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She said "Yes".

第15回、フランボワーズです。

何かのせいにできる環境は人を簡単に怠惰へと誘いますね。
梅雨のせいで身体が怠くて、先月はマガジンの更新を出来なかった。言い訳です。
ちょっと長く書きます。(戒め)

そんなこんなで今日のお題は

Tinderからはじまる大恋愛

そもそもTinderを『純粋な恋愛目的』で使ってる人は限りなくゼロに近いと思っているので、大恋愛なんてできるわけないだろと一蹴していたのに
それすら蹴り返された。

私がTinderを最初にダウンロードしたのは大学に入学したての頃で、単に刺激が欲しかったという理由でやり取りを数回しかしていない相手とご飯を食べに行き、映画を観に行き、いつの間にかベッドに沈む、
余りにも単調でつまらないことを飽きることもなく続けてきた。
『恋人が欲しい』気持ちとは裏腹に期待も希望も持っていない私には、そういう類の人ばかりが集まってきて顔と名前と会話が一致しないなんてこともしばしばあった。

出会ったばかりの彼女も一緒だったのであろう。
私が先輩と呼ぶ彼女とは、アルバイト先のカフェで出会った。
仕事の話から恋愛の話、ぶっちゃけた話まで彼女の直近のことは何となく把握をしていた。癒えるには時間がかかりすぎる傷を負った彼女は、それを使うことによって必死に見ないふりをしていたような気がして、自暴自棄になりかけていた。

彼女の口から発せられる名前と思い出たちは、いつの間にか同じようなものに聞こえてしまって今では全く思い出せやしない。
楽しそうに話す表情の裏に隠しきれない不安や寂しさを垣間見てしまって、それらを払拭する術など持ち合わせていない私はずっと話を聞くことしかできなかった。

今度こそ、今度こそ、を願って数回目。
彼女の口から
「カナダ人の彼とお付き合いすることになった。」
と遥かに予想を斜めにいった報告をされ、
その数日後、その彼が私のお店に来てくれた。

ああ、このふたり結婚するのだろうな。
彼と話をしながら直感的にそう思った。
出会って数日のはずなのに、余りにも似通っている。
誰かに声を掛けるタイミングや、相槌の打ち方、グラスを口に運ぶ時の少しの間。
こんなにも他人同士が似ることなんてあるのだろうか。
「私、彼とは前世で兄弟だったかもしれない」なんて酔っ払った時に彼女は言っていたけれど、本当にそれほどまでに、重なり合いすぎていた。

「彼女の誕生日にプロポーズをしようと思うんだ!」
「たぶん、彼、誕生日にプロポーズしてくると思うんだよね。」
双方からその話を聞いていた私はただ何も言わずに頷いていた。
サプライズを計画していたはずなのに、勢いに乗って前倒しでプロポーズをしたらしい。
出会った場所で、突然に。
その場にいなかった私でもわかってしまう。
きっとその瞬間のその場所はとても美しかったと。

たったひとつのアプリで、
人の欲望が渦巻いているなかで、
彼女たちのような道を辿ることは難しいのかもしれないけれど。
それでも、愛がきちんと”在る”のだとしたらそれは国境もバックグラウンドも出会い方も何も関係などなくて、ただ人と人との間にあるものなのだと、
それをいとも簡単に証明してしまった彼女たちには完全に白旗です。

おめでとう、以上の言葉が私の中にはないからお花に想いを託した。
そして、今日は文字にも託してみる。
「私の黒歴史、全部書いちゃってよ!」なんて楽しそうに話していた彼女の顔には陰りなどなく、左手の薬指には似合い過ぎている指輪がはめられていた。

「これからだから。いまがスタート地点です。」
そうか、ここからまた歩み出すのか。
隣に歩くその人の手を取った貴女と、いつだって歩幅を合わせて愛おしそうに貴女のことを見つめる彼を
私はとても誇りに思うよ。

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