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魚を丁寧に焼くと面白い

以前モロヘイヤスープを作ったときチキンブイヨンの取り方を調べ、それがきっかけでFrench Cooking Academyというフランス料理のレシピを紹介するYouTubeチャンネルをよく見るようになった。

「フランス料理って作れるんだ!」という、ある意味変な気づきを得てそれ以降フランス料理をちょっとずつ調べている。同じヨーロッパでもイタリア料理とフランス料理だと親近感が違うというか、実は日本人はあまりフランス料理になじみがないのかもしれない。

フランス料理はなじみがない

「イタリア料理といえば?」と聞かれればパスタ!ピッツァ!などすぐにイメージがわくが「代表的なフランス料理を思い浮かべてください」と言われると「代表的なフランス料理…???」となって我々には名前を思い浮かべることはできない。
いや、正確にはなんか肉がゴロっと入った茶色い煮込みとか焼き魚に緑色のソースがオシャレにかかっていたりとかイメージは浮かぶけれども名前としてわかりやすいものが浮かばない。

しいていうとビシソワーズなどはポピュラーだがいずれにしてもフランス料理はイタリア料理ほどには日本の家庭には出てこないのではと思う。(パンやお菓子類は別として)

とはいえフランス料理を家庭に取り入れようと思ってもレストラン式の料理を家でやるのは無理があるので(家で牛骨を6時間煮込んだりオーブンで色をつけたりするのは現実的ではない)、簡単なところから取り入れてみようと考えた結果、まず魚を丁寧に焼いてみることにした。

魚を丁寧に焼く

フランス料理の魚の焼き方に関しては以下サイトや動画などを参考にした。

言っていることは皆さんおおむね共通していて、
・塩は魚の重量の1%程度(やってみるとわかるが意外と少ない)
・塩は身だけに振り、皮目から焼く
・基本的に皮目から火をほとんど通して、身は最後に一瞬焼くだけ
・焼いていると魚が反るのでフライパンを使って形を整えるor押さえる
・魚から臭みが出るので油は途中で捨てる&アロゼしない(油を身にかける焼き方をしない)
などいろいろな注意点がある。

どれもいかに「魚の臭みをうまいこと抜きつつ、魚自体に水分を残してジューシーに焼き上げるか」&「皮目をパリッとさせて香ばしさと食感のアクセントを加えるか」ということを目指しているように思われる。

そしてこの焼き方でやってみると、今までなんとなく焼いていた魚とは比較にならないぐらい魚の中に水分が残っている。だからといって生というわけでもない。結果的に皮はパリッと、身はしっとりと焼きあがっている。

材料はこの上なくシンプルに、「魚・塩・オリーブオイル」である。魚も別に高級魚ではない。それでも料理の知恵と工夫次第でこうも味が変わるのか、という衝撃を自宅のテーブルで受けた。

具材はシンプルだが調理法で工夫するという方向性

料理を美味しくしようとすると、ちょっといい材料を使ってみたりとかいろんな具材を使ったり、味付けを濃くしたり、既成のだしの素を使ったりといった足し算の方向性になりがちである。

そうじゃない方向性として「いろいろ味をややこしくしたくなるが我慢してあえて塩少量で済ませる」「いろいろ足したくなるがあえて具材1個に向き合って調理する」ことの可能性を感じさせられるような一皿ができた。

勝手に料理の師匠と敬愛している南インド料理のイナダシュンスケ師匠もミニマルレシピや「30分チキン」(鶏むね肉を超弱火でひたすら30分放置して焼くレシピ)を提案しており、師匠がレシピで伝えようとしていた方向性とはこういうものだったのか…?!と少し理解できた気がする。

ちなみに今回魚を丁寧に焼いてみるとわかったが「30分チキン」はフレンチの技法の転用かもしれない。皮目からほとんど火を通すという点も同じだし、あまり素材を動かさず、フライパンに皮を密着させることでパリッと焼き上げるという点も似ている。

「丁寧な暮らし」を目指しているわけでもない

今回「魚を丁寧に焼く」ことを絶賛したが、では毎日の暮らしの所作ひとつひとつを丁寧にしていきましょうという、「丁寧な暮らし」を目指しているかというとそうでもない。

「楽さ」と「丁寧さ」の間で我々は日々の生活を送っているわけで、全部を丁寧にやろうとすると生活自体にかなり時間的なコストを割く必要がある。それは時間的余裕のある生活を送っている人であれば可能だが、働きながらそれを行うのは難しい。かといって楽さに全振りしてしまうとそれはそれで人間として味気ない。

そんな中で「そんなに手間をかけてはいないし特に金銭的コストも増えていないのだが、ちょっと工夫することで料理が美味しくなる」というのは結構ちょうどいい、お得な話なのではないかと思うわけである。

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