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言えねえよ。この世じゃ。

2024年4月1日。
ドラマGTOが久しぶりに、リバイバルドラマ化してテレビ放送された。

お茶の間に「言いたいことも言えない、こんな世の中じゃ」でお馴染みのポイゾン(ブルエン反町ver)が流れた。

翌朝、昨日放送していたGTOをTverで見ながら出勤していた。始業前に会社で顔を合わせた、同年代の友達には「昨日のGTO見た?」「録画だけしたー!まだ見てない」なんて会話をした。

昨日は仕事の年度はじまりで、それを引きずってその日もやたらと忙しくて、昼食を取ったのが15時過ぎだった。カップ麺のうどんを食べながら私用スマホをいじるとLINEが届いていた。 

「久しぶり、仕事後でいいから電話で話せないかな?」

飲食店を営む友人だった。「今年も、某音楽フェスにフード出店するから手伝ってくれない?」なんていう直談判の電話だろうと思っていた。
今年は、仕事休むの厳しいんだよな...と思いつつも、イベント公式の出店者募集のページいちおう見ておこうかな〜と思ったけど、誘われる前からやる気満々みたいでやっぱり見なかった。

仕事がいつ終わるかわからなかったので、お昼休みに電話をした。

「久しぶり!どうした?」 
「久しぶり〜、聞いた?ユウダイの話。」

「え?ユウダイ、何だっけ?」 
「ユウダイ、昨日亡くなったんだって」
「え、」

そのあとどんな抑揚で、彼女が死因を話してくれたとかは覚えてない。現実を受け入れられなかったんだろう。死因もなんだったか、覚えてない。聞いたはずなのに、言葉が右耳から左耳にただただ流れ出てった。かろうじて覚えてるのは、先週から入院してたとか、入院前日に音楽イベントに顔を出してくれたとかそういうこと。

「お通夜とかお葬式の情報聞いたらまた連絡する」

通話はその言葉で終わったのは覚えてる。

あー、葬儀ね。葬儀か。
なんでやるんだっけ、葬儀。
入院してたって言ってた?なにそれ。
ああ、そうか今、ユーダイが亡くなったって言ってたな。そうか。ユーダイ亡くなったんだ。

ユーダイが亡くなった。
全然実感が沸かないのだけど、理解はした。
涙が溢れ出した。


ねぇ、ユーダイ。
わたしはユーダイに10年近く、恋をしていたんだけど、一度もあなたに思いを伝えたことがなかったね。好きだけど、言えない。まだ、好きだなんて言える間柄じゃない。好きだけど、今じゃない。好きだけど、もうなんか5本指に入る親友になっちゃったよ。いつの間にか好きの形が変わっていって、結局一度も、あなたに「好きです」なんて伝えたことなかった。

錦糸町のいつもの大衆酒場で飲んでるときにでもさ「私、実は10年以上、君に片想いしてたんだよ。もう過去の話だけどね。」なんて伝えたかったな。そしたら、どんな顔しただろうね。
ガハハハって笑って、「え?そうなの、マージーかー!」って言って、どんどんバイスサワーが進むんだろうか。

私の周りの友達には、10年近く好きな人がいることはたくさん話したのにな。
ユーダイ本人には、どうあがいても伝えられなくなっちゃったよ。

言いたかったことも、この世じゃもう言えねえよ。ポイゾン。あの世で言うから待っててね。

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