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セミダブルの言い訳

ポストに一通の手紙が入っていた。
差出人は『株式会社 文芸社』。
一気に背筋が伸びた。

それもそのはずで、数ヶ月前に人生で初めて物語を書いて公募に送ったのだ。

結果は入選に至らなかった。
わかってはいたけれど、最終選考まで残れたことはとても嬉しく思う。
そして、自分の物語を誰かに読んでもらえたことが無性に嬉しい。

完成した時に読んでもらった人からは
「起承転結の承と転が弱くてエッセイのようだ」と言われた。
エッセイやコラムが書きたいのだなと俯瞰したのを覚えている。
そっちの方が得意なのかもしれない。
いや、得意なのだ。

日々の景色や音や匂いを文字に起こす作業がとても好きだ。
そして、それはひとつとして紛い物がないものでありたい。

この物語も何ひとつ紛い物などなく、ただ真っ直ぐに書いた。
書き終わった後、泣いてしまうくらい私にとっては全身全霊だった。

タイトルはふとした瞬間の会話から拾ったもので、
その会話ですら今は夏風に吹かれて何処かへ軽々と飛んで行ってしまった。

ある種の恋文のようなもので、
日記のようなもので、
ただありふれた日常で、
それが特別だと知るにはまだ幼稚だった。

そんな物語。

『セミダブルの言い訳』

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