2024年6月某所

降りたことがない、というだけの理由で電車を途中下車したことはあるだろうか。私はたまにやる。だいたいはそこでスマホを取り出してラーメン屋とか立ち食いそば屋とかを検索して食べに行って、なんとなくこういう街なんだな、とか思いながら帰るだけなのだが、なかなか楽しい。あまり良く知らない土地にあえて行くのが旅行だとすれば、これも旅行と言ってよいだろう。なかなか楽しいし発見もあるので、その途中下車というか知らない駅に行くということを、もうちょっと意図的にやってみて、街を散策したりもして、超小旅行記としてnoteに記録でもつけようかな、などと最近なんとなく思っていたところ、ちょうどいいことに久々に飲みに行くことになったSさんという友人というか、昔のバイト先の上司なんだけど、とにかく愉快なおじさん(実は年下)が、ほとんど行ったことないんだけど〇〇駅に行ってみない?、と提案してきたのだった。心を読まれたのかと思った。

というわけで、ここからその某駅周辺のことを書くのだがあくまでも個人の感想であり、記憶違いや思い違いなどがあるかもしれないし、嘘大袈裟紛らわしい表現なども含まれるだろうから、もうフィクションの旅行記だと思って読んでいただきたい。そしてこれはどこの駅のことを言っているのだろうとか考えないでいただきたい、怒る人がいるかもしれないから。

その駅は厳密には行ったことのない駅ではなかった。20年以上前だが1度だけ訪れたことがあった。友人がそこにいいパチンコ屋があるという情報を仕入れてきたので、わざわざ行ったのだ。改札を出ると、階段のところにいきなり横断幕が張ってあった。そこに交通安全の標語とか「輝く未来へ 〇〇市」みたいな謎のスローガンとかが書いてあるなんてことは、最近でこそあまり見なくなったが、当時はまだわりとよくあったのでなんの気もなくその横断幕を読んでみたら「覚〇剤はやめよう」と書いてあったのだった(もちろん実際は伏せ字などしていなかった)。覚〇剤を使用していることや覚〇剤が手に入ることを前提とした標語に度肝を抜かれ「とんでもないマッドシティに来てしまった」と恐ろしくなったことを私は一生忘れないだろう。そのあとパチンコ屋の景品交換所で風俗店の客引きが待ち構えていて、かなり強引に店に連れて行かれそうになって怖かったのもあり、はっきり言ってこの駅のイメージはかなり悪く、その後、長い間、足を踏み入れることはなかったのだった。

Sさんとの待ち合わせより30分ほど早く駅に到着してしまったので、周辺を散策してみることにした。とりあえず例の横断幕はなくなっていた。よかった、わざわざ駅で呼びかけなくてもよくなったわけだ、時を経て街がクリーンになった証拠であるような気がして少しほっとしたのも束の間、いきなり自転車に轢かれそうになった。小学生らしき男の子5人の集団だった。少年の急ブレーキと私の避ける動きがギリギリ間に合って轢かれなかったわけだが、このガキどもは謝りもせず、なんならこっち睨みつけて去っていったのだった。スラム街かよ。思わず、財布がスられたりしてないか確認してしまう出来事だった。

気を取り直して、駅の逆サイドを散策していて遭遇したのは、腕に入った立派なタトゥーを丸出しにして歩いている人だった。タトゥーなんか、いまやそこら中でみかけるわけで昔に比べればだいぶ見慣れたもんなんだけど、そのタトゥーの人は、外国人でもなければ、やんちゃそうな若者でもなく、全然怖そうじゃないどちらかと言えば善良そうなおじさんだったのが、逆にアレだったというか、なんというか、とりあえず、間違っても目とかが合わないようにして距離をとったのだった。

そして、この時点で、noteに書くときは駅名をふせよう、と心に決めた。

Sさんと合流。お久しぶりです、タバコやめたりしました?、といきなり聞いたのにはわけがあって、さっきの散策で、いい感じの大衆居酒屋を発見していて、そこが喫煙可能店だったからだ。吸ってる吸ってる、とのことだったので、その店に向かうことに。

店に到着すると、まだ開店まで5分ほどあるようだった。なかなか渋くて、昔から愛されてる店の感じがするその佇まいに、期待がふくらむ。ここで飲んだら、なんだかんだで結局いい街だったな、ってなるんじゃねえの?と、後日書くこのnoteの記事のエンディングまで想像していた。のだが、その20秒後、店舗入口の横の木の板になにか書いてあるのを発見。読んでみる。「一見のお客様はお断りしています」えー!?この感じで!?よそ者はお断り的な!?なにか知られちゃまずいことでも!?怖いんですけど!

というわけで移動。たまたま目に入ってきたカウンターしかない居酒屋にイン。常連らしきおじさんが一人だけ飲んでいた。店員はおばあさん一人。ようやく乾杯。おばあさんの愛想は悪いが、別に嫌な感じではない。徐々に客も増えてきて、気付けば満席。しかも我々以外は全員常連で、みんなで楽しく会話している、なんならばあさんもニコニコだ。そういった疎外感みたいなのは別にどうでもよかったのだが、あれ?トイレのところになにか貼り紙が。読んでみる。「使用禁止」えー!?どうするの!?おしっこしたくなったら!てかすぐになるよ?酒飲んでるから!

おしっこしたくなったので、退散。駅の逆サイドにこれまたずいぶん古い、老夫婦が営む居酒屋に入ると、その店は居心地が良く、だいぶしっかり飲んだのだった。

振り返ってみれば楽しい1日だったのだが、やはりこの街は私には刺激が強すぎた。次はまた20年後かな。


※Sさんごちそうさまでした!また飲みましょう!

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