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2023年の打者大谷翔平に何が起こっているのか ~データの徹底解剖~


はじめに

 皆様、WBCはご覧になったでしょうか。世界一の旗とプライドを掛けて世界中の猛者がしのぎを削った祭典は、投手大谷翔平が世界最高野手であるチームメイトのマイク・トラウトを三振に切るという、神の書いた筋書きのような形で幕を閉じました。侍ジャパンの活躍は日本中を活気付けてくれました。一方、WBCの後には例年通りの長いシーズンがある。それに対して一抹の不安を抱えていたのは私だけではないでしょう。
 しかし、蓋を開ければ投手大谷翔平は並みいる強打者を次々となで斬りにし、前半戦終了時点で被打率MLB1位、更に打者大谷翔平はHRランキングで1位を快走するという、端的に言うと異常な活躍を見せてくれています。更に、侍ジャパンの快進撃を大いに支えたオリックスの誇り・吉田正尚選手もレッドソックスでチームNo.1の打率・OPSを残す等、非常にエキサイティングなシーズンが進んでいます。超!エキサイティン!吉田正尚選手については、記事を改めて色々と書きたいと思います。
 さて、大谷選手についてですが、特にバッティングに大きな変化が見られます。本記事ではBaseball Savantとプログラミング言語であるpythonを用いて収集した細かなデータを追い、大谷選手の変化を分析したいと思います。そして、小野球人である私自身も大谷選手のようにHRを量産できるよう生まれ変わりたいと思います。
※この記事は2022年及び2023年前半戦の成績に基づいて執筆されています。

2022年打者大谷と2023年打者大谷の成績比較

2022、2023年の主要成績比較

 主要な成績を比較したのが上記の表であり、2023年は前半戦終了時の成績です。仮にペースを維持したとする予想成績も併記しています。ここから分かるように、全ての指標がレベルアップしています。特に目に付くのはホームランであり、約1.65倍のペースで量産しています。また、これに伴いOPSも向上しており、両リーグでもぶっちぎりのトップです。更に、打率・出塁率も向上しており、これは三振率・四球率の改善が寄与したものと思われます。
 さて、これらの変化を分析するにあたり、まずは要因を考えたいと思います。特に顕著に変化したホームラン数について、パフォーマンス向上の要因としては、次の要素が考えられます。

  1. パワー向上による打球速度改善

  2. 動体視力などの向上によるミート力改善

  3. 狙い球など、打席でのアプローチ改善

これらについて、pybaseballというpythonライブラリを用いてBaseball Savantから収集したデータを基に分析していきます。もし要望があればpybaseballの使い方を記事にまとめますので、Twitter等でご連絡を下さい。

打球傾向の分析

 今季と昨季の打球速度などを分析し、各要素の正誤を判断したいと思います。まずはBaseball Savantで公開されているデータを下記にまとめました。

2022、2023年 打球速度・角度の変化

 まず目に付く内容として、最高打球速度はむしろ下がっています。ここから、単純にパワーが向上したという説は否定されます。しかし、パワーが劣化したとは思えません。打球速度は低い打球の方が高くなりやすいので、今季は捉えた打球にうまく角度を付けられている為、最高速は低下したと考えるのが自然でしょう。平均打球速度やバレル率、ハードヒット率はいずれも上昇しており、打ち損じが減ったことが示唆されます。
 さて、ここからはpybaseballで収集したデータを用いて、私独自の分析を進めていきます。

まずは打球速度について、ヒストグラムを下記に示します。縦軸は全打球に占める割合です。

打球速度の頻度分布

ここからもハードヒット率が向上したことが見て取れますが、それ以上に、110mphを超える打球の割合が急増していることが見て取れます。ハードヒット率の基準を95mphから更に高くした結果が下記です。

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