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Blue+Bloom=Bluem

「君にとっていちばんの大切なものは何?」

大切なもの、の重さは人によって違うけれど
なんとなく分かってしまうその言葉の質量。

幾度となく反芻をした、大切なものの響きを自分にとって形づけたのは紛れもなく自己のブランドを持った瞬間だった。
『Bluem Coffee』のたったひとつの願いは、私の目の前の人の道にとっての微かな光となること。
道を踏み外しそうになった時に、広く安全な道があることを照らし出せる光になること。

この2年近くで誰かにとってのそういう人になれたのだろうかと、一旦の終わりが近づくたびに考える日々だった。

一旦の最後のイベントとして打ち出した
『本の中に出てくる飲食物を再現する』という刺さる人にしか刺さらない、でもどうしてもやりたいことをやった。
その声に賛同してくれたふたりにはとても感謝している。

どうして?と思った人も多いと思う。
もっと集客がしやすい内容のイベントを考えることは容易かったけれど、あえて本にこだわったのは光ということに執着していたからで。

人が息を存えるためには、光が必要だ。
足元を照らしてくれる、ここは大丈夫だと知るための、暖かさを得るための、
たくさんの意味を孕んだ光が。

自分の人生を振り返ったときに光としてあったものは飲食と本と人だった。
充分すぎるほどに満ち足りていた光たちだった。

本の言葉は自分の柔らかいところに染み込み、口を通ったものは私の四肢を動かすエネルギーに変わり、関わる人が多くなるほどに人生を歩む原動力になった。

私が私の人生を歩むための光は、誰かのとっての光となりうるのかもしれないと考えたのは
間借り営業で本を置き始めてからだった。
みんなが手に取ってぱらぱらと頁を捲る姿と文字を追う視線、コーヒーを飲んだ時の表情、「いってらっしゃい」とお見送りするときの無事でありますようにという小さな祈り、これらは確実に私自身のための光だった。

大切ものはなに?と問い続けた日々。

私の大切なものは、人だった。
私の目の前の、私の名前を呼んで、笑ってくれる、いつまでも大切にしたいと思える人々だった。
その人たちのつながりを絶やさぬよう、今は知らぬ誰かと繋がれるよう、選んだ仕事がバリスタだった。

天職だと思うの。
言い聞かせるように発し続けた言葉はいま自分に返ってきている。
天職だから。

ひとつの区切りとして小休止を挟むことが怖くて何度も泣いたこと。
一緒に走り続けてくれたデザイナーの人に申し訳なくて苦しかったこと。
Bluemを生んだのに自らの手で閉ざしてしまうやるせなさ。
実力不足だった、と自分を責め立てる言葉たち。
失うということがいちばんの恐怖である私にとって、辛すぎる選択だった。

「なくなるわけではないよ、あなたがあなたで居続ける限りどこかでまた思い出してくれる日もくるし、いつかその2つが繋がる日もくる。」

「いつか飛躍するための休みだから、思う存分成長したらいい。」

どうしよう、とまだまだ足踏みしていた私の足元を照らしてくれた。
ああ、そうか。
私はこんなにもたくさんの人に照らしてもらっていて、正しい道を進むように道をはっきり見せてもらえていたんだ。
だから、返していきたいんだ。

言葉で、コーヒーで、人で
その人を照らせるような
落ちそうになったなら手を引っ張れるような
そんなブランドで在りつづけたい。

Bluem Coffeeを見つけてくれて、大切にしてくれてありがとう。
またすぐにお会いしましょう。


それまで、どうかあたたかい光のもとで。

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