーを取り出す。
今日も学校に行けなかった。これで何ヶ月だろうか。
担任からはとっくに呆れられたのだろう、連絡はもう来ない。
『今日もサボりですか?』
ピピッ、という電子音と共に目の前に現れた少女。
「うるさいな…もういいんだよ。あんなとこ行かなくたって変わらないだろ。」
『そうは言っても、行かないと成績にならないんでしょう?マスター、大してIQが高い訳でもないのにカッコつけるとモテませんよー?』
茶化すようにそう話す彼女はAI。名称は「color_No.1 RED」。
肩くらいまでの長さの髪と、大きな瞳が特徴的な彼女は、世界でまだ数台しかない色覚補助ロボットの1人だ。
色覚補助…と言っても、俺だけが色盲なんじゃない。この世界にいる人間、皆がそうなのだ。
全員色盲というと語弊があるかもしれないのだが、俺達人間には一人一人、生まれつき見える“色”がある。そしてそれは、大切な人と宝物を共有することで増やすことが出来る。
いつからかこうなったのかは分からないが、どうやら人間の突然変異だということだけは明確になっている…らしい。
此奴の言う通り、俺はそんなに頭が良くない。学校に通っていた頃に中の上だったくらいな為、今はきっとそれより下だ。悔しいが言い返せない。
「あんま言うと返却するぞ?」
『返却しても構いませんけどそれで困るのは茜様の方では?』
「ぐっ………」
図星だ。確かに俺は彼女の色覚補助にだいぶ助けられている。
『まぁそんなことはいいとして。今日は何します?出掛けるなら今のうちですよ!』
ぐいぐいと俺の袖を引っ張る彼女に連れられ、玄関まで向かう。
俺出かける気無いんだけど…。
『まぁまぁ!気分転換になりますよっ、ほら行きましょう!』
「はぁ?いや待てって…!」
さっさと扉を開けてしまうのを止めようとすれば、ぴた、と止まる彼女。俺はその後ろ姿にぶつかり、バランスを崩して2人揃って倒れ込んだ。
『痛いです茜様!!』
「お前アンドロイドなんだから痛くないだろ!」
なんて言い争っていると、上から「えっと…」なんて声が降ってくる。
「驚かせちゃったかな…ごめんね。」
顔を上げると、そこには白髪蒼眼の青年が此方を覗き込んで申し訳なさそうに眉を下げていた。
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